last night
□第二十夜
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「はぁっ、は・・・・・・。」
身体が熱い・・・。
このままじゃ、きっと・・・・・・。
『セツナ!!』
日本に着き、私達は一先ず木ノ宮家に直行した。
「じっちゃん!!」
「おお、タカオか。・・・ん?セツナちゃんに大地君・・・一体どうしたんじゃ?」
「セツナは熱が引かなくて困ってんだ!!大地も全然飛行機酔いから復活しねーし・・・とりあえず俺の部屋に運ぶから、冷やしたタオル持ってきてくれ!!」
遠くでフィルターが掛かったように、皆の声が聞こえる。
そもそも、事の発端は朝、目が覚めてからだった。
キリ曰く、大地から黄竜の力の素を受け取った副作用で、酷い目眩に襲われながらも飛行機に乗るが、段々熱が出て来てしまったのだ。
おまけに、時々鼻血まで出て来て服や周りの布製品を悉く赤く染めてくれる。
しかし、一方で大地も、私から力を吸われたせいで上手く力が出ないのと、飛行機酔いで顔が真っ青だ。
こうして私はヒトシさんとヒロミちゃん、大地はタカオとキョウジュに抱えられながらなんとかここまで辿り着いた。
「医者に見せようにもこの時間じゃのう・・・。そうじゃ、BBA本部はどうなんじゃ?」
「どのみちこんな時間じゃやってねえよ。大転寺のおっちゃんにも繋がんねえし・・・・・・。」
・・・・・・。
バタバタと、部屋から足音が遠ざかって行く。
背中に当たるベッドは柔らかく、漸く横になれたことで、段々緊張が解れたせいか、瞼がとろんと重くなり、私はそのまま意識を手放した。
夢の中で、私は元の世界にいた。
家は、いつも通り荒れている。
でも、私の隣の部屋からは物音がして、恐る恐るそちらへ行くと、そこにはヒトシさんがいた。
「起きたか。」
「えっと・・・。」
驚いた。
夢の割にはあまりにも素朴で、自棄にリアルだったから。
だからか、妙に思考もハッキリとしていて、私は彼に対してすぐに質問することができた。
「ヒトシさんが何故ここに?だってここは、私の夢の中の筈なのに・・・。」
「・・・・・・。」
彼は目を細めてこちらを見つめ、そのまま私の肩を抱き寄せた。
「!! ヒトシさん・・・、」
いや、違う。
「・・・貴方、誰?」
『・・・・・・ハハッ、夢の中はどうも感覚が鈍るらしいな。・・・この俺を倒した割に気配でわからないとは、随分な体たらくではないか。』
・・・???
「もしかして、黄竜・・・!?」
『ご名答。』
「!!」
その瞬間、ヒトシさんが微笑んだかと思うと、あっという間にそこには黄竜が現れ、私を見下ろした。
『さて、時間があまりない。手短に話すぞ。・・・麒麟に選ばれし少女よ、貴様は先の戦いで俺と主である大地に打ち勝った。故に、俺達の力の大半を得たことは、既に察しているな?』
「まぁ、そうだけど・・・。でも、改めて貴方が私の前に現れたってことは、何か気を付けなきゃならないことでもあるの?」
『ああそうだ。・・・・・・二つばかり、な。』
黄竜はそう言うと、再びヒトシさんの姿になり、私に近付いた。
『一つ。目に見えることだけを信じぬことだ。己のことばかり考えると、貴様の善意は嘗ての麒麟同様に、全て邪と化すだろう。』
つまり、それはマヤカシに囚われるなということだろうか?
『二つ・・・・・・。中央を守る存在としての役割を忘れるでないぞ。俺達の力までも受け継いだからには尚更な。』
「・・・・・・。一つ、聞いていい?」
『なんだ。』
「なんで貴方はわざわざ、ヒトシさんの格好をして私の前に現れたの?それも、私の家で。」
『・・・・・・。言っておくが、俺が自分からこの姿になったのはさっきのがはじめてだ。最初に見たのは、貴様が無意識に作り上げていた夢幻だ。・・・・・・ずっと会いたかったのだな、この者に。』
「え・・・・・・。」
こくりと頷けば、黄竜はポスッと、私の頭に手を置いた。
『・・・しかし、忘れるなよ。本来はそれが定め。貴様はそれを覆す機会を与えられたに過ぎないということを。この機会すら与えられないのが、一般的であるということを。』
「・・・・・・。」
黄竜は私の中に鉛のような言葉を引っ掻けると、そのまま消えてしまった。