頂き物

□くちづけパロ
1ページ/1ページ

ずっと一緒に居ることができると、信じていたの にな……

それは突然のことだった。 言いたいことは沢山あるのだが、唇は震え、言葉 になりきれていない声ばかり。 頬には無数の雫が伝う。 究極の俺としたことが、情けない。

「白竜…」 と口にした後言葉が続かず、黙り込んでしまった 剣城。 何を言いたいかはすぐ予想がつく。 だが俺には、お前にしてやれることなどないの だ。

ゴッドエデンで鍛えられ、常に究極を目指してい た俺は、精神的にも強くなっていると自負してい たのだが…… 今はもう胸の中がバラバラに壊されていた。

剣城、お前は俺と共に究極を目指していただろ う? いつも傍で辛い特訓を耐え、より高みを目指して いたはずだ。 でも今は、お前の心は此処にはないのだな……

雨が降り始めた。 俺は思わず溜め息をつく。 この雨は、俺を叩くように降り続いている。 あぁ、俺はもう一人になるのだな…… ふっと肩を包む温もり。 やめてくれ。 今は傷を抉るだけだ。 今宵は俺の涙も雨に変わりそうだな……

俺の手を握る剣城の手の平は、いつもよりほんの 少し冷たかった。

こんなに想ってきた俺の心は掻き乱され、剣城の 手の平の温度に反比例するように熱かった。

それでも俺は、努めて冷静な振りをしていた。 が、それも剣城にはお見通しのようだった。 剣城、お前は優しいな。 だが今は、その優しさは辛さを増すだけだ。

現実で逢えなくても“夢の中で逢える” そう信じる俺の思いは、虚しさを誘うだけだっ た。

「いつも愛してる」と誓ってくれたあの言葉に、 曇りはなかったはずだ…… そうだろう?剣城……

あの日の記憶も消えてしまうのだろうな…… 例えどんなに俺が覚えていようとも。 傷のない恋なんて、ありはしないのか? もう壊れてしまったこの恋は、偽物だったのか? ……どうであれ、それも一つの愛なのだろうな。

俺は剣城の胸の中に小さく埋もり、絶えることの ない涙を知った。

一度だけ くちづけて…… 最後まで くちづけて……

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ