last night
□第十五夜
1ページ/6ページ
しかし、まずいことになった・・・。
私は未だにベンチでシン・・・としてしまった大地を見て、舌打ちをしたい気持ちになった。
このまま仮にタカオが負けてしまったら、サードバトルは必然的に大地が戦うことになる。
でも、あのベイで再戦は絶望的だ・・・。
「もう我慢できない!やっぱり大転寺会長にいうべきよ!!」
「同感です。ベイはブレーダーのパートナーであり、道具ではありません!!」
ヒロミちゃんとキョウジュがヒトシさんにそう訴えるが、彼はそれでも首を縦には振らない。
「ダメだ。」
タカオ・・・!!
「もしそんなことしたって、俺達が勝ったことにはならない。あいつにとって、ベイは道具。ブレーダーは駒。だから平気で汚ねぇ真似をする。」
・・・・・・。
向こうのベンチにいるバルテズソルダを見る。
そして、観客席にいるPPB、バイフーズ、ユーロチームを見る。
今、私達がいるこの場に、どうしても立ちたくても立てなかった人達がいる。
そして、バルテズソルダは・・・・・・いや、バルテズは、その権利を無理矢理奪った。
「・・・・・・だから俺は、この手であいつに見せつけてやらなきゃ気がすまねぇ。本当のベイバトルを!!」
「・・・タカオ。」
「兄ちゃん・・・だから頼むよ!!俺を戦わせてくれ!!」
「・・・・・・行ってこい。」
「兄ちゃん・・・!!ああ、必ず勝ってやる!!」
タカオは私達に強く頷くと、ミハエルの待つスタジアムを振り返った。
「タカオ・・・・・・勝つよ!!」
「・・・・・・!!」
タカオは振り向かずに、拳を上に上げた。
「アーユーレディ?3、2、1・・・・・・」
「・・・・・・セツナ。」
「なんです?監督。」
両者がベイを構え、ブレーダーDJがカウントを始めた頃、ヒトシさんが私を呼んだ。
「ゴーシュート!!」
「・・・お前は、どう戦う?」
「?」
私はヒトシさんの顔をじっと見る。
しかし、すぐに彼が言いたいことはわかった。
「・・・・・・そうですね・・・・・・。作戦を実行しなくなった分、きちんと他で見せますよ。」
スタジアムに立てないなりの、バトルをね。
私はまず、ベンチから立ち上がってスタジアムをじっくり眺める。
バルテズソルダは今まで、自身のベイへの細工しかしてなかった。
何故なら、スタジアムへの細工はすぐにバレるからだ。
なら・・・・・・何か・・・・・・
「!!」
やっぱり、刃物みたいなのを仕込んでる・・・!!
「・・・タカオ、デスガーゴイルから離れて!!」
「何っ!?」
「無駄だ!!いけっ!!」
デスガーゴイルはスタジアムの壁を傷付け、瓦礫へと変えていく。
「うわぁぁぁああああっっっ!!」
「タカオ!!」
瞬間、ドラグーンに大量の瓦礫が降りかかる。
「・・・・・・赦せ、木ノ宮。」
「決まったぁ!!勝者はバルテズソルダ、ミハエル選・・・」
「「まだだ!!」」
「・・・え?」
私達の声が重なる。
「まだドラグーンは生きてる!!」
土煙が収まり、ドラグーンの姿を認識した途端、会場がざわめいた。
バルテズにとってこれは想定外なことだったのか、眉を顰めている。
しかし、それ以上に驚いているのはミハエルだ。
「何故だ・・・何故、お前は倒れない・・・!?」
「何不思議そうな顔してんだよ、こんなの当たり前だ!!」
「!!?」
「ベイも仲間も信じて、全力で戦ってたらな・・・こんなことくらいじゃ負けねえんだよ!!」
「!!」
「ミハエル!!戯れ言だ耳を貸すな!!」
ちっ・・・・・・。
「・・・あれ、バルテズさん。この結果が心底理解できていないみたいな顔をしているのは、何故?」
私はバルテズの注意をこちらに引き付ける。
「な・・・!?」
「"監督"の貴方になら・・・それくらい分かるんじゃないの?」
「っ、貴様っ・・・!!」
「セツナちゃんの言うとおりよ!!貴方、本当に監督なの!?あんな攻撃で・・・本気で戦っているタカオが倒れるわけないじゃない!!」
ヒロミちゃんが声をあげると、観客席の一部で、バルテズに対する評価が変わった気配がした。
「ミハエル!!お前何を怖がってるんだ?俺だって負けたことなんて何回もある!!・・・カッコ悪いぜ、情けないぜ、惨めだぜ!!・・・・・・っ、でもな、俺は諦めねえぞ!!何度でも、何度でも立ち上がってやる!!力と技、そして心!!・・・俺の全てをぶつけて戦ってやる!!勝つまでな!!」
・・・・・・!!
タカオの言葉に、心臓がドクンと音を立てた。
「だからバトルは面白いんじゃねえか!!お前ら、そんな勝ち方して楽しいか!?胸張って"ブレーダー"だって言えるのかよ!!?」
「「「「・・・・・・!!」」」」