白の巻物

□飴湯様とのコラボ拍手
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《2つのお国柄》



―――コンコンコン。

控えめなノックの音。

この時間に来ると言っていたから、彼に間違いはない。

「どうぞ」

ロッドはそう返事をした。

鍵は開いている。

鍵は開いているのに…ドアが開かない。

「…?」

ロッドは少々部屋を片付けていた手を止めて、ドアを開けた。

「…マーカー?」

細い体を壁に預けて、マーカーはそこにいた。

「…やっと開いたか」

そう言ってロッドの前を通り、部屋に入っていく。

「…何で入って来なかったの?鍵開いてたんだよ?」

ドアを閉めながら言うと、マーカーはベッドに腰掛けながら言った。

「他人の家や部屋にはドアを開けてくれないと入れん」

「…何、それ?」

「違うのか?」

そ…そんな可愛い瞳で見つめられても…。

そんな習慣は初めて聞いた。

俺なんかは他人だろうと身内だろうとノックしたらすぐ、…いや、ノックもしないで入り込んじゃうけど。

中国とイタリアのお国柄ってやつかな。

…それにしても…。

「『他人の』家や部屋じゃなかったら、すぐに入ってきてくれるの?」

ロッドはマーカーの隣にそっと座った。

「あぁ…ノックをして返事があれば、な」

「そっか…」

肩を抱き寄せて、いつになく真剣に見つめ返せば。

「…ロッド…?」

綺麗な唇で名を呼んでくれる。

「まずは…『他人』のドアから開けないとね」

「ロッ……ん…」

優しくて確実なキスの鍵で。

2つの国のドアを開ける。

いつもそれは開け放っておいて。

いつでも入って来られるように。

「ロッド…」

「マーカー…」

その続きは。

1つのドアの中で囁く。

俺達2人だけの国の中で。

言葉を越えて、囁き続ける…。
 
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