next night
□第二十夜
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ある日、タカオは大転寺会長に呼び出され、地域のベイブレードの大会にゲスト出演の為に出掛けた。
しかし、そこでまたもや聖獣を狙う刺客に襲われたらしい。
なんでも、蜘蛛の聖獣を操るブレーダーだったらしく、今回は勝ったのだからいいけど、その感じからするに、バックには、前と同じ人物が絡んでいそうだ・・・。
「ま、でもいいタイミングでゼオが来てくれて助かったぜ。」
そう言ってタカオは、連れてきたゼオの背中を叩いた。
「ああ。・・・・・・でも、今日わかったことがある。それで皆に謝りたかったんだ。」
「?」
「タカオのバトルを見て、レイさんに言われたことの意味、わかったんだ。聖獣は強くなるための道具じゃないって・・・・・・なのに、僕はなにも知らないのに、いい加減なことばかり言って・・・。聖獣がいれば、皆ともっともっと、仲間でいられるような気もして・・・それで・・・っ、ホントにごめんっっっ!!」
そう言って頭を下げるゼオに対し、カイは聖獣を持っていなくても、お前はもう、充分俺達の仲間だと言った。
「カイさん・・・。」
「へへっ、さぁてと、練習練習ーっ♪」
「ゼオ、俺とバトルしないか?」
「っ・・・!!うん!!」
こうしてゼオは、今まで以上に木ノ宮家に足を運ぶようになった。
でも、何故か私は彼の目の前で聖獣を・・・キリを、実体化させることができなかった。
理由はキリにもわからなかった。
そんな、ほんの僅かな疑問を抱えたまま、数日が経った。
「ドランザーッッ!!!」
「ドラキリュー!!」
夜。
私とカイが、公園で練習しているときのこと。
突然強い風が吹いたかと思ったら、回転中のドラキリューも、ドランザーも、突然止まってしまったのだ。
『くぅ・・・・・・いってぇ・・・なんだ今の?この僕が傷を負わせられるなんて・・・。』
「キリ!!その傷・・・。」
『大したことはない。しかし、ドランザー本体は少々メンテナンスが必要だ。』
「わ・・・!!」
カイがドランザーを拾い上げるも、そこに刻まれた切り傷が、今の風がただの風で無かったことを物語っている。
「ねぇ、今の風一体何!?」
『さぁ・・・しかし、気を付けないとまた・・・』
「!!セツナっ!!」
「っ!?」
名前を呼ばれると同時に、突然側に置いてあった空き缶がスパンッと切れる。
「何!?誰なの!?」
思わず警戒して辺りを見渡すが、誰もいない。
「・・・新手の刺客か。姿を見せろ!!」
カイが叫んでも、その姿が現れることはなかった。
『・・・もう遅い。とっくに逃げたようだ。』
「キリ・・・やっぱり、この前の奴等と同じのが・・・?」
あんな技をオズマ達が使うとは思えない。
だとしたら、やっぱり石板サイドの刺客だろうか・・・。
『どっちにしても、今日は早めに切り上げた方がよさそうだ。・・・カイ、いいな?』
「・・・・・・。」
カイは黙って頷くが、それでも風の吹いた方をじっと見ていた。
タカオの部屋で、皆に先程のことを報告する。
「嫌な風だった・・・。きっと何かある。」
「何かって・・・やっぱり、セツナのいう通り、また新たな敵が襲ってきたってことかよ?」
「・・・・・・。」
カイが目を瞑って何かを考える。
「カイ・・・・・・。」
しかしそのとき、ずっと庭で木刀を振っていたお祖父さんが、突然大技を見せてくれた。
「どぉぉぉりゃあああああっっっ!!」
「だぁぁぁっ、るっせーよじっちゃん!!」
スパンッ!!
ツツツ・・・・・・。
そんな気持ちのいい音を立てて、竹を割ったのだ。
「いや、でもすごい!!流石お祖父さん!!本当に木刀でこんなことが出来るんですね!!」
「いや何。これくらい大したことないわいっ。ハッハッハ!!実を言うとな、これは・・・・・・。」
「これは?」
「元々切れておったんじゃ!!」
「だぁっ!!」
そう言って竹を差し出すお祖父さんに、ずっこける私達。
「なぁんだ・・・・・・さっきのももしかしてって思ったんだけど・・・・・・。」
「何を言ってるんじゃ。鎌鼬じゃあるまい、木刀じゃあんな真似は出来んよ。」
「かまいたち・・・・・・。」
そのワードを、口の中で呟いた。
かまいたち、鎌鼬・・・・・・。