短編

□六兆年と一夜物語
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俺は産まれついた時に化身とよばれるものをだしてしまい、実の母親を死に追いやった。

それから村人達は俺を『忌み子』『 鬼の子』といい、俺はその身に余る罰を受けた。

俺はそれを悲しいと思わなかった。何も無いと思った。物心ついたとこからこうだったから。

それでもひとつだけ鮮明に覚えていることがあった。夕焼け小焼けのなか、あの人に手を引かれた記憶だけが……



俺は知らない何も知らない

叱られた後のやさしさも

雨上がりの 手の温もりも


でも 本当は 本当は 本当は 本当に寒いんだ



俺は思った

俺は死なない、何で死なない?

夢のひとつも見ることができないのに………






誰も知らない おとぎばなしは



夕焼けの中に吸い込まれて消えてった
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