白の巻物
□《炭酸水》
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《コージ+アラシヤマ》
「はぁ……」
息の詰まる仕事の合間に、アラシヤマは非常階段の踊り場へ出ていた。
昼間の太陽の光を浴びるのは久しぶり。
アラシヤマは手すりにもたれ、眼下の街並みを見下ろした。
「こがぁなところでサボッちょるんか…?」
「…あんさんと違いますわ…息抜きどす」
背後から聞こえてきた声に、振り向かずにツッコミを入れる。
「わしも息抜きじゃ」
そう言ってコージは、アラシヤマと同じように手すりにもたれる。
「…なんやその…真っ青な液体は…!?」
コージが手にしているペットボトルには、空のように青い炭酸水。
お茶以外口にしないアラシヤマは、目を大きく見開いた。
「ん?これか?新発売と書いてあったけぇ…買うてきたんじゃ」
飲んでみぃ?…そう言ってペットボトルをアラシヤマに渡す。
新発売て…こないインクみたいな青い飲み物…コージはんしか飲まれへんわ。
そう思いながらも、せっかき渡されたのだから…と恐る恐る一口飲む。
「なかなか、うまいじゃろ?」
「…うぇ…なんで無果汁やのにレモンとパイナップルの味がするんや…」
顔をしかめて、ペットボトルを突き返す。
「もう少し飲んだ方が、うまさがわかると思うがのぅ…」
コージは炭酸水を含むと、アラシヤマに口付け、静かに流し込んだ。
「…ッ!!」
炭酸水の色とは対照的に、真っ赤になるアラシヤマ。
「うまいじゃろ?」
悪戯っぽく笑って、コージは喉を鳴らして勢いよく飲んだ。
空色の炭酸水を飲むこの男は、空のように広く大きく、炭酸水のように爽やかな男。
もしかしたら、その飲み物も好きになれるかもしれない。
「…コージはん…もう一口、おくれやす…」