頂き物
□謝ることばかり
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今、俺には、ちょっとしたいたずら心が芽生えていた。それは剣城に
「大嫌いだ」
と、嘘をつくことだ。でも、もしかしたら、半分嘘で、半分本当なのかもしれない。だって、剣城は俺たちの仲間になる前、サッカー部をめちゃく ちゃにした。本当にむかついた。でも、あのあとに、俺たちの仲間になってくれるとは、思いもしなかった。嬉しかった。だが、やはり俺の中に は、剣城がしてきた様々なことが、心の中に残っているのだ。そう、単なるいたずら心だったんだ。この時は。
早速、着替えている剣城を見つけた。もう、部活 は終わっているので、剣城も疲れきった顔で、着替えていた。
「剣城」
今、ここには剣城と俺しかいない。
「何ですか?」
本当に馬鹿だ。俺は、どうしてこんなことをいっ てしまったのだろう。
「俺は、剣城のことが、大嫌いだ」
俺は、剣城なら、軽くあしらうんじゃないか。そう思ってたんだ。だが、剣城の反応は、俺の予想とは、遥かに違った。
「……大、嫌い?」
その声は、震えていて。
「…え?」
剣城の表情は、
「…ごめん、なさい」
今にも泣き出しそうだった。
「ちょっと…剣城」
「心配、いらない、ですよ。俺、明日から」
部室にも、学校にも来ませんから。
そういって、剣城は部室から、出ていってしまっ た。それも、凄い速さで。
「…剣城?」
外に出てみたが、剣城の姿はもうなかった。
「あ、霧野先輩!」
天馬だ。いつもとかわらぬ笑顔を振り撒いて、こちらによってくる。
「なあ、天馬…」
「何ですか?」
「剣城が、明日から来ないって」
「……え?」
俺が、剣城にしてしまったことを話した。すると、天馬の表情が、真剣なものになり、
「…何で、そんなことを、剣城に言ったんですか?」
「何でって…」
俺にはほんのいたずら心。でも、剣城にとっては、
「剣城、自分をずっと、攻め続けているんですよ。あの時から」
ああ。 俺の馬鹿。 馬鹿野郎だ。
次の日。本当に、剣城は学校に来なかった。…俺のせいだ。
その日のミーティング中、俺は、円堂監督に、こういった。
「じゃあ、質問あるやついるか〜?」
「…はい」
「ん?何だ、霧野」
「あの…剣城の家って、何処ですか?」
「…何で、そんなことを聞くんだ?」