last night
□第十六夜
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「熱はなし・・・か。よし、起きるか!!」
『無理するな。』
「大丈夫。倒れるの慣れてるから。」
『ふぅ・・・。』
テレビで見たカイの試合はやっぱり凄くて、このまま大人しく寝てなんていられない。
それに、バルテズソルダの皆が、ありのままの試合を見せてくれたし・・・とどのつまり、やる気スイッチが入ってしまったのだ。
しかし、案の定今回のホテルもスタジアムがついていない為、こっそり外に出ようかなとか考えていたり・・・。
『それにしてもセツナ。流石に着込みすぎだ。』
「うっ・・・だって、日焼けしたらやだし・・・。」
『布一枚巻いておけば済む話だろう。それに、もう日が傾いて来た。お前が出ていたときよりは全然マシな筈だ。』
「・・・はぁい。」
確かに、パーカーの下に三枚も着込むのは違うよな・・・。
仕方ないと、私は着ているものを脱ぎにかかった。
が、
「たっだいまー、って、んなぁっ!?」
「!!」
まさに、キャミソール一枚になったそのとき、急に扉が空いてタカオが現れたのだ。
「わっ、悪い!!!」
「どうしたのよタカオ・・・って、バカ!!」
後から来たヒロミちゃんが、スパーンとタカオに一発ハリセンを喰らわせた。
「・・・で、なんでセツナちゃんはあんなところでストリップしてたわけ?」
パジャマならともかく、私服に着替えていたことを、ヒロミちゃんは言っているのだ。
「う・・・実は、」
隠し事はしない、という約束をした手前、観念して正直に話せば、呆れたように溜め息を溢すヒロミちゃん。
「もう。本当にベイが好きなんだから・・・いいわ。但し、いくら平気でも無茶はしないでね。あと、私達も付いていくから。」
「あ、ありがとう・・・。」
「いいのよ。ついでに夕飯の買い出しもしたかったしね。」
「「!!!!」」
そのワードを耳にした途端、タカオと大地はギョッとしてヒロミちゃんを見た。
「ひ、ヒロミが作んのか!?」
「当たり前でしょう?この宿食事付かないし、外食は高いし。」
「お、俺は外食がいいぞ!!セツナだって腹減ってるよな!?」
「ああそうだ!!セツナを待たせたらまた倒れちまうかもしんねえ!!なぁセツナ!!」
「え、あ・・・。」
二人の目が必死に"そうだと言ってくれ"と訴えている。
・・・うん、確かに前に頂いたお弁当のことを思い出すと・・・・・・。
「うん、練習するのにお腹が減ってたら困るな。すぐに食べに行きたい。」
「あら、そう・・・。」
ごめんね、ヒロミちゃん。
今の私には何もフォローはできない。
「仕方ないわね。それじゃ、さっさとキョウジュと監督を呼んできましょうか。タカオ、大地くん。行ってきてちょうだい。」
「はぁ!?なんで俺が」
「セツナちゃんの着替えを覗いた罰よ!!ほら早く!!」
「おいらは見てないぞ!?」
「ちぇっ、これが初めてじゃないっつーの・・・ブツブツ・・・・・・・・・行くぞ大地。」
「あーっ」
何やら呟きながら、タカオは大地を引っ張って行った。
「さってと、セツナちゃん。実はセツナちゃんにいいものがあるのよね。」
「へ?」
「じゃんっ!!」
「!!」
ヒロミちゃんは大きな紙袋から、一枚の布・・・いや、衣装を取り出した。
それも彼女が着ているものよりも数段際どい、ダンサーのお姉さんなんかが着ている奴だ。
「ちょ、ちょっと、なんでそれを私に・・・?」
「折角だから一緒に着たいじゃない。・・・・・・というか、勢い余って買ったはいいものの、サイズが合わなかったのよ・・・返品も出来ないし・・・。」
「・・・・・・。」
無言で衣装を受けとる。
・・・確かに可愛い。
が、私ももう流石に羞恥心というものがちゃんと芽生えてだな・・・・・・あー、でも練習するのについてきてもらうわけだし、う、うぅぅ・・・・・・。
「・・・・・・今日、だけなら・・・・・・。」
様々な葛藤の後、私の口は勝手に答えを出していた。