last night
□第十二夜
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「いいか、これは決定事項だ。覆すことはこの俺が許さない。選手は次のイタリアステージに向け、練習に励むように。」
「ちょっ・・・ちょっと待ってください監督!!どうしてタカオが外されるんですか!?」
「そうだよ!!次はあのネオボーグ・・・カイが出るんだぞ!!?それを俺抜きで戦うっつーのかよ!?」
「・・・・・・理由ならばある。全ては、勝利のためだ。」
「「「「「!!!!」」」」」
その言葉が何を意味するのか、瞬時に私達は察した。
「・・・へっ、そうかよ・・・・・・。」
タカオは俯き、声を落とした。
「俺が弱いから・・・外したんだろ!?セツナとも合わなくて・・・くそっ、くそっ!!!!」
「タカオ・・・っ!!」
キョウジュの制止すら聞かず、タカオは部屋から出て行った。
「追うな!!」
「!!」
「奴は逃げたということだ。追ったところで無駄だ。」
「監督・・・しかし・・・」
「口答えも無用だ。」
「!!」
キョウジュは何か言いたげだったが、ヒトシさんの目をじっと見て、やがて、わかりましたと呟いた。
「・・・・・・。」
そんなことがあったせいで、イタリアへ向かう飛行機の中は非常に静かだった。
私はあれからタカオとは、一切口をきいていない。
その分、大地君・・・いや、大地と過ごす時間が増えた。
「セツナ〜・・・俺もう・・・・・・うっぷ・・・・・・」
「わかったから寝てな。」
ホテルへ着き、グロッキー状態の大地を寝かせ、一息吐く。
「なんだかセツナちゃんの弟みたいね、大地君。」
「だとしたらかなり世話がやける弟だわ。」
「・・・・・・。」
私とヒロミちゃんは肩を竦めた。
「さて・・・と。私ちょっと練習に行ってくるわ。」
「ぁー・・・待てよセツナ!おいらだって・・・うっ・・・!!」
「無茶しないの!セツナちゃん、大地君は私に任せて練習に行ってきて!」
「ありがとうヒロミちゃん。じゃ、大地。先行ってるね。」
バケツとお友達状態の大地と、背中を擦るヒロミちゃんを見て、私が大地のお姉ちゃんならば、ヒロミちゃんは彼のお母さんだな・・・なんて考えながら部屋を出る。
しかし、今回泊まるホテルにはベイスタジアムが無い為、私は少し離れた場所にある施設を目指すことにした。
二年前、タカオとジャンカルロが戦ったコロッセオがまだ残っていることに驚きつつも、その近くのベイスタジアムに着いた私は、隅っこの方でひっそりと練習に励んだ。
しかし、途中から私に気付いたブレーダー達が片っ端から勝負を挑んできた為、順番に相手をする。
「いっけえ!!ドラキリュー!!!!」
「わぁっ!!!!」
何十人目かの対戦が終わった頃、気付けば辺りはギャラリーでいっぱいになり、私はぎょっとした。
「土崎セツナ!!サインくれよ!!」
「次は僕とやろっ!!」
チビッ子達に囲まれていると、ふとある男の子に声をかけられた。
「マドモアゼルセツナ。次は是非俺と勝負をしてくれないか?」
「えっとちょっとま・・・・・・ん?」
聞き覚えのある声に、一瞬思考が停止する。
よくよく見るとそのお兄さんは・・・
「ジャンカルロ!?」
「やぁ。」
バトル以外でこうして会うのが久々だった為、私は本当に驚いた。
「わ、すごい偶然・・・え、なんでここに!?」
「たまたま散歩してたら君の姿が見えたんだ。・・・なぁセツナ。いま少しいいかい?」
「・・・?う、うん・・・。」
いつになく真剣な顔のジャンカルロの誘いに、反射的に頷いてしまう。
すると、そのまま私は彼に手を引かれ、近くのカフェへと入ることになった。