last night

□第六夜
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合宿場に着くと、少しだけ体力も元に戻った。

これならなんとかなるだろうと、ホッと胸を撫で下ろしていると、タカオがこちらに近付いてくる。



「なぁセツナ。ところでカイはいつくるんだ?」

「・・・・・・。」

「そうよ。これからタッグを組むのに、別行動なんてしてたら意味ないじゃない。」



そうだった。



彼等はまだ、カイがBBAチーム代表を辞退したことを知らないのだ。

しかし、私が言ってもいいのだろうか・・・?

そう迷った瞬間、隣にヒトシさんがやってきて、私の代わりにその言葉をタカオ達へ突きつけた。



「・・・・・・火渡カイはここへ来ない。」

「え・・・!?」

「どういうことだよヒトシ兄ちゃん!?カイが来なけりゃ意味ないじゃんかよ!」

その言葉に一抹の不安を覚えたのだろう。

タカオがヒトシさんに詰め寄る前に、私は勇気を出して彼の前へと足を踏み出した。

「・・・・・・タカオ、落ち着いて聞いて。」

「な、なんだよセツナまで、んな顔して・・・」

「カイは、BBAチーム代表を辞退したの。」

「!!」

「なっ・・・!?」

タカオだけじゃない。

ヒロミちゃんも、キョウジュも、信じられないという顔をしている。

「えっと・・・つまりどういうことだ?カイのやつがいないってことは、おいらが代表になれるのか!?」

そんな中で、大地君だけがきょとんとしていた。



「っ、・・・・・・嘘、だろ・・・カイまで・・・・・・だって、セツナはここにいるじゃねえか!!」

「・・・・・・。」

ぐっと思いを飲み込む。

タカオはふらふらと私に近寄り、肩をしっかりと掴んだ。

「なぁセツナ、嘘だよな?だって、カイがお前を一人にするわけねぇし・・・お前だって、カイを・・・・・・」

「タカオ!!」

しかし、言いかけたところでその言葉はヒトシさんによって遮られる。

「本当のことだ。・・・一昨日、大転寺会長の元へカイが来て、正式に辞退を申し出ているんだ。」

「・・・・・・。」

「タカオ、選べ。カイの代わりにお前と世界で戦うパートナーを。」

「俺の、パートナー・・・・・・。」

「・・・・・・。」

タカオは目の前の私を暫くじっと見つめると、何かを決心したかのように、こう口を開いた。

「・・・・・・なぁ、セツナ。お前は何でここに残ったんだ?」

「・・・・・・。」

私がここにいる理由は、一つじゃない。

でも、タカオが望む答え方なんてわからない。

「・・・・・・守りたいの。またいつか、カイやレイ、マックスが戻ってくるときに・・・私達が好きだったBBAチームを、無くさないために。」

「・・・・・・!!」

「私はこれ以上、大切なものが消えるのは嫌なんだ。だから戦う。・・・貴方の望むそれとは違うかもしれないけれど・・・今の弱いままじゃ守れないから、強くなりたい。タカオ、私と戦って!!」

カイに譲れないものがあったように、私にもまた、譲れないものがある。

しかし、同じように誰しもが"譲れないもの"を持っているのだ。



・・・そう、例えば、



「やいやいやい!!世界で戦うのはおいらだ!!タカオに負けたお前じゃ役不足だっつーの!!」

!!

「大地!!おまっ・・・」

「セツナ!!お前がカイに何を言われたか知んねぇけどな!!強くなるのにごちゃごちゃした理由なんていらねぇんだよ!!タカオ、おいらを選べ!!」

一瞬にして空気がガラッと代わり、タカオは私と大地君の間で目を泳がせた。



「え、えっと・・・、」

ヒロミちゃんとキョウジュも、困ったようにタカオを眺めている。



「・・・キョウジュ、この場合ってタカオはどっちを選ぶと思う?」

「セツナは今まで一緒に戦ってきた仲間でもありますし、選ぶとしたら妥当でしょう。しかし、大地の実力や伸び代のことを考えると・・・・・・。」



そのとき、ヒトシさんがこほんっと咳払いをし、全員の注目がそちらへ行く。



「ならば、バトルで決着を着けてみてはどうだろうか。」

「バトルで・・・」

「決着ぅ!!?」



ピクリと、ポケットの中でドラキリューが動いた。
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