last night
□第七夜
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その日の夜、私達は火を消して早めに寝た。
大地君が頑張ってくれたお陰で、テントに関してはなんとかなったものの、結局着替えは間に合わず、二人は濡れたパンツ+私の着替え(タカオには大きいもの)でなんとか凌ぐことになる。
テントの中で、二人の鼾の大合唱を聞きながら、何度目かの溜め息を吐く。
「カイ・・・。」
口にする度虚しくなるけれど、二人がいてくれて本当によかった。
バスタオルを肩まで上げ、キツく目を瞑る。
そうすると、少しずつだけど、意識が遠退いて・・・・・・
「・・・・・・来ないわ。」
ムクリと起き上がり、パーカーを引っ掻けてテントを出る。
外は満天の星空で、風は少しだけ涼しく、益々私の目を覚まさせた。
そもそも、昨日もめっちゃ早く寝て、バスの中まで寝たのだから、すぐに寝付けるわけがないのだ。
体調はもう万全だし、この時間が勿体ない。
「いくよ、キリ。」
『お前な・・・仮にも病み上がりなんだから無茶苦茶するなよな。』
「すこしくらい無茶しなきゃ強くなんてなれないよ。」
『・・・・・・倒れるなよ。』
キリをベイに戻し、目の前の木に向ける。
「・・・っ、いけ!!」
暗闇の中で放ったドラキリューは、森を一周してこちらへ戻ってきた。
私は再びシュートをし、何十回、何百回と繰り返していく。
それを2時間くらい続け、漸く身体が疲れてきた。
「・・・じゃ、最後にもう一回っ・・・!!」
ドラキリューは勢いよく飛び出すと、目の前の木に登った。
しかし、何やらごそごそとおかしな音がして、間もなく・・・
『セツナ避けろ!!』
「ひえっ!?」
ドサッ!!
ドサドサッ!!
ドサドサドサッ!!
大量の木の実が落ちてきた。
「すごっ・・・見た?カイ・・・・・・。」
・・・・・・。
「・・・・・・なんちゃって。」
『・・・・・・。』
ドラキリューを手に戻し、木の実を一ヶ所に集めてテントへ向かう。
すると、大地君が私の場所を思いっきり占拠していた為、仕方なくタカオの隣に腰を降ろした。
まぁ、どっちが隣でも気にしないからいいんだけどさ。
コロンと寝転がると、タカオがもぞりと動いた。
そういや彼も寝相悪いんだったっけな・・・なんて考えながら、暗がりでハッキリとはわからないその寝顔をぼんやりと見る。
・・・・・・お兄ちゃんとも、カイとも違うんだろうな。
そういえば、ヒトシさんはどんな顔で寝るんだろう・・・。
ふと気になったけれど、慌てて想像を頭から追い出し、再び目を瞑った。
夢の中で、私はカイとタッグを組んでいた。
これは・・・世界大会だろうか?
タカオやレイ、マックス、大地君もいて、それぞれがタッグを組んでバトルをする。
ベンチでは、キョウジュとヒロミちゃん、それから・・・・・・
「セツナ!!」
間違いない。
夢だけれど、私の名を呼んだのは、お兄ちゃんだった。
「お兄ちゃん・・・!!」
嬉しくて手を振ったが、その瞬間隣から大きな手が降りてきて、私の頭を覆う。
「集中しろセツナ。お前の隣にいるのは俺だ。」
「カイ・・・ごめん。いくよ!!」
夢だってわかっているのに、すごく嬉しくて、すごく気持ちいい。
ドラキリューも喜んでいるのがわかる。
こんな時間が永遠に続けばいい。
覚めないでほしい。
どうか現実になってくれ。
そんな思いを抱えながら、夢の中の私とカイは、世界大会の頂点を極めた。
私の手をぎゅっと掴み、カイは表彰台へと歩いていく。
「やったねカイ!遂に・・・夢が叶ったね!!」
「ああ。・・・お前とだから、出来たんだ。セツナ。」
「え・・・。」
「俺一人では、できなかっただろう。」
「そんな大袈裟だよ。・・・ってか、カイなら一人でも大丈夫だったよ。私が勝手に貴方の隣にいたかっただけだし・・・・・・。」
「・・・・・・そうか。」
「カイ・・・?」
握っていた手から不意に力が抜け、目には僅かに憂いの色が掛かる。
「・・・・・・そうかもしれない。俺も、お前も・・・もう一人でやっていける。」
「え、ちょっと・・・そういうことじゃなくて・・・カイ!!」
するりと腕をかわすカイ。
必死に手を伸ばしても、届かなくて、私は無我夢中で叫ぶ。
「カイ!!・・・やだ、カイ!!」
「・・・・・・。」
「カイッ!!!」