last night

□第二十九夜
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「ゴーシュート!!」



「おっと、やるなセツナ!!だが、そんなスピードじゃ俺は捕まらないぜ!!」

今日の相手はマイケル・・・・・・いくらレギュラーから外れていたとはいえ、彼が世界大会の間中なにもしなかった訳がない。

それに、リックに劣るとはいえ、あの体格・・・・・・やっぱり、元々のスタミナが違う!!



「・・・・・・セツナ。お前さっきから失礼なこと考えてないか?」

「ソンナコトナイヨ。」

「・・・・・・。」

ハァ、とマイケルは溜め息を吐くと、スタジアムを跳んでこちらへ来た。

「ちょっ、マイケル今バトル中!!スタジアムのこっちに来たら・・・!!」

「セツナ。」

「!!」

『うおっ!?』

マイケルが私の顎に手をかけるや否や、ドラキリューが大きく傾いた。

「あっ・・・ドラキリュー!!」

「chance!!トライグル!!」

慌てて体勢を立て直すものの、マイケルがその隙を逃す筈もなく、ドラキリューはスタジアムアウトをしてしまった。



「あーあ・・・。」

「セツナちゃん、そんなことで動揺しちゃダメよ。」

ヒロミちゃんがやれやれと首を振る。

「だってマイケルが・・・・・・ってか、試合中スタジアムのこっち側に来るのってどうなの?」

「・・・・・・。」

「マイケル?」

マイケルは黙ってトライグルを手に戻すと、私に向き直った。

「世界大会の時から思っていたが・・・セツナ、お前は俺達なんかよりもずっと、ベイと深いところで繋がっているな。」

「え・・・・・・。」

押し黙ってしまったのは、なんて答えるか迷ったからだ。

昨日女子部屋では、私とキリの出会いについて少し触れた。

だから、マイケルにもそれを話すのは別に構わないのだけど・・・。



「聖獣との契約の深さ、それが関係しているんだ。」



!!



「お父さん・・・。」

突如私達の後ろから現れたお父さんが、口を挟んだ。

タバコを咥えているということは、休憩中だったのだろうか。

でも、わざわざこっちに足を運んでくれるなんて・・・。



「本来、聖獣をベイに宿すということは、ブレーダーとの契約が必要になる。その契約を交わすことで、ブレーダーは聖獣の力を、聖獣はブレーダーの力を得ることになるからな。」

お父さんはその辺に落ちていた木の枝で、足元に図を描いてくれる。



「一般的なブレーダーと聖獣が契約で使用する力が全体のうち50%だとする。これだけでも相当戦えるが、セツナは・・・というか、麒麟は違う。"理由はわからんが"、この力を毎回ほぼ100%使っているんだ。」

「ほぼ100%・・・。」

「そう。その分得る力は大きいが、直ぐに力尽きてしまう。学校で電池の回路について習ったろ?一般的なブレーダーが並列つなぎだとしたら、セツナは直列繋ぎになるってわけだ。」

並列つなぎと直列つなぎ・・・・・・そんなことやったな・・・。

「要するに、私は一度に力を使いすぎてるってことだね。」

「そうだ。だが、別にそれは悪いことではない。・・・・・・寧ろ、大事なのは次のことだ。」

?

「マイケル君が言った"ベイと深いところで繋がっている"ということは、ベイに自分の気持ちがダイレクトに伝わりやすいということだ。・・・良い意味でも、悪い意味でもな。」

「つまり、お前は他のブレーダー以上にメンタルを強くする必要があるってわけだ。」

「め、メンタル・・・・・・。」

つまりそれは、キリの言う"心の強さ"に繋がるのだろう。

そう、いつも私はここが課題だった。

心が伸び悩んでいるときは、キリは思うように成長せず、でも、気持ち的に得るものが大きいときは、キリもぐんぐん伸びるし、私の勝率もどんどん上がっていくのだ。



「・・・・・・でも、メンタルを鍛えるって、具体的にどうしたらいいのかわからなくて・・・。」

「そうだな。それなら・・・。」

マイケルが口を開こうとしたときだった。

「なんだお前達。何の話をしてるんだ?」

ひょこっとライが顔を出し、私達の会話に参加してくる。

「げっ、黒猫。お前は呼んでねえよ。」

「なんだと!?昨日に引き続き今日もやるのか!?」



・・・!!



「なるほど!!悪口言われてもすぐに怒らないトレーニングしたらいいのか!!」

「「違う!!」」

うわっ、息ぴったり・・・!!
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