last night
□第二十一夜
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「・・・よし、行くか。」
『ああ。』
私はキリを元に戻すと、部屋を出た。
とうとうこの日がやってきたのだ。
・・・・・・この一試合で、全てが決まる。
しかし、会場に着いて控え室へ行くものの、依然としてタカオたちの姿が見えない。
「・・・まさか、この期に及んで寝坊なんてことは無いよね・・・?」
『・・・・・・。』
私達は今までの彼の行動や性質を思い出す。
『・・・あり得なくはないぞ。』
「・・・・・・うん。」
私は意を決して控え室を出た。
しかしその次の瞬間、勢いよく誰かにぶつかり、よろけてしまう。
「いったぁ・・・・・・何!?」
「〜っ・・・・・・あ、セツナ!!」
「大地!?もう、遅いじゃん!!心配したんだよ!?」
「・・・・・・。セツナ、落ち着いて聞いてくれ。」
「?」
「今、タカオとキョウジュでドラグーンの修理をしてるんだ。」
「はぁ!?なんでこんな時間まで!?昨日いっぱい時間ならあったでしょうに!!」
「エンジンギアがぶっ壊れちまったんだよ!!」
「!!」
エンジンギアが壊れたって・・・
「そんなの、交換すりゃいいんじゃ・・・」
「タカオのエンジンギアは最新型で、そう易々と手にはいるもんじゃねえんだとよ。だから、キョウジュが必死乞いて修理してんだ。」
「で、でももう時間が・・・」
「仕方ねえんだ。・・・セツナ、もしタカオが間に合わなかったら・・・そのときは、おいらが出る!!」
「!!」
ドクンと、心臓が音を立てた。
同時に、体温が5度くらい下がったんじゃないかってくらい、寒気がした。
「・・・・・・っ、」
「セツナ?大地も、どうしたんだ?」
そのとき聞き覚えのある声がして、私達は同時に振り返った。
「レイ!!」
「ボクもいるネ。」
「マックス!!」
「くっ・・・やはり、また合いませんでしたか・・・。」
エンジンギアそのものの亀裂は塞がったものの、いざ回すとなると、どうしても以前の精度には程遠い。
もう何度目か。
不眠不休で修理を続けた甲斐も空しく、時間ばかりが消えて行く。
「あーもうっ、なんでこんなに難しいのよ!!」
「口を動かしている暇があれば手を動かせ!!試合までもう時間がない!!」
「だぁっ、もう!!」
未だにパーツの嵌まらないドラグーンを前に、BBAのメンバーからはどんどん余裕が無くなってくる。
しかしそんな中でも、キョウジュは最後まで決して気を抜かない。
「・・・仕方ありません。こうなったら、我々も会場へ向かいましょう。」
「でも、車の中で修理なんて・・・っ」
「このまま不戦敗するよりマシです。」
「キョウジュ・・・・・・っ、任せたぞ・・・!!」
「ええ・・・。」
「熾烈を極める決勝戦!!・・・の前に、突如金レイ選手、水原マックス選手の申し出により行われたエキシビジョンマッチ!!残り時間僅かとなった今、勝ち残るのはどのチームだ!?」
決勝戦を前にして、私はレイやマックスの力を借り、大転寺会長にエキシビジョンマッチを行うことを申し出た。
・・・・・・スタジアムのど真ん中で。
そうなれば、勿論観客が黙っているわけがないので、半ば無理矢理話を通すことに成功した。
こうして、バイフーズ、PPBオールスターズ、Fサングレ、バルテズソルダの選手総当たり戦が始まったのだが、流石にこれ以上の時間は稼げない。
レイ・・・マックス・・・。
「・・・・・・ふっ、どうやらお互い限界みたいだな。」
「そうみたいネ。・・・でも、まさかセツナちゃんがあんな行動に出るなんて思ってなかったヨ。」
「全くだ。・・・・・・さて、マックス。そろそろ決着を着けるとしようか!!」
「Yes!!覚悟するネ、レ・・・・・・イィッ!!?」
「なっ・・・!!」
互いに技を決めようと思ったそのとき、横からピンク色のベイが割って入り、ドラシエルとドライガーをぶっ飛ばしたのだ。
「やったー!!レイ兄とマックスに勝っちゃったー♪」
「ま、マオ・・・。」
「Oh・・・・・・。」
まさかの結果に、私もマックスも、もちろんレイも、言葉がでなかった。
しかし、このときマオが見せた笑顔は、今までで一番のものだったと、後にレイは語った。