頂き物

□今を生きている
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「剣城、まだいるかな…?」

部室の明かりはまだついてるみたいだ。今日の部誌当番は剣城だっていうし…、もしかしたら…。

俺は今、帰路を全速力で引き返している。


その理由となった出来事は、部活前に起きた。

「うー…届かねえ…。」

「あ、倉間先輩、取りましょうか?」

「つ、剣城?…いや、…別に取らなくていい。」

なんていうか…後輩の方が背が高くて、届かないものを取ってもらう…というのがひどく癪だった。

「遠慮しなくていいですよ。どうぞ。」

「……。」

「…?倉間先輩?どうしたんですか?」

なかでも、俺より圧倒的に背が高い剣城に取ってもらうのが一番癪だった。というか、俺よりもずっと背が高いというのがちょっと許せなかった。

「…。おまえさ、なんでそんな背高いんだよ…。」

「はあ?…急になんですか?」

「なーんかさ…。俺よりもずっと高いってのがさ、癪に障るっていうか…。」

「…何でですか。天馬たちだって、倉間先輩より高いじゃないですか。」

「う…。まぁそれもそうだけど…。とにかく!何でそんなに背が伸びたんだよ!」

「知らないですよ…。伸びたくて伸びたわけじゃないですし。成長の度合いなんて人それぞれじゃないですか。」

たぶん、普通だったらこの辺でこの小さな言い合いは終わりになるんだと思う。

だけど、どうしてかしれないがこの時の俺は終わりにしなかった。機嫌が悪かった、というやつだろう。

「だぁーー、もう!そういう言い方するやつが一番気に食わねえんだ!」

「……なんでですか…。倉間先輩だってこれから伸びるかもしれな…」

「あーうるさいうるさい!お前なんか大嫌いだ!ちくしょう…!」

この時剣城が、はっと息をのんだことに俺は気が付けなかった。
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