next night
□第二十二夜
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アタックリングを削られ、今にも倒れそうなドラグーンを目の当たりにして、タカオは何も言えなくなっている。
「このまま続けたら、ドラグーンは粉々だぞ!?」
「でも、そしたら青龍がっ・・・!!」
バトルが終わりに近付いていることを、私達は察していた。
焦りから歪んでいるタカオの顔から、一筋の汗が垂れた。
大切なものを天秤にかけているのだろう。
「やったぜオズマ!!」
「さぁ、木ノ宮。大人しく敗けを認めるがいい!!」
「っ・・・、?」
タカオ・・・?
『タカオ、戦うんだ。』
「!!」
この声・・・青龍!!
『私のことは構わない。・・・最後まで、お前と戦わせろ。』
「青龍・・・。」
・・・・・・。
「・・・わかったぜ、青龍。最後まで、俺を信じてくれるんだな。お前が倒れるときは、俺が倒れるとき!!一緒に燃え尽きてやるぜ!!」
「!!」
タカオの目の光が、益々強くなった。
「行こうぜ青龍。俺達の底力、見せてやろうぜ!!」
「!!」
「何ぃ!?」
「待てタカオ!早まるな!!」
「タカオーっ!!」
「「戦わせてやれ。」」
私とカイの声が重なる。
一瞬驚いてカイを見上げるが、その目はただ、目の前のバトルを冷静に見つめていた。
「でもっ、ドラグーンが壊れたら青龍がっ・・・!!」
「木ノ宮だって、そんなこと百も承知だ。しかし、それはオズマのベイも同じこと。」
「・・・誇りを掛けた戦いだから・・・誰にも止めることは出来ないんだ。」
「そんな、タカオ・・・。」
きっと、あの調子じゃお互いにもう、そんなに沢山の技を出すことは出来ない。
・・・決着が着く。
「行くぞ木ノ宮!!これが貴様と青龍の最後だ!!フラッシュレオパルド!!」
「ドラグーン!!」
強い風が吹き荒ぶ。
「これ以上やったらドラグーンはおしまいだ!!」
「タカオやめてぇぇぇっ!!」
「やめろオズマ!フラッシュレオパルドは限界だ!」
「オズマァァァッ!!」
彼等を案ずる声が飛び交う中、私はタカオの背中をじっと見守っていた。
「行くぞ木ノ宮!!」
「勝負だオズマ!!」
二人から、とてつもない力が溢れ出してくるのを肌で感じながら、息を飲んでその行く末を見届けるために、必死に目を凝らす。
「クロスファイアー!!」
「ハイパービクトリートルネード!!」
限界と限界、強い想いと、強い想いがぶつかり、二つのベイが倒れる。
「ドラ、グーン・・・。」
「フラッシュ・・・レオパルド・・・。」
続いてバタリと、二つの影が倒れた。
「タカオ!!」
皆が駆け出し、私もカイとキリに支えられながら、なんとか彼の元へと辿り着く。
「っ、っ・・・・・・?」
「タカオ!!」
「み、んな・・・?お、俺は・・・」
「気が付いたわね。」
「っ!!青龍は!?俺の青龍は!?」
「無事ですよ。」
キョウジュからドラグーンを受け取り、タカオは安堵の息を漏らした。
「BBAと五聖獣の絆・・・そして、麒麟の力を宿す心。」
低い声とともに、ザリッと地面を踏む音がして、私達は顔を上げた。
「しっかり見せてもらったぜ。・・・これなら大丈夫かもしれないな。」
「え・・・?どういうことだよ?」
「???」
私達の頭には"?"が飛び交う。
「五聖獣を守るには、封印だけじゃないってことさ。」
マリアムが吐息混じりに笑った。
「それって・・・。」
「じゃあ・・・。」
「ええ。」
「・・・木ノ宮。五聖獣は、お前達BBAチームに託す。」
「!!」
「聖獣との絆、それがあれば心配ない。」
「ユスフ・・・。」
「だが忘れるな。その絆が切れたときゃ容赦しねえぜ。五聖獣は俺達聖封士が必ず封印する!!」
「・・・・・・。」
ドゥンガが胸を叩いた。
「・・・木ノ宮、五聖獣は頼んだぞ。そして、セツナ。」
「・・・?」
「その力、必ず"守る"為に使うんだぞ。」
「・・・!!うん!!」
私は大きく頷いた。
「ああ!!・・・オズマ!!最高だったぜ、お前とのバトル!!・・・また会えるんだよな!?またバトルできるんだよな!?俺達の決着、まだ着いてないんだからな!!」
「・・・・・・。」
オズマは僅かに口角を持ち上げ、私達に背を向けた。