last night
□第一夜
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心臓がドクドクと鼓動を刻む。
待ち続けたこのときが、ついに来たんだ。
私は光り輝くオーラを身に纏ったキリに向かい、遂に3つ目の願いを告げる。
「キリ、お願い!!・・・お兄ちゃん・・・土崎ジンに、再び会わせて!!!」
『承知した。』
キリの力で辺りが明るくなる。
この光が収まれば、きっとそのとき、お兄ちゃんに会えると、私は信じて疑わなかった。
「・・・・・・。」
しかし、光が収まっても、そこには誰も現れなかったし、何も起こらなかった。
「どういう、こと・・・?」
『・・・・・・。』
「っ、キリ!!!」
キリは目を見開いてはいたが、やがてゆっくりと私に確認をする。
『・・・・・・セツナ、貴様の兄は、本当にただの行方不明なんだな?』
「っ、・・・前に言ったでしょ。船の事故に遭って、でも遺体は上がっていないって・・・。」
『・・・わかった。それと、貴様の兄の名は、本当に"土崎ジン"でいいんだな?』
「そうだよ。だって、お兄ちゃんは私と違ってお父さんの連れ子で・・・・・・。」
しかし、私はここで大事なことを思い出す。
「・・・・・・待って、キリ。お兄ちゃんとお父さんの血は繋がっていなかった。」
そう、確かに、お兄ちゃんはもともとお父さんの連れ子ではあったけれど、同時に養子でもあったのだ。
『そうとなれば、本当の名があるかもしれないな。』
「ああっ!!!もう!!なんなんだよ!」
私はダンッと地面を踏んだ。
一度力を放出してしまったキリは、また身体が縮んでしまっている。
この分だと暫くあっちに戻ることも出来ないから、お父さんに直接問い詰めて、お兄ちゃんの名前を聞き出すことも出来ない。
仕方なく、その日はBBA本部の自室へと戻ることにした。
そんな、二度目の世界大会からおよそ一年が過ぎようとしていたある日のことだった。
夏休みに入り、カイと久しぶりに会おうとしていた私は、朝から久しぶりに機嫌がよかった。
お兄ちゃんに出会えるチャンスを逃がし、ここのところずっと夢見が悪かった為、今日は思いっきり忘れるんだと決め、服装にも気合いが入る。
案の定この一年で身長はちっとも伸びなかったけれど、少しは大人っぽくなる為に頑張っているのだ。
「よし。出るか。」
ドラキリューをポケットに入れ、BBA本部に用意された私の部屋を出る。
この廊下はBBA本部の中でも滅多に人が来ないゲストルームの並びの為、私は誰も見ていないのをいいことに、小刻みにステップを踏みながらエレベーターを目指した。
しかし、そのエレベーターが空いた瞬間、ここにはいない筈の人物を目にした為、一瞬だけ固まる。
「・・・・・・お、セツナじゃないか。久しぶりだな。」
「・・・・・・。」
「おい?」
「っ、レイ!?」
私は目線が10p以上離れてしまった、かつてのチームメイトを見上げた。
「う、嘘だ・・・。レイがこんなに大きくなるわけなんて・・・そうだ。さては貴方はレイのお兄さんだね!?」
「そいつは俺も驚きだ。」
「・・・・・・。久しぶりだね。どうしたの?」
「・・・・・・。ああ、もうこっちは夏休みだろ?キョウジュからエアメールをもらったもんでな。こっちに遊びに来たんだ。で、大転寺会長がセツナの隣の部屋が空いているから使っていいと言ってくださった為に、ここへ来たんだ。」
「うっそマジで!?やっほーい!!!」
私はその手を取ってブンブンと振った。
その瞬間、エレベーターのドアが閉まって、丁度間にいた私の身体を挟んだ。
レイと一緒にBBA本部を出て、レイは木ノ宮家に、そして私は、川原へと向かった。
「ごめんカイ!!待った!?」
「・・・遅かったな。」
「いやほんとごめん。実はレイがお隣に引っ越してきたもんでさ。」
土手に寝そべるカイの隣に腰かける。
彼は口にくわえた草をフッと吹き、上半身を起こした。
「・・・・・・。そういえば、マックスの奴も日本に帰ってきていたな。」
「え!?そうなの!?一体いつ!?」
「知らん。が、昨日銭湯で会った。」
な ん で す と 。