last night
□第五夜
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真紅の羽を撒き散らしながら、朱雀が吠える。
籠から放たれた鳥のように。
「き、決まったーぁっ!!!」
わぁぁあああっっっと巻き起こる歓声。
カイが回転を続けるドランザーを手に戻すのを目にして、自然と涙が溢れた。
「やったぜ!!カイっ!!!」
タカオが嬉しそうに笑いながらカイに手を振る。
キョウジュもヒロミちゃんもホッとしたように、拍手を送っていて、観客席の誰もがその勝利を祝福していた。
「畜生!!おいらのガイアドラグーンが負けるなんて・・・!!畜生っ・・・・・・!!」
「・・・・・・。」
でも、私だけはその勝利の裏に隠された、カイの本心を見抜いていた。
スタジアムまで降りていき、カイの元へ駆けつける。
「BBAチームの代表は、木ノ宮タカオ・火渡カイのペアと決定しました!!」
ブレーダーDJの紹介に併せて、タカオは観客へと手を振る。
それに対してカイは、いつも通り澄ましたような顔をしている。
「おめでと!!タカオ、カイっ!!やーっぱりカイの勝ちね♪」
ヒロミちゃんが嬉しそうに言うものの、やはりカイはそっけない。
皆にはいつも通りに見えているのだろうけど、こんなときに、私は自分がどうするべきかを考えていなかった。
「カイ、俺は信じていたぜ!!お前が勝って、俺と一緒に世界で一番になるんだってな!!」
「・・・・・・一緒に、」
「いやぁ、今回も見事に高度な試合が見られましたな。」
大転寺会長もやってきて、二人の勝利を祝福してくれる。
その裏では、大地くんがDJに飛び付いて何やら喚いているが、私はそんなことよりも、会長の言葉に我が耳を疑うことになる。
「さて、めでたくBBAチーム代表が決まったところで、もう一つ重要な発表をいたしましょう。」
「ええっ?」
「重要な・・・」
「発表ですか?」
「ええ。今度の世界大会は、各国厳選に勝ち抜いた6チームによって争われます。」
6チーム・・・・・・。
日本、中国、アメリカ、ユーロ、ロシア・・・・・・いや、足りないな・・・・・・。
「それもくじ運による不公平を無くすため、6チーム総当たりのリーグ戦と決定いたしました。」
「!!」
ベイブレードでリーグ戦だなんて・・・初めての試みじゃないの!?
「世界各国によるリーグ戦は、過酷を極めるでしょう・・・そこで、今回は代表選手にもしものことがあった場合に備え、各チーム2名までの"交代要因"を用意することにしました。」
「交代要因・・・?つまり、補欠ってことですか?」
「そうと捉えていただいても、勿論構いませんが・・・ああ、いえ。私よりも、ここからは"この方"に任せることにしましょう。」
「"この方"?」
そう言って会長が視線を寄越した先にいたのは・・・・・・。
「「疾風のジン!!」」
私とタカオの声がハモる。
「な、なんでお前が!?」
「私が直々にお願いしたんですよ。」
「会長!今までBBAにいた二年間・・・こんな人、見なかったじゃないですか!!彼はそんな大事なことを任せても平気な人なんですか!?」
「落ち着いてください。・・・大丈夫ですよ。特に"タカオ君"。・・・君のよく知っている人ですから。」
「"俺の"・・・・・・よく知ってる人物・・・?・・・・・・!!」
タカオは何故かジンを見た後に、私の顔をチラッと見やる。
「その前に・・・発表しよう、BBAチーム、三人目の代表を。」
一気に空気に緊張が走る。
「三人目は・・・・・・皇大地。君だ!!」
「えっ・・・おいら!?おいらぁ!!?やったぁぁぁああああっ!!」
「のわっ!?」
大地君は全身で大喜びを表し、掴まっていたブレーダーDJをブンブンと揺さぶる。
「選考の理由はもって生まれた反射神経と、何事にも捕らわれない奇抜な発想・・・野生の勘。俺は、その未知なる可能性を買った。・・・・・・さて、それでは・・・・・・」
「!!」
ドクン、ドクン・・・・・・!!
心臓が今までになく、暴れていて、飛び出しそうだ。
早く、早く・・・待って、待って・・・・・・早く、早く・・・・・・。
知りたい、知るのが怖い、でも知りたい・・・・・・次に呼ぶ、その名を!!
「そして四人目は・・・・・・土崎セツナ。」
「!!」
懐かしくて、愛しかった声が私の名を口にした。