next night
□第十八夜
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朝になって皆が集まると、タカオとキョウジュ、それからヒロミちゃんから、昨日の話を聞かされた。
オズマ達が本格的にタカオの聖獣を狙ってきたと言うのだ。
「しかし、セツナの次はタカオか・・・。」
そういえば彼らはプールでの一件があってから、私の方には全くコンタクトを取ってこなかった。
もう本当に、私に対して用は無いのかもしれない。
それはそれでいいんだけど・・・。
「・・・このままだと、本当に聖獣を奪われかねんな。」
「んなことさせるかよ!!・・・けどよぉ、あいつらなんで揃いも揃って俺達の聖獣ばっか狙って来るんだ?」
「五聖獣がそれほど貴重だからだろ。」
「にしてもよぉ・・・。」
タカオとレイがそんなやりとりをしていると、ふと、以前朱雀が言っていたことを思い出した。
「聖獣を利用する者と、守る者・・・。」
「え?」
「前に、朱雀が言ってたんだ。」
「そういえばそんなこと、前にも呟いていたな。結局、オズマ達の目的はなんなんだって話になるがな。」
「うん・・・。私とカイが初めてオズマに会ったときは、"五聖獣を封印する"だとかなんだとか言ってたけど、どうもそれだけじゃなさそうだし・・・。」
「しかし、それとセツナのみを執拗に狙う理由がどうも繋がりませんね・・・。麒麟の力を狙ってのことなのでしょうけど、そもそも麒麟の力というものがどういうものなのかは、私達にもわかりませんし・・・。」
そんなの私にだってわからない。
でも・・・。
私はポケットの中にある、ドラキリューをそっと握った。
昨日、何故か形の変わってしまったドラキリュー。
皆に話そうかどうか迷っていると、突如道場の扉が開いて、大転寺会長とジュディさんがやってきた。
しかし、石板に関する情報も、ザガード博士に関する情報も、何も得ることは出来なかった。
「・・・・・・。」
道場にはどんよりとした空気が流れる。
しかし、キョウジュはそんな空気を気にせず、大転寺会長に小さな機械を差し出して見せた。
それは、ビットファインダーと言い、聖獣の力を探知して、石板の在処を探すことができるのかもしれないそうだ。
すごいな・・・。
私はキョウジュを見て、改めて感心した。
私には、何も出来ないというのに。
会長達が帰った後、やはり皆、何から始めたら良いのかわからないような状態で、すっかり動く気を無くしていた。
それでもキョウジュがパソコンで色々と調べるものの、ザガード博士に関することは、何もわからなかった。
「はぁ・・・。」
八方塞がりとはまさにこのことか。
しかしそんなとき、離れた場所でずっと座っていたカイが腰を上げる。
「カイ・・・。」
「散歩だ。」
「え、なら私も行く!!」
思わず私もその後ろについて行くと、途中で誰かとすれ違う。
「・・・・・・え?」
「・・・・・・。」
緑色の綺麗な髪をした、男の子。
その子と一瞬だけ目が合うと、ニコッと微笑まれる。
「・・・・・・。」
なんだろう、この不思議な感覚・・・。
思わず目を奪われていると、カイの呼ぶ声がしてハッとする。
私は会釈だけして、慌ててカイの後を追うのだった。
「・・・・・・まさかこんなところにいたなんてな・・・。やっぱり正解だったみたいだ、土崎セツナ・・・。」
少年はバタバタとセツナの走って行った方を見やると、微かに頬を緩めた。
そして、再び正面を向くと、道場を覗いて本来の目的であった人物を探す。
「ゼオ!?ゼオじゃねえか!こんなところまでどうしたんだよ一体。」
「君に頼みがあって来た。一緒に来てほしい。」
嬉しそうに声を掛けてきたタカオに、少年・・・ゼオは、その腕を取って引っ張って行くのだった。