next night
□第二十三夜
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セツナが行方不明になったのは、冬の始まりだった。
あの日、私はセツナと一緒に帰っていて、ふと、剣道部の話になったことを今でも覚えている。
・・・部長になれなかったことはなんとも思っていないと言っていたセツナだったけど、時々、物凄く憂いを帯びた目をしていることを、私は知っていた。
それに、溜め息が、とても多かった。
その日も溜め息が多くて、私なりに励ましたつもりではあったけど、今思えば・・・なんであのとき、もっと話を聞いてあげられなかったのかしら・・・って思うの。
だって、その日を境にセツナは学校へ来なくなったから。
セツナのことを知らないか、と聞かれたのは、それから3日後。
学校の先生からだった。
電話をしても連絡がつながらなくて、3日も無断で学校を休んでいて・・・私や皆は、酷く慌てたわ。
セツナの家にご両親はあまり帰ってこないし、心配になった私は、すぐに帰りにセツナの家に寄った。
いくらチャイムを鳴らしても、誰も出なくて、途方に暮れていたところに、女の人が来たの。
・・・それが、セツナのお母さんだった。
家にも、友達の家にもいない。
捜索届けまで出したのに、セツナはついに見つからないまま、およそ3ヵ月が経とうとしていたある雪の日。
二人の男の子と橋の前に立ち尽くしたセツナを、とうとう発見した。
すごく心配で、もう二度と会えないんじゃないかって、不安だった私は、その姿を認識した瞬間に、身体が勝手に動いていた。
セツナは申し訳なさそうな顔をしていて、だからか、私が事情を話すように求めたら、すぐに近くのファミレスで話してくれた。
信じられないような話ではあったけれど、あのセツナがくだらない作り話なんかするはずがないって分かっていたから、多少時間は掛かったけれど、なんとか彼女の置かれた状況を理解することは出来た。
途中、タカオとかいう男の子がうるさかったけど、彼やもう一人の男の子がセツナの大切な仲間で、ずっと支えていてくれたこともわかった。
だから、彼女が再び「そちら」へ行かなくちゃならないと口にしたとき、本当は止めたかった。
そんなリスクを冒してまで、どうしてそっちへ行くんだって思ったけれど・・・・・・セツナがずっと胸の内に秘めていた思いを打ち明けてくれたから、もう、私は何も言っちゃいけないんだな、って気がしたの。
・・・・・・そして、必ずこちらへ帰ってくることを条件に、私は彼女達を送り出した。
セツナ達と別れ、ずっと我慢していた涙が頬を伝っていたことに気付いた。
「・・・・・・、あんたがいない間、どれだけ心配したと思ってるのよ・・・。なのに、また行っちゃうなんて・・・。」
連れてって、って言えばよかった。
あんたのことだから、また無茶して泣くんでしょ?
それを誰が助けるのよ・・・・・・。
セツナが今までそこにいたなんて、信じられないような感覚に、フラフラと家を目指す。
相変わらず雪は降り続き、余計な音を消してくれた。
そんな中で、前方に人影が揺らめくのを見た。
緑掛かった綺麗な長い髪に、神秘的な瞳。
きっと、そう歳の変わらない子だ。
その子が私のことをじっと見て、笑っていることに気付いた。
「・・・何、誰なのあんた?」
なんだか頭のどこかで、危険な信号がチカチカと光っている気がしていた。
それでも、私は関わってしまった。
「やっと見つけた。・・・・・・セツナと同じ素質を兼ね備えた人間を・・・・・・。」
セツナ・・・・・・!?
セツナの知り合いなの!?
そう聞く前に、その子は見た目に似合わない強い力で私の手を取り、そのまま川へと引きずっていく。
「ちょっと、やだ・・・やめてよ!!!」
「一緒に来てもらうよ。」
「やだっ、離して・・・!!誰かぁあーーーーっっっ!!!」
誰もいない、真っ白な雪景色の中で、私はその子と一緒に川へ落ちた。
そして・・・・・・。
・・・・・・。