last night
□第十四夜
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いよいよスペインステージが始まる。
第一試合はバイフーズ対Fサングレの試合だ。
先日倒れたライのことが気になるが、やはり彼等はメンバーチェンジなどせずに出て来た。
しかし、選手が入場し、互いに対面すると同時、Fサングレの双子達は何やらくすくすと笑いだす。
「何?」
レイ達もあからさまに不快感を顔に出し、双子を睨む。
すると、なんと彼等は自分達が先日レイとライを倒した大道芸人達だということをカミングアウトしたのだ。
「なるほど・・・確かに、異様なまでにそっくりな技、動き・・・今まで着目はしていませんでしたが、彼等だからこそ成し得たものだったのですね!」
「しっ、キョウジュ。・・・ちょっと待って。」
「え?」
彼等が何やらレイ達を煽っている。
かと思えばなんとタッグバトルを申し出たのだ。
「ああ。受けてたってやるさ!!そういうルールが適用されるならな!!」
「言ったわね?・・・会長、聞きました?これで私達の試合は、タッグバトルにしてもいいんですよね!?」
「何!?」
会場中の視線が大転寺会長に向けられる。
すると大転寺会長は、私達の例があるとのことでそれを呑み、とうとう世界大会二度目のタッグバトルが実現することになった。
「・・・でも、俺達を倒したバイフーズだ。きっと、何とかなるさ!」
「・・・本当にそうかな?」
「え?」
「タカオ。・・・忘れたの?あのバトルは"本物のバトルではなかった"んだよ。」
「っ、るせー!でもあのバイフーズがそんな簡単に負けるわけないだろ!?」
「・・・・・・。」
私だってそう信じたい。
でも、先日のイタリアステージで精神的にボロボロになったライが、どれほどあのときのタッグバトルの真価を発揮できるのか。
そして、仮にその力が引き出せたとして、それがあの双子にどこまで通じるのか・・・。
あのとき感じたドライガーの力は、決して手加減なんてしてなかった。
だから、もしかしたら・・・・・・。
「うわぁぁあああああああっっっっ!!!!!」
「ライ!!」
「ライに・・・・・・っ、レイ兄前!!」
「え?・・・うわあっ!!!!!」
決してバイフーズは弱くない。
きっと、個の力で戦っていれば、何かが違っていただろう。
それでも、今まで連敗続きだったFサングレは、彼等を圧倒的なコンビネーションで倒した。
それは、私達が持つ力とはまた違った、チームの底力だったのだ。
「・・・・・・惜しかったわね。」
「うん・・・。」
時間があまり、昼食を取る私達だが、先程のバトルのことが頭から離れず、何とも言えない雰囲気が漂う。
「・・・・・・俺さ、実は試合が始まる前にレイに会ったんだ。」
「え?」
「お前らはいいな、って言われて・・・でも、俺はレイ達こそ、幼なじみでいいなって・・・。でも、レイはライが何かで悩んでるのを気にしてた。」
「・・・そう。」
「ねぇ。」
突如、ヒロミちゃんが口を開いた。
「私達、何でもかんでも隠すのやめにしない?折角のチームなのに、一人で悩んでいたって何も始まらないじゃない。」
「ヒロミちゃん・・・。」
「6人の力や知恵を合わせたら、きっとすごいことになると思うの。・・・・・・というか、今までは、そんな風に出来たじゃない。」
「「・・・・・・。」」
「私、中学生になって、段々大人に近付いてきて、嬉しいことも沢山あるけど・・・皆が色んなことを話せなくなるのは寂しいと思うわ。」
・・・・・・。
ヒロミちゃんの言うとおりだ。
でも、そんなすぐには素直になれないくらいには、私は彼等より少しだけ捻くれてしまった。
「へんっ。そんな隠すようなことなんて、おいらは何もないぜ?」
「そりゃお前は単純だから悩みなんてねーだろ。」
「はぁ!?おいらにだって悩みくらいあるってーの!!だけどわざわざ隠すことじゃねえって言ってんだ!!」
「へー、じゃあなんだよお前の悩みって。」
「まず身長だろー?あと、強くなりてぇな。それから・・・」
「は、やっぱり・・・」
「あと、ガイアドラグーンの秘密だ。」
「・・・・・・え。」
「そういえば、麒麟と黄竜の関係はまだまだわかっていないことが多かったですよね・・・。どうでした?キリは。」
「最近はそんな話をしてなかったな・・・」
というか、それどころじゃなかった。
「・・・ねぇ、案外セツナちゃんと大地君がタッグバトルしたら、すごいことが起こるんじゃないの?」
「どうだろうね。」
「さぁな。でも、もし本当に出来るなら、おいらはやってみてぇ。」
「なんで?」
「だってそしたら、父ちゃんに近付ける気がするんだ。」
「・・・・・・。」
大地は、麒麟が願いを叶える力があることを知っているのだろうか?
ふと、そんなことが気になった。