last night
□第四夜
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「セツナ選手、準決勝進出決定だーっ!」
順当に勝ち進んで行く私達。
隣のBブロックでも、つい先ほどカイが準決勝進出を決めていた。
「くそっ・・・!!あんな技を持ってるなんて知らなかったぞ・・・!!?」
「・・・最後の最後まで、奥の手は隠しておくもんだよ。でも、楽しかった。ありがとう。」
「・・・・・・!こちらこそ・・・。」
三回戦の相手だったブレーダーにそう告げて握手をすると、控え室へと戻る。
『何が"最後の最後まで、奥の手は隠しておくもんだよ。"だ。思いっきりジンの受け売りだろ。』
「うるさい。・・・その通りだってことがわかったんだから、いいでしょ。」
ジンとのバトルで学んだこと、言われたことが、ここに来てかなり役に立っていることに気付き、悔しいけど戦いに向き合う姿勢が変わってきたと思う。
『・・・・・・次は準決勝か。どんなブレーダーが来るのだろうな。』
「つってももう限られているでしょ。・・・タカオか、勝ち残るのならキョウジュか・・・・・・どのみち次からはハードになるんだから、気合い入れていかないとね。」
『ああ。』
そのとき、ギィ・・・と扉が空いて、タカオとヒロミちゃんが帰ってきた。
「お、やっぱりセツナも勝ち残ったんだな。」
「まぁね。・・・Aブロックはあと二人・・・。もうすぐ決まるね。」
「だな。」
「さっき、Bブロックの方でもカイと大地くんがそれぞれ準決勝進出だって言われていたわね。・・・うん、いよいよ大詰めって感じ♪」
再びギィ・・・という音がして、今度はキョウジュが顔を出した。
顔を俯かせ、ゆっくりとこちらに向かってあるいてくる。
「あ、キョウジュおつかれ。・・・どうだった?」
「みなさん・・・・・・私・・・・・・私・・・・・・」
「?」
「おい、どうしたんだよキョウジュ?」
「・・・・・・っ、・・・・・・っ。」
「「「???」」」
「準決勝進出が決まりましたーっ!!」
「あだっ。」
「おぉ。」
「本当に!?やったじゃない、キョウジュ!!」
「はい!!タカオとセツナ、もしくは誰と当たるかまだ確認はしていませんが、私でもここまで勝ち残れたのだということが、嬉しい限りです!!」
・・・・・・。
キョウジュも、レイやマックスの埋めた穴をなんとかしようと頑張っている。
キョウジュなりに考えて、自分のできることに向き合ったんだな・・・。
でも、その根底にある気持ちは?
「どうしました?セツナ。」
「えっ?ううん、・・・次、誰と戦うのか、対戦表見なきゃなーって。」
「確かあの流れで行くと・・・・・・あ、私です!」
キョウジュが対戦表を指差すので、私もそこに注目する。
「ほんとだ・・・。」
「・・・お手柔らかにお願いいたします、セツナ。」
「え・・・本気でやらないの?」
「え・・・でも、私がセツナやタカオのライバルになるにはまだまだですし・・・。」
「そうだぜセツナ!キョウジュが俺達のライバルになるなんて、100年早いっての。」
「・・・・・・私はそうは思わないけど。」
「「え。」」
「だってキョウジュは今まで一番近くで私達の戦いを見てきたわけじゃん。ここまで残ってこれたのだって、キョウジュの鋭い分析力のお陰でしょ?油断してたら負けちゃうよ。」
「セツナ・・・。」
「・・・・・・まぁ、確かにそうかもな・・・・・・。ごめんキョウジュ。さっきのこと、気にしてたら・・・。」
「あ、いえいえ。」
「さっきのこと?」
「なんでもありません。・・・さ、それではボチボチ準備を始めましょうか。」
それぞれが次に備えてベイのメンテナンスを始め、一旦控え室に静寂が訪れる。
しかし、それをぶち壊すかのように、突然扉が空いた。
「どうも〜みなはん。ワイ、笑顔小太郎いいます。よろしゅうお願いいたします。・・・おぉっ!?あんさんは木ノ宮タカオはん!!ワイ、次の準決勝戦ではタカオはんと戦うことになってまんねん。」
タカオのファンらしい、関西弁をペラペラと操る兄ちゃんが現れ、私達は一度作業を止める。
自棄にタカオに絡んでいるけれど、確かに世界チャンプと戦えるということが、全ブレーダーの理想なんだなって思わされるな・・・。