last night
□第二十五夜
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「しょ、勝負ったって・・・」
この格好で!?
「ふざけんな!!んな勝負この俺が引き受けてやらぁ!!」
タカオが鼻血を拭いながら啖呵を切るものの、ミンミンは呆れたように肩を竦める。
「はぁ〜・・・だぁかぁらぁ、君じゃ勝負にならないのよ。」
「んだとぉ!?」
「だってこれはぁ、ベイブレード界のアイドルの座を賭けた勝負なんだからぁ。」
「あっ・・・あいどるだとぉ!?」
・・・・・・初耳だ。
「わかったでしょ?だから君じゃ意味が無いの。さ、立ちなさい土崎セツナ。あたしと勝負するのよ。」
「・・・・・・。」
私は座ったまま、考えを巡らせた。
今、こんな姿で立つのはとても恥ずかしい。
でも、かといって売られた喧嘩を買わないのは、一つチャンスを無駄にするような気がしたのだ。
・・・・・・なら、方法は一つしかない。
「・・・・・・1分で倒す。」
カチャリとシューターを構える。
(立ち上がった瞬間に回りから「おぉ〜」と歓声があがったが、無視!!)
しかし、ミンミンはちっちっと指を振り、溜め息を吐いた。
「違うわよぉ、あたしはアイドルとして対決をしたいの。だから、シューターじゃなくて、こっちを構えて♪」
「!?」
そう言ってこちらに放たれたのは、なんとマイクとギター。
「は・・・はぁ!?私ギターなんかやったことないんだけど・・・!!」
「勿論、ただのギターじゃないわ。」
ミンミンは再びパチンと指を鳴らす。
すると、彼女にもまた、私と同じギターとマイクが用意された。
「これは、皆の応援パワーで奏でることのできるギターなの。貴方が歌いたい歌に併せてメロディーが鳴るわ。」
「・・・はぁ・・・。」
・・・・・・どこまでハイテクなんだ、このアイドル・・・・・・はっ、待てよ、もしやこれは科学の力じゃなくて、聖獣の力!?
だとしたら話は別だ。
「・・・セツナ・・・。」
「・・・わかった。で、具体的にどうしたらいいの?」
「フフっ♪そこにいる元BBAの皆と、ミンミンバンドで戦ってもらうわ。そして、彼等の力であたし達がバンド対決をするの。ここにいるみーんなに、投票してもらって、人気があった方が勝ちっていうのはどぉ?」
「要はボク達はバトルでセツナちゃんを応援できるってことだネ。」
「だぁっ、こうなったら何がなんでもやってやらぁ!!」
「おいらだってやるぜ!!セツナ、絶対勝てよな!!んで、その後でそのチャラチャラした姉ちゃんぶっ倒すぞ!!」
「あ、あわわわ皆さん、ミンミンちゃんには優しくしてくださーいっ!!」
「あんたはどっちの味方なのキョウジュ!!」
・・・・・・若干不安だ。
「・・・・・・ふぅ。」
息を吐いて呼吸を整える。
そして、私はギターを肩に掛けてマイクを自分の高さに合わせた。
歌なんて滅多に歌わないけど・・・・・・でも、ここで勝てなきゃ次にいけない!!
「さぁ、曲は決めたかしら?」
ゆっくりと頷き、真っ直ぐにミンミンを見据える。
「アーユーレディ?」
ブレーダーDJのコールで、私達は構える。
「3、2、1、ゴーシュート!!」
「いっけえっ!!ドラグーン」
「いけっ、ガイアドラグーン!!」
「Go!!ドラシエル!!」
ギュイーン!!
「!!」
ホントだ・・・皆のやる気で音が勝手に・・・・・・って、もう前奏始まってる!!
「〜♪」
しかし、人前で歌うのってすごく緊張する・・・・・・そもそも、私は自分の歌がどれくらいのレベルなのかさえわかっていない。
「ギャラクシーストーム!!」
「〜♪」
・・・・・・タカオ・・・・・・!!
「負けてられっかぁ!!いっけえ!!」
大地・・・・・・。
「一気に片を付けるネ!!ドラシエル!!」
マックス・・・・・・。
皆が私を勝たせるために一生懸命戦ってくれてる・・・・・・なら、私だって一生懸命彼等に答えたい!!
「〜♪」
皆、頑張って!!
「うぉおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!」
「「「!!!」」」
そのとき急にギャラリーが盛り上がる。
驚いてそちらを見ると、ただミンミンが観客に向かってウィンクをしただけだった。
「・・・って、ああああっっ!!」
「?」
かと思えば今度は大地が変な声をあげたのでそちらを見ると、なんとガイアドラグーンがふらついている。
「大地!!」
「負けるなガイアドラグーン!!」
おいおい・・・勘弁してよ大地。
ガイアドラグーンが負けたら演奏が・・・・・・。
「〜♪」
・・・・・・って、あれ?
問題なく音が流れてる・・・?