last night
□第六夜
1ページ/6ページ
合宿場に着くと、少しだけ体力も元に戻った。
これならなんとかなるだろうと、ホッと胸を撫で下ろしていると、タカオがこちらに近付いてくる。
「なぁセツナ。ところでカイはいつくるんだ?」
「・・・・・・。」
「そうよ。これからタッグを組むのに、別行動なんてしてたら意味ないじゃない。」
そうだった。
彼等はまだ、カイがBBAチーム代表を辞退したことを知らないのだ。
しかし、私が言ってもいいのだろうか・・・?
そう迷った瞬間、隣にヒトシさんがやってきて、私の代わりにその言葉をタカオ達へ突きつけた。
「・・・・・・火渡カイはここへ来ない。」
「え・・・!?」
「どういうことだよヒトシ兄ちゃん!?カイが来なけりゃ意味ないじゃんかよ!」
その言葉に一抹の不安を覚えたのだろう。
タカオがヒトシさんに詰め寄る前に、私は勇気を出して彼の前へと足を踏み出した。
「・・・・・・タカオ、落ち着いて聞いて。」
「な、なんだよセツナまで、んな顔して・・・」
「カイは、BBAチーム代表を辞退したの。」
「!!」
「なっ・・・!?」
タカオだけじゃない。
ヒロミちゃんも、キョウジュも、信じられないという顔をしている。
「えっと・・・つまりどういうことだ?カイのやつがいないってことは、おいらが代表になれるのか!?」
そんな中で、大地君だけがきょとんとしていた。
「っ、・・・・・・嘘、だろ・・・カイまで・・・・・・だって、セツナはここにいるじゃねえか!!」
「・・・・・・。」
ぐっと思いを飲み込む。
タカオはふらふらと私に近寄り、肩をしっかりと掴んだ。
「なぁセツナ、嘘だよな?だって、カイがお前を一人にするわけねぇし・・・お前だって、カイを・・・・・・」
「タカオ!!」
しかし、言いかけたところでその言葉はヒトシさんによって遮られる。
「本当のことだ。・・・一昨日、大転寺会長の元へカイが来て、正式に辞退を申し出ているんだ。」
「・・・・・・。」
「タカオ、選べ。カイの代わりにお前と世界で戦うパートナーを。」
「俺の、パートナー・・・・・・。」
「・・・・・・。」
タカオは目の前の私を暫くじっと見つめると、何かを決心したかのように、こう口を開いた。
「・・・・・・なぁ、セツナ。お前は何でここに残ったんだ?」
「・・・・・・。」
私がここにいる理由は、一つじゃない。
でも、タカオが望む答え方なんてわからない。
「・・・・・・守りたいの。またいつか、カイやレイ、マックスが戻ってくるときに・・・私達が好きだったBBAチームを、無くさないために。」
「・・・・・・!!」
「私はこれ以上、大切なものが消えるのは嫌なんだ。だから戦う。・・・貴方の望むそれとは違うかもしれないけれど・・・今の弱いままじゃ守れないから、強くなりたい。タカオ、私と戦って!!」
カイに譲れないものがあったように、私にもまた、譲れないものがある。
しかし、同じように誰しもが"譲れないもの"を持っているのだ。
・・・そう、例えば、
「やいやいやい!!世界で戦うのはおいらだ!!タカオに負けたお前じゃ役不足だっつーの!!」
!!
「大地!!おまっ・・・」
「セツナ!!お前がカイに何を言われたか知んねぇけどな!!強くなるのにごちゃごちゃした理由なんていらねぇんだよ!!タカオ、おいらを選べ!!」
一瞬にして空気がガラッと代わり、タカオは私と大地君の間で目を泳がせた。
「え、えっと・・・、」
ヒロミちゃんとキョウジュも、困ったようにタカオを眺めている。
「・・・キョウジュ、この場合ってタカオはどっちを選ぶと思う?」
「セツナは今まで一緒に戦ってきた仲間でもありますし、選ぶとしたら妥当でしょう。しかし、大地の実力や伸び代のことを考えると・・・・・・。」
そのとき、ヒトシさんがこほんっと咳払いをし、全員の注目がそちらへ行く。
「ならば、バトルで決着を着けてみてはどうだろうか。」
「バトルで・・・」
「決着ぅ!!?」
ピクリと、ポケットの中でドラキリューが動いた。