next night
□第二十九夜
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観客のエールを浴びながら、カイとレイは準決勝戦の行われる会場へ足を踏み入れた。
「いよいよだな、カイ!!」
「・・・・・・、ああ。」
反対側から入場する、ゴルド・ゼオのペアを、カイはレイとは異なる目で睨んだ。
もしも、ヒロミの言うことが本当であれば、目の前にいるゼオは自分達の知らないゼオかもしれない。
しかし、それを確かめる術はない。
だからと言って、手を抜く理由にはならないが、そのハッキリとしない苛立ちに、小さく舌打ちをしたくなった。
「さぁ!!いよいよ準決勝第二試合がやってきた!!ここで勝ったペアが決勝戦への切符を手にするぞ!!それでは早速ファーストバトルに出場する、レイ選手とゴルド選手は前へ!!」
「・・・・・・行ってくる。」
「ああ。」
並んでいた肩が前方へと進む。
カイはその背を一度だけ呼び止めた。
「レイ。」
「・・・?なんだ?」
「・・・・・・遠慮はいらん。お前の力を見せてやれ。」
「、ああ!!」
互いに構え、ブレーダーDJのカウントが始まる。
「「ゴー、シュート!!!!!」」
セツナ達の試合で、ゴルドは真っ先に戦線から外れた。
とはいえ、本当の実力を見切ったわけではない故に、レイも全神経を集中させてその動きを見ていた。
「ドライガー!!」
「ブリザードオルトロス!!」
想像以上の素早さに、レイは苦戦した。
「ドライガーは速攻を得意とすると聞いていたが、大したことはなさそうだな。」
「何!?」
「このまま貴様の白虎をいただくとするか!!」
「!!」
「ゴルド選手、レイ選手の速攻をかわしたぁっ!!」
「くっ・・・今度こそ、ドライガーッ!!」
しかし、ゴルドはレイの動きを熟知したかのように、次々に来る攻撃を簡単に避ける。
流石にレイの表情からも、余裕が消えて焦りが見え始めてきた。
「くそっ・・・!こんなところで負けるわけにはいかないというのに・・・!!」
相手のペースに呑まれつつあるという自覚はある。
しかし、体力も集中力もどんどん削られていき、ドライガーのスピードもそれに伴って落ちていった。
「レイーッ!!」
タカオの声すら遠くに聞こえる。
そんな中で、とうとうゴルドは攻撃を仕掛けてきた。
「ツインスピアーっ!!!」
「何!?」
次々に繰り出される反撃に、ドライガーは順応が出来ず、ダメージを負ってしまう。
最初に飛ばしすぎたせいもあって、逃げ切ることも叶わない。
何か手はないのか・・・!?
「オルトロォォォォォス!!!」
「っ、白虎ぉぉぉぉっっっ!!!」
2体の聖獣が現れ、バトルもますます加速する。
しかし、レイの身体はそろそろそのスピードについていくことが難しくなってきていた。
「レイ、頑張って!!」
「レーイッ!!」
光を受けたベイの細かい破片が、反射しながらスタジアムへ散っていく。
「ゴルド選手、凄まじい攻撃だーっ!!レイ選手、このまま負けてしまうのか!?」
こんなところで負けるわけにはいかない。
こんなところで負けたら・・・っ!!
歯を食い縛り、ゴルドを見据える。
しかし、その背は最初のときのように伸びてはいなかった。
カイはその背にもう一度だけ、語りかけた。
「レイ、思い出せ!!白虎を奪われたあの時を・・・!!」
「っ!!・・・そうだ、二度とあんな思いは・・・、ドライガーッ!!!!」
白虎は体勢を立て直し、オルトロスへと向かっていく。
「バルカン・・・パワークローッ!!!」
最後の力を振り絞り、レイは叫ぶ。
「ブリザードオルトロォォォーッス!!!」
誰もが息を飲んだ。
凄まじい音ともに、会場中に光の嵐が襲い掛かった。
「はぁっ、はぁっ・・・」
「はっ、・・・は・・・」
光が収まり、スタジアムには辛うじて回り続ける二つのベイブレード。
しかし、そのスピードはどんどん落ちていき、やがてその二つは同時に回転を止めた。
「り、両者引き分けか!?」
審判用の映像を解析するものの、審議を出すのは難しく、このバトルは引き分けと判定された。
また、再試合も不可能であり、勝負はセカンドバトルへと預けられる。
「頼んだぞ、カイ・・・!!」
「・・・・・・。」
カイは黙って頷いた。
観客席にはヒロミやオズマ達が帰ってきていたが、キリの姿は見えなかった。
・・・石板の中へ入ることに成功したのだろう。