next night

□最終夜
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「キリ・・・、私はここだよ・・・・・・キリ・・・。」



もう何日も、何ヵ月もこうして待っている気がする。

世界大会はどうなったのだろうか?

朱雀は無事だろうか?

ゼオはどうしたのだろうか?

余計なことが頭を過っても、ずっと、ずっと、キリを呼び続けた。



「セツナちゃん・・・。」

ヒロミちゃんが呼んだような気がしたと同時に、膝に置いていた手が握られた。

「私も呼ぶわ・・・キリ!!私達はここよ!!」

「ヒロミちゃん・・・・・・。っ、キリ!!私達を見つけて!!」



暑くもないのに汗が止まらない。

早くしないと・・・このままじゃ、五聖獣が危ない!!

カイが、タカオが、レイが、マックスが、キョウジュが、ヒロミが・・・・・・皆が!!



「キリィィィィイイイイイッッ!!!」













『セツナっ!!!』












「「!!!」」



声がして数秒後、小さなキリが上から降りてくる。

『セツナ!!』

「キリ!!」

そして、私達の手が触れあうと同時、私の持っていた麒麟の力がキリに戻り、キリは大きくなった。

「キリ・・・よかった・・・!!」

私はその身体に顔を埋めた。

暖かい・・・本当に、キリだ!!

『待たせたな、セツナ。・・・ヒロミも、よく頑張った。』

「ええ・・・。」

『さて・・・セツナ。早速だが聞かせてもらおうか。お前の願いを。』

「・・・・・・。」

「願い・・・?」

顔をあげれば、ヒロミちゃんがきょとんとしている。

私だってそうだ。

だって、まさかいきなりキリに願いの話をされるなんて、思ってもいなかったから・・・。

『何をとぼけた顔をしているんだ。・・・僕は、お前の願いを叶えたいという叫びを聞いて、ここまで来ることができたんだ。』

「そうなの・・・?でも私、願いなんて・・・。」

願いなんて、本当にない?

いつだって、私は"こうだったらいいのに"と思っていたのに。

「・・・いや・・・・・・そうだよね。」

「セツナちゃん?」

「あるよ・・・願い!!ここから出れる上に、ゼオが五聖獣を狙わなくて済むようにするんだ!!」

『・・・聞こうか、セツナ。』

「うん。・・・キリ、ゼオを生き返らせてほしい。」

『・・・・・・。』

しかし、キリは何も言わない。

「キリ・・・まさかその願いは、ダメ?」

『・・・・・・ああ。』

恐る恐る尋ねると、キリは目を伏せながら答えた。

『どんなことがあろうと、一度死んだ者を生き返らせることはできない。例え、この僕でもな。』

「そんな・・・じゃあ、ゼオは・・・・・・。」

『しかし、それに近しい願いならば、叶えることはできる。』

「本当!?」

『ああ。・・・だがセツナ。それでいいのか?』

「・・・え?」

『やつは本当に、そのことを望んでいるのか?』

「・・・・・・。」

ゼオは、お父さん・・・ザガートに生きてもう一度会えたから、もうそれでいいと言っていた。

でも、もうその目的はケロベロスによって叶えられてしまったから、今度は私が欲しいと言っていた。

なら、彼の望むことは、生き返ることではない。



「・・・・・・私、もう一度ゼオと話してみる。」

「セツナちゃん!?うそでしょ・・・またあそこに行こうっての!?」

「うん。・・・でも、ただ話すだけじゃない。」

「一体何をする気!?」

「キリ!!生き返らせる以外の願いなら、なんでも叶えられるんだよね?」

『・・・・・・。』

キリは考える素振りすら見せずに、すぐに頷いてくれた。

「じゃあ、行こう。ゼオの元へ。」












下を目指し、私達はどんどん落ちていく。

白かった景色が段々黒く染まり、ついにあの場所へ帰って来た。





「麒麟をここへ呼んだか。・・・で、すぐに逃げずに、わざわざ俺のところへ来た理由はなんだい?セツナ。」

「・・・・・・決まってるでしょ。」

私はキリに触れながら、彼に向かって口を開いた。



「キリ、ゼオの本当の願いを叶えて。」

「!!」

『承知した。』

「セツナちゃん!!そんなことしたら貴方がっ・・・、・・・・・・!?」

次の瞬間、まるで砂のように、ゼオに巻き付いていた沢山の鎖がさらさらと消えていく。

そして最後の鎖が消えたとき、ゼオはペタリとその場に座り込み、信じられないというような顔をし、やがて、こちらを睨んだ。

「どういうこと・・・?俺はこんなこと、望んでなんかっ・・・第一、こんなことをしたって意味がないだろう?」

「あるよ。」

私は彼に歩み寄った。

「ゼオ、私は貴方の物にはなれない。・・・・・・でも、貴方と出会って、トレーニングして、バトルして、笑って、泣いて・・・・・・すごく楽しかったの。仲間として、貴方を助けたかったから・・・・・・だから、私は貴方の本当に望むことを、叶えたいと思ったの。」

「セツナ・・・。」

「ねぇゼオ。貴方は私達と出会ってどうだった?」

「・・・っ、」

ゼオは、一瞬だけ顔を歪ませ、黙ってしまう。

そして、震える声で、ぼそぼそと呟いた。

「俺は・・・・・・ただ、貴方がいれば、それで・・・・・・。」

しかし、ゼオはその続きを語らない。

何かを思い出すかのように目を泳がせ、やがて、その目から一筋の涙を溢した。

「俺は、皆が・・・・・・。」

その涙が地面へ落ちた瞬間、忽ちその空間が浄化されたかのように、真っ白に染まっていく。

「な、何!?」

『石板の呪いが解けていく・・・・・・。』

「呪いが・・・っ!?」

ふとゼオを見ると、その姿が消えかかっていることに気付く。
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