next night
□第二十六夜
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「いけぇ、フラッシュレオパルドォォォォォォォ!!!」
「っ!!!」
戦況は、オズマが圧倒的に有利に見えた。
どんなに強いベイブレードを持とうと、どんなに強い聖獣を持とうと、それまでに積み重ねてきた経験が違う。
だから、不本意ではあったけど、このままオズマが勝って、少しでもゼオが考え直してくれるのなら・・・・・・そんか淡い期待を、少なからず私は胸に抱いていた。
そう、この時までは。
「・・・・・・っ、うぉぉおおおおおお!!!!!!!」
「な、なんだ!?」
「何、この気配・・・・・・今までに感じたことがない・・・・・・。」
"最強の石板聖獣"という言葉が、頭を過った。
「俺は、五聖獣を手に入れる為に貴様なんぞに負けられはしないんだぁっ!!」
「ふんっ・・・ふざけた真似を!!ひよっこがでしゃばるんじゃねえ!!」
「・・・出てこいっ!!!バーニングケロベロォォォス!!!!!!!」
「なっ・・・!!?」
私達は目を見開いた。
壁にあった掲示物を剥がしては舞わせるほどの激しい風が吹き、ゼオのベイブレードから聖獣が現れる。
頭を3つも持った、禍々しい迄に大きな聖獣・・・これが、ケロベロス!!
「いけええええ!!!!」
「クソっ・・・フラッシュレオパルドォォォォォォォ!!!!」
二つの激しい光がぶつかり合い、目を開けていられない。
・・・嘘でしょ?
あのゼオが、こんな力を持つなんて・・・。
そんな恐ろしい力を物にするまで、どれだけ厳しいトレーニングを重ねた!?
何故そうまでして、力を・・・・・・。
「うわぁぁああああああ!!!!」
「ぉぉぉおおおおおおお!!!!!!!」
「・・・・・・。」
気付いたら、あの眩しい光は収まっていて、目がしばしばする。
「・・・・・・。」
「オズマ!!!」
タカオの声で漸く私もハッとして、ベイブレードの行方を追った。
しかし、回転しているケロベロスは見つかったものの、フラッシュレオパルドが見当たらない。
「・・・・・・俺が、負けただと・・・・・・?」
え・・・?
その言葉で、オズマの足元に転がるフラッシュレオパルドを漸く見つけた。
「あのゼオが・・・オズマに勝ったの・・・?」
口にしても、実感が湧かない。
オズマは膝から崩れ落ちると、ただ呆然と遠くを見ていた。
「・・・・・・。」
一方ゼオは、ベイブレードを手に戻すと、こちらを一瞥する。
「これでわかっただろう。俺はもう、お前らの知っている俺じゃない。必ず五聖獣を手に入れる。・・・首根っこ洗って待っていろよ。」
背を向けて去っていくゼオに、タカオは手を伸ばす。
「っ、待てよゼオ!!おいっ・・・」
「タカオ!!」
「っ!!!」
思わず声を上げていた。
「・・・・・・もう、私達の声は届かない・・・・・・。」
「セツナ・・・。」
「勝つしかないんだよ・・・悔しい気持ちをぶつけるのも、またここへ帰ってきてほしい気持ちを伝えるのも・・・・・・。」
「・・・・・・。」
タカオは悔しそうに唸ると、側の壁を力一杯殴った。
その後、騒ぎを聞いた会場スタッフ達が駆けつけて、私達三人は事情を聞かれる。
しかし、オズマが「なんでもない」と答えたことと、タカオがずっと黙っていたため、皆の注目は私に移る。
本当のことを話してもよかったけれど、騒ぎを大きくすると大会に響く気がして、私もまた、何も答えることができなかった。
そのことを察して、会長が個別に部屋に呼んでくださった為、話せる範囲で事情は話したけれど、なんとかして大会はこのまま続けてほしいと頼んだ。
「・・・・・・ゼオ君のことで、ザガート君が絡んでいることは確かですしね・・・・・・。しかし・・・・・・。」
「お願いです!!・・・・・・ゼオを見て思ったんです。彼の聖獣に対する執着心・・・あれは、大会というチャンスを利用しない限り、解決できないと思うんです。それに・・・もしも大会がなくなったら、またどんな手を使って戦いを挑んで来るかわかりません。」
「・・・ぅぅ・・・・・・わかりました。会長の権限で、今回のことは事故として処理をしましょう。」
「・・・・・・ありがとうございます、会長。」
私は深々と頭を下げた。