last night

□最終夜
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「これは何ということだー!?一体何が起こっているのかー???この恐るべきパワーの前に、成す術も・・・ああああああっー!!!」

ブレーダーDJ・・・逃げろって言ったのに・・・。

横目で気にしつつ、未だに降ってくる小さな瓦礫やガラクタ達を避ける。

「きゃああああああっっっ!!!」

「ここも直にまずいんじゃないのか、セツナ。」

マイケルがエミリーを庇いつつ、こちらに向かって叫ぶ。

「くっ・・・でも、タカオをこのままにはしておけないよ。・・・ひっ!?」

「セツナちゃん!!」

咄嗟に頭を庇うが、いくら待てども当たった感触はない。

『・・・悪いな、今この辺一体に結界を張ることが出来たからもう大丈夫だ。ここに僕がいる限りは守ってやれる。』

「キリ!!」

『・・・ここから離れるのはすすめないぞ。安全な場所を求めようにも、もう自分達の足で逃げられるようなレベルじゃないからな。』

「ああ。それに、俺達はこの戦いを見届ける義務がある。」

「今はタカオを信じるしかないネ。」

「その通りだ。」

私達は、遥か上空へ最後の戦いへ向かったタカオを思い、空を仰いだ。

月も星も見えないような暗さなのに、何故かキングオブダークネスに吸い込まれる人や物はハッキリ見える分気味が悪い。

それに加え、そんな技の中心で、今まで息を潜めていたゼウス本体が、私を狙っているのがわかる。

「案ずるな。何があってもお前は渡さない。」

「カイ・・・。」

カイに抱き寄せられ、少しだけ私自身の不安は軽くなるものの、キリの表情は未だ険しい。

『油断するなセツナ。奴が狙っているのは飽くまでお前だ。危なくなったらすぐに僕を回せ。』

「・・・うん!」












人も、町も、世界も全て飲み込む暗闇が、全身の快楽を刺激する。

同時に、今まで感じたことのないような優越感に、ブルックリンは目をうっとりとさせた。

「フフフ・・・遂に、遂にここまできた・・・!さぁ、後は君だけだよ・・・セツナ・・・!!!」

どれだけ離れていようとも、その姿をハッキリと見つけることができる。

しかし、彼女を捉えていた筈の視界に、ここにいないシルエットが写ったのだ。

そのシルエットは段々近付き、やがてブルックリンの前に立ち塞がる。

「こんな真っ暗な空にして満足か?・・・ブルックリン!!」

「っ・・・!!お前・・・っ!邪魔するんじゃない!!!僕は、僕とセツナの為に新たに世界を作り上げるんだ!」

「・・・っ、こんな荒れちまった空に、壊れた大地に・・・一体何が新しい世界だ!!そんな世界になんてさせねーし、セツナも渡さねぇ!」

「煩い!!僕は何としてでもセツナを手に入れる!誰もわかってくれなかったこの痛みを、セツナならきっとわかってくれるんだ!!」

「痛み・・・?」

「セツナなら、・・・ゼウスと同等の力を持った麒麟の主なら、僕と同じところまで来てくれる・・・!そうさ、僕は神だ!!今の僕なら、セツナの願いだって何でも叶えてあげられる!!!」

「セツナの願いだと・・・?あいつが、こんな空を望んだっていうのかよ!?」

「っ・・・!」

「空はもっと青いんだ、でっけえんだ!!あいつが・・・俺達が願う空は、世界は、そんな姿なんだよ!こんなところで一人でいねぇで、一緒に飛ぼうぜ、さぁ!!」

「ううっ・・・来るな、来るなーっ!!!」

「どわぁあああっっっ!!?」

圧倒的なゼウスの強さに、タカオは弾き飛ばされる。

その身体を受け止めるものが無い今、彼の身体はただ地上へと落下していった。



「ほら・・・誰も僕には近付けないんだ。」



その様をぼんやりと見ていたブルックリンだが、不意に隣から大きな機体が姿を現した途端、直ぐ様キングオブダークネスに吸い込ませる。

同じようにブルックリンを狙う兵器達を吸い込んでいき、とうとう込み上げてくる笑いを堪えることができなかった。

「ハハハハハハハ!!!いくら何をしたって無駄じゃないか!人じゃ僕には勝てない!!いい加減に諦めなよ!!」

その言葉に答えるものは誰もいない。



ブルックリンは遂に、地上にいるセツナへと視線を向けるのだった。
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