last night
□第三十八夜
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カイ・・・!!
思わず口を開きかけて、すぐに塞ぐ。
会話をしちゃダメということは、きっと、カイの問い掛けに私が答えたら即座にアウトになるということだ・・・。
元の世界の時間が経てば経つほど、カイの命が危ない今、それは何としても避けたい。
かと言って、このままでいるわけにもいかず、じり・・・と身動ぐものの、カイは依然として私から視線を逸らさない。
「・・・貴様、まさか・・・」
「!!」
どうしようか迷っていたその一瞬の隙に、カイがこちらへ詰め寄り、被っていたフードを取られそうになる。
咄嗟にそれを避け、やむを得ず割れた窓から脱出をした。
今逃げて、また後で来たところで、どのみち接触は逃れられないかも・・・と一瞬不安に駆られるものの、案の定カイが直ぐ様追ってくるので、そんな考えはすぐに飛んでしまう。
兎に角今は脚を動かさなきゃ・・・!
「待て!!」
待てと言われて待つ奴なんかいない。
悪意がないとはいえ、不法侵入が見つかったのなら尚更ね。
何より、今ここでカイと話すわけにはいかないのだから、慌てて走り続けるものの、カイはしつこく追ってくる。
皮肉なことだ・・・私があれだけ追いかけても中々捕まえられなかったというのに、こっちが逃げようとすると追ってくるなんて・・・!
「待て、っ・・・!!」
「っ・・・!!」
しかし、いくら少し幼いとはいえ、相手はあのカイだ。
既にすぐ傍に荒い息遣いが聞こえてきて、もう私達の距離がそこまでないことを悟る。
「(・・・捕まるのも時間の問題だし、仕方ない・・・こうなったら・・・!)」
捕まる寸前で身を翻し、聖獣の宿らないドラキリューを構えた。
3、2、1・・・ゴーシュート!!
「なっ・・・!ちっ、ドランザー!!」
ちゃっかり持ってきていたのか、カイはドランザーを放つ。
彼はこの時、ドランザーを封印していたんじゃないのか。
「行け、ドランザー!!」
くっ・・・!!
心の中で、ドラキリューに指示を出す。
聖獣がいなくとも、こちらは最新型のHMSを搭載したベイだ。
例え一流のブレーダーが操ろうと、一年以上前のただのベイには負ける筈は無い・・・とはいえ、流石はカイだ。
しぶとくこちらの攻撃を避け、反撃の隙を窺っている。
「答えろ、あそこで何をしていた!?」
「・・・・・・。」
「いや、それ以前の問題だ。何故あそこにいた。・・・・・・土崎セツナ!!?」
・・・・・・やっぱりバレていたか。
それでも私は答えられない。
「・・・どれだけ俺が貴様を待っていたか・・・どれだけ絶望を抱えて日々を過ごしていたか・・・。」
ごめん。
知ってるよ、カイ。
私もそうだったから・・・二年前、元の世界へ帰って、一日たりとも貴方や皆を忘れたことなんてなかった。
ずっと会いたくて、抱き締めてほしくて、戦いたくて・・・。
でも、今は伝えられない。
もっともっと未来で、貴方が居なくなっちゃうかもしれないから・・・!
私は早く行かなきゃいけないんだよ・・・!!
「(ドラキリュー、ヘヴィメタル・スターストーン!!)」
「なっ・・・!?何だこの技は・・・クソッ、朱雀ー!!!」
例え聖獣を出そうとしても、今の私には敵わない。
ごめんね・・・カイ。
「ぐわぁぁぁぁああああっっ!!」
私の放った必殺技は、ドランザーの一歩手前に落ちた。
とはいえ、新しいベイはカイが見たことの無い威力を持っていた為、呆気なく彼らを後ろへぶっ飛ばすには十分すぎる威力を持っていたのだが。
「くっ・・・・・・。」
「・・・・・・。」
私は改めて、ドランザーへ手を伸ばす。
しかし、すぐに反応したカイは私がドランザーに触れるより早く、その手を力強く掴み、そのまま抱き寄せた。
「っ・・・!!」
まずい・・・捕まったら逃げ切れる自信がない・・・!!
「・・・いい、何も言わずとも。」
「!?」
カイの指に、更に力が加わる。
「・・・・・・先程、朱雀が言っていた。・・・・・・お前が何故ここにいるのか、話せないのか。」
「・・・・・・。」
「またセツナにこうして会えた・・・触れられた、だから今はそれでいい。」
「・・・・・・、」