短編
□罰ゲーム?それとも…
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松「いてててっ!」
係「男の子でしょ?我慢しなさい。まったく……、大の男と殴り合うなんて無茶なんかして!」
松「殴りあってないんですけど…。」
係「そうだったわね…。でも彼女さんを守るためだからって危ないでしょ?彼女さん泣いてたわよ?」
松「はい……。」(シュン
俺はいま遊園地の迷子センターにいる。別に迷子になったわけではなく、あの男達に殴られていたところを、周りの人達が助けてくれて、ここで手当てを受けているのだ。
俺は目の前にいる少し太っ…じゃなくて!ふっくらしている係員さんに手当てを受けている。
剣城は少しの間、別の部屋でまっててもらうことになった。
係「はいっ!これで終わりよ。」
松「あ、ありがとうございます。」
係「気にしなくていいわよ。あの男達は警察に引き渡したし、もう大丈夫でしょ。
でも彼女さん、一人にしない方がいいわよ?あんな美人を一人にしたら、狙ってくださいって言ってるものよ?」
松「まったくです……。剣城に何て言おう……。」
係「それよりも笑って「大丈夫」って言ってあげなさい。そっちのほうが、彼女も安心するわ。」
松「そうします…。」
とはいえ、やはり罪悪感はある。俺があのとき一人にしなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
係「……とりあえず彼女さんを呼んでくるわね。」
松「お願いします…。」
ガチャン
係員さんが部屋から出ていった。すると五分もせずに剣城が部屋の中に入ってきた。
剣「天馬!」
松「つ、剣城…。その…。」
剣「大丈夫か!?」
松「え…?」
剣「えじゃない!怪我は大丈夫なのか!?」
あんなに怖い目にあったのに……。
松「怒んない……の?」
剣「怒るにきまってんだろ!この馬鹿天馬!心配ばっかかけやがって!」
松「ごめん……。」
俺が素直に謝ると、剣城はいきなり泣き始めた。
松「え!?ちょっ、ちょっと!」
剣「っとに…しんぱ…い…させ…やがってぇ……。」
『笑って「大丈夫」って言ってあげなさい』
松「……剣城。」
俺は泣いている剣城を引き寄せた。剣城は素直に俺の胸の中におさまる。
松「大丈夫…。心配かけてごめんね。大丈夫だよ。なんともない。」
剣「…ほん…とか?」
剣城がおずおずとこちらを見上げてくる。俺はそれに笑顔で頷いた。
剣「よかっ…たぁ…。」
剣城はそのまま俺の胸の中に顔をうずめた。俺はその背を優しく撫でる。
係「…お取り込み中の所悪いんだけど……」
松/剣「「!!?」」
バッ!
俺と剣城が慌てて離れると、先程の係員さんが、戸口からニコニコとこちらを見ていた。
松「え!いや、その!え、えっと…。」
係「まぁまぁ、いいじゃないの。まだまだ若いんだから。いいわよねぇ〜青春って……。」
剣「っ〜///」
係員さんの言葉に剣城は顔を真っ赤にしている。
松「あ、あの!ご用件は!」
俺はなんとかごまかそうと、(実際はなにもごまかせてはいないのだが)係員さんにそう聞いた。
係「あっ、そうそう!これをあなた達にって園長がね。はい。」
俺は係員さんから、小さな封筒を受けとる。
松「なんですかこれ?」
係「おわびですって。園内でこんなことを起こしてしまったからって。」
剣「そんな!俺達が迷惑をかけたのに……。」
松「そうですよ。受け取れません。」
係「いいからいいから。君の勇気に敬意をあらわしてだって。返品は認めないそうよ?」
松「で、でもぉ…。」
剣「………。」
俺達がまだ遠慮していると、係員さんが大きな声でいった。
係「いいから!最近の子は遠慮をしすぎ!ちゃっちゃと受け取って、ちゃっちゃと出る!手当ては終わったんだから!ほら!」
松「わ、わかりました!剣城!行くよ!」
剣「え?あっ、あぁ。
ご迷惑をお掛けしました。手当てありがとうございます。」
係「どういたしまして。彼氏くんが無茶しないように見ててあげるのよ?」
剣「か…!?///し、失礼しました!」
ダダダ……
係「ふふふっ……。恋ってやっぱりいいわねぇ〜」
係員さんがそんなことを言っているなど、当然俺達は知るよしもなく、俺達はまた遊園地をまわることにした。
……といっても時間が時間で、あとひとつ、ふたつ乗り物に乗れるかどうかというところだ。
松「すっかり暗くなっちゃったね。最後になに乗る?」
剣「松風にまかせる。」
松「お化け屋敷もそうだっでしょ!俺は剣城の行きたいところに行きたいの!」
剣「わ、わかったよ……。んー……あっ。じゃああれがいい。」
スッと剣城が指差した先には、大きな花火が見えた。
松「は、花火?」
剣「馬鹿。よく見ろ。」
すると花火の色が変わった。そして次々と模様を変える。
松「……観覧車?」
剣「おぅ。駄目か?」
松「行く!俺、観覧車大好き!」
剣「そっか…、じゃあ行こうぜ?」
松「うん!」