白の巻物

□《『…好き?』》
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《ロドマカ編》


「マ〜カ〜ちゃんッ」

「…何だ?」

いつものように軽いノリで、ロッドはマーカーの隣へと座った。

いつものように読んでいる本から目を離さずに、マーカーはロッドに返事をした。

「ね、ね、俺のこと、好き?」

距離を縮めながら、ロッドが訊ねる。

また下らんことを…。

そう言わんばかりの視線を一瞬だけ隣の顔に向けて、マーカーはまた視線を本に戻した。

「ね、ね、俺のこと、好き?」

そんなことは少しも気にせず、ロッドは同じ質問を投げかける。

言わなきゃ気持ちは伝わらない。

聞かなきゃ気持ちはわからない。

だから、繰り返す。

「ね、ね、俺のこと、好き?」

穏やかな微笑みで言うも、目は真剣そのものだった。

「…嫌いだと言ったら?」

「振り向かせる」

「…好きだと言ったら?」

「抱きしめる」

短く答える口調も真剣だった。

「…そうか…」

それを聞いて、何かを納得したかのように本を閉じた。

「マーカーちゃん、俺のこと、好き?」

一呼吸置いてから、マーカーは言った。

「普通だ」

「…へ?」

微笑んだままの表情が固まり、目が点になる。

「好きでもなければ嫌いでもない。普通だ」

そう言ってマーカーは立ち上がった。

からかうような笑みをロッドに送って。

「ちょっ…ちょっとちょっと〜〜そんなのアリ〜〜?」

予想通り、困ったように笑う。

自分の言葉一つで表情が次々と変わるこの男は、見ていて飽きない。

「ね〜ね〜マーカーちゃんってば〜!」

部屋へと戻るマーカーの後を、ロッドはついていく。

その気配を感じながら、マーカーはふと思った。

きっと今、自分は楽しそうに微笑んでいるのだろう…と。

そしてもし、その表情を見飽きたら、言ってやろう。

『私のことが好きか?』と。

その時この男はどんな顔をするのだろう。

その時のことを想像して、マーカーは実際楽しそうに微笑んでいた…。

 
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