last night
□第三十三夜
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「ドラキリュー!!」
細い血管を一気に血が巡り、指先からビリビリと痺れが身体を走り抜ける。
しかし、そんなことが気にならないほどに、私の目は確りとこの聖獣を捕らえて離さず、彼もまた、私から手を緩めることはなかった。
それでも、譲れない。
「何度だってやってやる、・・・ヘヴィメタル・スターダスト!!」
精一杯振り絞った声に答えるように、ドラキリューはゼウスに向かって、飛びきりの流星群を放っていく。
闇夜に穴を開けるように、火の光となった星屑達はゼウスを襲う。
「くっ・・・!」
お願い、もう少し・・・もう少しだけ耐えて!!!
ここで私が負けたら、カイもキリも助からない。
タカオやレイ、マックス、大地、キョウジュにヒロミちゃん・・・・・・私達を待っている皆が、未来を掴めなくなる。
そうだ。
この手に掴むのは勝利だけじゃない。
かけがえの無い人々との・・・・・・大切な未来だ!!!
「っ・・・!」
思わず目を瞑ると、瞼の裏で、かつて私に優しい目を向けていたお兄ちゃんの姿が浮かんだ。
「・・・・・・お兄、ちゃん・・・・・・。」
・・・・・・まだ、聞いてないことが沢山ある。
話したいことだって・・・・・・。
力が・・・力が欲しい!!
「うぉぉぉおおおおおおっっっ!!!!!」
喉が張り裂けそうなくらい叫んで、その反動で思いっきり息を吸い込んだ。
私の持てる力全てで、カイを・・・キリを助ける!!!
「目覚めろ、ドラキリュー!!!!!」
「!!!」
途端に、辺り一面が真っ白になる。
そして、遂に・・・。
『待たせたな!!』
「・・・!!」
キリ・・・!!
ゼウスの闇を破って出てきたキリが、身体に纏わりついた邪気を払うこともせず、瞬時に私の目の前へと降り立った。
ブワッと僅かな風が吹くと同時に、一陣の光が私の目の前を横切り、ゼウスの腕を切断する。
ギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!と、ゼウスの叫ぶ声と共に落ちる私を、キリは背中で上手に受け止めてくれた。
「ありがとう、キリ・・・!!」
ボロボロになった手で、その身体にしがみつけば、嗚呼、間違いない。
・・・・・・本物の、キリだ・・・・・・。
『・・・・・・。ゼウス・・・もう好きにはさせないからな!!』
キリが大きく息を吸ったかと思うと、ゼウスの叫びなんかよりも更に強力な、耳を劈くような吠声を轟かせる。
それはあっという間にゼウスの邪気を払い、到頭捕らえられていたカイが姿を現した。
「っ・・・カイ・・・!!」
痛む身体に鞭を打って、私はキリの背中から手を伸ばした。
『セツナ!!一瞬だけ隙を作る!!そのタイミングでカイを引きずり出せ!!』
「わかった!!・・・・・・行くよ、キリ!!」
『ああ!!』
「ヘヴィメタル・スターダスト!!」
三度目の必殺技で、骨がバキバキと軋む音がする。
限界を超えた反動で、意識が星と共に散り散りになりそうになるのを必死に繋ぎ止めて、がら空きのゼウスの懐へと飛び込んだ。
「うぅぅ・・・!!!」
痛くない!
苦しくない!!
辛くない!!!
諦めてたまるか!!!
「カイィィィィッッ!!」
今度こそ離さない。
しっかりと抱き止め、勢いよくゼウスから引っ剥がして、私達は下へと急降下していく。
しかし、そんな私達へ往生際の悪いゼウスが手を伸ばすのが見えた。
『・・・・・・僕の主にそんなことはさせない・・・!!・・・果てろ、ゼウス!!』
ヘヴィメタル・スターダストの最後の一撃が、ゼウスの心臓を撃ち抜くと同時、辺りの空間が歪み始める。
『セツナ!!』
「キリ!!」
私達の下へとキリが駆けつけ、そのまま身体の輪郭がボヤけてくる。
そして・・・・・・。