last night

□第十五夜
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しかし、まずいことになった・・・。



私は未だにベンチでシン・・・としてしまった大地を見て、舌打ちをしたい気持ちになった。

このまま仮にタカオが負けてしまったら、サードバトルは必然的に大地が戦うことになる。

でも、あのベイで再戦は絶望的だ・・・。



「もう我慢できない!やっぱり大転寺会長にいうべきよ!!」

「同感です。ベイはブレーダーのパートナーであり、道具ではありません!!」

ヒロミちゃんとキョウジュがヒトシさんにそう訴えるが、彼はそれでも首を縦には振らない。

「ダメだ。」

タカオ・・・!!

「もしそんなことしたって、俺達が勝ったことにはならない。あいつにとって、ベイは道具。ブレーダーは駒。だから平気で汚ねぇ真似をする。」

・・・・・・。

向こうのベンチにいるバルテズソルダを見る。

そして、観客席にいるPPB、バイフーズ、ユーロチームを見る。

今、私達がいるこの場に、どうしても立ちたくても立てなかった人達がいる。

そして、バルテズソルダは・・・・・・いや、バルテズは、その権利を無理矢理奪った。

「・・・・・・だから俺は、この手であいつに見せつけてやらなきゃ気がすまねぇ。本当のベイバトルを!!」

「・・・タカオ。」

「兄ちゃん・・・だから頼むよ!!俺を戦わせてくれ!!」

「・・・・・・行ってこい。」

「兄ちゃん・・・!!ああ、必ず勝ってやる!!」

タカオは私達に強く頷くと、ミハエルの待つスタジアムを振り返った。

「タカオ・・・・・・勝つよ!!」

「・・・・・・!!」

タカオは振り向かずに、拳を上に上げた。












「アーユーレディ?3、2、1・・・・・・」



「・・・・・・セツナ。」

「なんです?監督。」

両者がベイを構え、ブレーダーDJがカウントを始めた頃、ヒトシさんが私を呼んだ。



「ゴーシュート!!」



「・・・お前は、どう戦う?」

「?」

私はヒトシさんの顔をじっと見る。

しかし、すぐに彼が言いたいことはわかった。

「・・・・・・そうですね・・・・・・。作戦を実行しなくなった分、きちんと他で見せますよ。」

スタジアムに立てないなりの、バトルをね。



私はまず、ベンチから立ち上がってスタジアムをじっくり眺める。

バルテズソルダは今まで、自身のベイへの細工しかしてなかった。

何故なら、スタジアムへの細工はすぐにバレるからだ。

なら・・・・・・何か・・・・・・

「!!」

やっぱり、刃物みたいなのを仕込んでる・・・!!

「・・・タカオ、デスガーゴイルから離れて!!」

「何っ!?」

「無駄だ!!いけっ!!」

デスガーゴイルはスタジアムの壁を傷付け、瓦礫へと変えていく。

「うわぁぁぁああああっっっ!!」

「タカオ!!」

瞬間、ドラグーンに大量の瓦礫が降りかかる。

「・・・・・・赦せ、木ノ宮。」

「決まったぁ!!勝者はバルテズソルダ、ミハエル選・・・」

「「まだだ!!」」

「・・・え?」

私達の声が重なる。

「まだドラグーンは生きてる!!」

土煙が収まり、ドラグーンの姿を認識した途端、会場がざわめいた。

バルテズにとってこれは想定外なことだったのか、眉を顰めている。

しかし、それ以上に驚いているのはミハエルだ。

「何故だ・・・何故、お前は倒れない・・・!?」

「何不思議そうな顔してんだよ、こんなの当たり前だ!!」

「!!?」

「ベイも仲間も信じて、全力で戦ってたらな・・・こんなことくらいじゃ負けねえんだよ!!」

「!!」

「ミハエル!!戯れ言だ耳を貸すな!!」

ちっ・・・・・・。

「・・・あれ、バルテズさん。この結果が心底理解できていないみたいな顔をしているのは、何故?」

私はバルテズの注意をこちらに引き付ける。

「な・・・!?」

「"監督"の貴方になら・・・それくらい分かるんじゃないの?」

「っ、貴様っ・・・!!」

「セツナちゃんの言うとおりよ!!貴方、本当に監督なの!?あんな攻撃で・・・本気で戦っているタカオが倒れるわけないじゃない!!」

ヒロミちゃんが声をあげると、観客席の一部で、バルテズに対する評価が変わった気配がした。



「ミハエル!!お前何を怖がってるんだ?俺だって負けたことなんて何回もある!!・・・カッコ悪いぜ、情けないぜ、惨めだぜ!!・・・・・・っ、でもな、俺は諦めねえぞ!!何度でも、何度でも立ち上がってやる!!力と技、そして心!!・・・俺の全てをぶつけて戦ってやる!!勝つまでな!!」

・・・・・・!!

タカオの言葉に、心臓がドクンと音を立てた。

「だからバトルは面白いんじゃねえか!!お前ら、そんな勝ち方して楽しいか!?胸張って"ブレーダー"だって言えるのかよ!!?」

「「「「・・・・・・!!」」」」
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