last night
□第十八夜
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「クソッ・・・完全に遅刻だわこれ・・・。」
とうとうオーストラリアステージ第一試合が始まったというのに、私は一人、廊下を走っていた。
『セツナ!!もうファーストバトル終わったみたいだぞ!?』
「えっ!?」
キリに遅れて意識を集中させると、確かに、先程まであった筈の聖獣の気配が大人しくなっている。
「参ったな・・・。この分だとセカンドバトルも終わっちゃう・・・、ん?」
一、二・・・・・・。
「・・・キリ、ファーストバトルはFサングレとバルテズソルダの試合だったよね?」
『ああ。・・・だが、どうやらやつらは一対一で戦ったようだな。』
「うん・・・。でも、それならこの気配は?」
続いて感じ取ったのは、複数の聖獣の気配。
『大方、ピアスヘッジホッグに、他のベイのパーツを混ぜて試合に挑んでいるのだろう。』
「うん・・・いや、なんかそれとはまた違う・・・もっとこう、性格ひん曲がっていて、柄の悪いのが・・・、」
「へえ。それって俺たちのことか?」
「『!!?』」
背筋がゾクゾクと粟立つ。
恐る恐る振り返ってみると、そこには・・・。
「ね、ネオボーグ・・・」
の、ユーリとボリス。
私の最も苦手とするブレーダーが、すぐ後ろにいた。
しかし、反射的にキリをベイに戻して睨むものの、彼等は私の威嚇など屁とも思っていないのか、相変わらず嫌な目で見下ろしている。
「な、なんでここにいるの?今はFサングレとバルテズソルダの試合の筈でしょ?」
「ふん。戦うことのなくなったチームに用なんてないだろ。」
「ああそーですかい。・・・・・・その割りに、会場の方から来たんだね。」
「「・・・・・・。」」
「?」
急に黙る二人。
その表情はいつもと変わらないものの、何かを隠しているのは確かだ。
面倒ごとには関わらなきゃいい、そうわかってはいるのだけど、それでも頭を突っ込まずにはいられない私は、やはり口を開いてしまう。
「ねぇ、何か企んでいるんじゃないでしょうね?」
「何のことだ。」
「・・・・・・。いくらヴォルコフと関係がなくなったとはいえ、私は貴方達が過去にやってきたことを肯定する気はない。もし、この世界大会で何かする気なら、そのときは私達が赦さない。」
そう思ったのは、彼等がいつものように嫌味の一つも寄越してこないから。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
まず一歩、足を踏み出したのはボリスだった。
「セツナ。」
「な、なんだよ・・・。」
「俺と戦ったときの傷は、癒えただろ。」
「当たり前だよそんなの。・・・てか、何今更・・・」
「なら、お前に話す義理はねえってことだ。」
「え?」
それだけ言うと、ボリスは私を横切り、歩いていってしまう。
ユーリもそれに続く。
「ねぇ・・・ちょっと!!」
大声を出しても、彼等は振り返らない。
間違いない・・・あいつら、何か隠してる!!
「待っ・・・」
『待てセツナ!!一人で何をする気だ!?』
一瞬ベイに戻っていたキリが突然実体化し、私の前に立ち塞がる。
「キリ!あいつら否定しなかった!やっぱり何か隠してるよ・・・・・・!!」
『そう思わせといているだけかもしれないぞ。兎に角落ち着けセツナ。今は世界大会の方が先だろ。』
「・・・!・・・・・・わかったよ・・・・・・。」
追いたい気持ちを抑え、踵を返す。
ユーリ、ボリス・・・・・・何をしようとしてるんだよ・・・・・・!!?
漸く会場に着くと、既にセカンドバトルは大詰め。
そんな中、私はFサングレがシングルで戦っていること、それから、バルテズが居ないことに気付いた。
どういう状況なんだ・・・?
「いっけー!!フレイムペガサス!!」
「お願い!!ピアスヘッジホッグー!!」
二つのベイが真正面からぶつかり、強い光が放たれる。
しかし、次の瞬間、スタジアムに残ったベイは一つ・・・。
「決まったー!!ピアスヘッジホッグ、スタジアムアウト!!勝者はラウル選手だー!!」