頂き物

□ごめんね
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フィフスのシードだった京介。全身黒を纏った男 と話しているのを俺は聞いてしまった。そして、 あろうことか京介に

優「ここから出ていけ!」

俺は少しきつめに京介にいい放った。これで京介 を悪い道から戻せるかもしれない…

京「……っ」

黙って下を向く京介。しばらくどうするか見てい た。出ていかなかったら、もう一度言おうかと 思った。なかなか出ていかない京介に、出ていけ と再びいうために口を開いた。瞬間、

京「……」

京介は綺麗な琥珀色の瞳からポロポロと涙を流し ていたのだ。一瞬怯んだが、心を鬼にして言おう とした。が、

京「……」

よく考えてみると、京介の涙なんて初めて見たと 思った。だって、ずっと京介は俺の前では弱音を 吐かず、辛そうな表情をしてこなかったのだか ら。その京介が今、目の前で泣いている。もしか したら、俺の言葉にかなり深い傷を負ったのかも しれない。そう思い始めてきたとき京介がくる り、と向きをかえた。ドアのほうだ。しゃくりあ げる京介を、このまま外に出したらきっと俺は後 悔する。早く京介を止めなければ。

優「…なあ、京介。」

京「っ!」

俺がいきなり喋り出したことに驚いたのか、びく りと体を動かした。もしかすると、まだ何かある の。どうして出ていけなんて言ったの。なんて 思っているのかな。

優「…京介、どうして泣いているの?」

京「……俺、みんなに嫌われた…」

優「…え?」

京「兄さんだけには嫌われたくなかった…のに。 」

みんなに嫌われた。京介の声は泣いているせいで 震えていて。

京「俺…嫌われるようなことばかり…兄さん、俺 のこと…嫌いだよね?じゃあね。もう、来ないか ら。…じゃあね」

最後に小さく、ごめんなさいと悲しそうに言う京 介を、俺は突き放したりなんか出来なくなった。

優「京介。」

京「……?」

俺は京介を手招きした。しかし、怯えているのか なかなかこっちにこようとしない。ごめんね、怖 がらせるつもりはなかったんだよ。

優「ほら、京介。さっきのことは無し。おいで。 」

京「……」

優「…おいで。もう怒ってないよ。」

両手を広げて、京介を呼ぶ。すると、京介が恐る 恐るこちらへ歩いて来た。その目は、まだ少し警 戒したような目。京介って、こんなに警戒心が強 いのか?
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