next night
□第十七夜
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こちらの世界へ帰って来て数日が経った頃、私達はジュディさんの招待により、アメリカへ行くことになった。
先日のバトルタワーの件で傷付いたベイブレードを修理してくれるというのだが、そのためだけにわざわざジュディさんが私達を呼ぶとは思えない。
きっと他に何かあるのだろうなと思いつつも、未だに戻らないドラキリューが直ることを期待しながら、私達はアメリカの地へ降り立った。
車の中で、久しぶりにジュディさんと会えてウキウキとするマックスを横目に、私はこの間から様子のおかしいカイとタカオに話し掛けた。
「ねぇカイ、タカオ。」
「っ、なんだよセツナ?」
「・・・・・・。」
・・・やっぱり様子がおかしい。
特にタカオ!!
「ねぇ、度々言ってると思うけど、やっぱり貴方達変じゃない?こっちに帰ってきてからなんかそわそわしてるっていうか・・・特にタカオ。」
「あ、いや・・・その・・・。」
タカオは目を泳がせ、カイの方を見た。
「・・・・・・無理もないだろう。」
「どういうこと?」
「・・・・・・。そんなに聞きたいか。」
「聞きたい。だってなんかやだもん。」
カイは溜め息を吐くと、私の耳に口を近付けた。
「え、ちょっと・・・・・・何、」
僅かに吐息が掛かり、ドキドキしていると、その口からこんなことを聞かされる。
「この間のお前の水着姿を思い出すとほざいていた。」
「・・・・・・。」
それはもう・・・。
「・・・・・・エッチ。」
私はタカオとカイを軽くにらんだ。
忘れてください。
もうあんな水着、二度と着ません。
つーか、そんなことでそんなそわそわしないでよ!!
「・・・・・・。」
私はムスッとしながら、窓の外を見やるのだった。
研究所に着き、ベイブレードを渡した後、案内されたのは厳重にロックされた部屋だった。
以前来た(忍び込んだ)ときにも入れなかったその部屋は、ジュディさんの虹彩でロックが外されていたけれど、どうやら一部の研究員なら誰でもロックが解けるらしい。
「でも、これは別よ。」
そう言ってジュディさんが見せてくれたのは、幾重にも赤外線センサーが張り巡らされたケース。
中にあるのは隕石かなんかだろうか?頭一つ分はありそうな大きさの石が置かれていた。
・・・でもなんだろう、これ・・・。
聖獣の気配に近い物を感じる・・・。
「これは石板よ。」
そう言ってジュディさんが解除コードを入力すると、モニターに写し出された石板に、何やら文字のようなものが書かれているのがわかる。
「20年前に発見され、つい最近まで軍で保管されていたの。この石板はベイブレードに関わる者全てに、重大な影響を及ぼすことになるわ。」
「どういうことだよ?」
「これを見てほしいの。」
そう言ってジュディさんは、そばにあったスタジアムへ目を向ける。
すると、ヘルメットで武装をした子供が現れ、ベイブレードを構えた。
正面からはロボットが出てきて、同じようにベイブレードを構えている。
ロボットの合図でバトルが始まると、ジュディさんが解説をしてくれる。
「実はロボットが放ったベイブレードには、この石板の一部をセットしているの。暫くすると、とても興味深い現象が起こるわ。」
そして程なくして、その現象が起こる。
なんと、ビットが光り出し、聖獣らしきものが現れたのだ。
「な・・・!!」
しかし、聖獣を実体化させたベイブレードは、やがて粉々に弾け、ロボットと相手の子供にもダメージを与えた。
「うわぁっ!!」
「ああっ、おい、大丈夫かよ!?」
タカオが声をかけると、その子は平気だと合図を出す。
どうやらその子はマックスの友達だったようで、二人が感動の再会を果たしている間、私はジュディさんに石板のことを詳しく聞いてみた。
「ジュディさん、この石板があれば、聖獣がいくらでも作り出せるってことなんですか?」
「現時点での結論から言えばNOよ。あれは、聖獣のできそこないでしかないからね。ただし、その可能性を秘めている可能性は高いわ。確かにこの石板は、聖獣の力に近しいものを宿している。」
聖獣の力に近しいもの・・・。
ふと、私は聖獣の力とはなんだろうと考えた。
自在にベイブレードを操る力?
異世界を往き来する力?
何でも願いを叶える力?
何はともあれ、私の世界では空想や妄想の次元で考えられるような力だということはわかるのだけど・・・。
「どうした、セツナ。」
「ううん・・・この石板、ベイブレードのパーツに上手く使えないかなーって思って。」
「今、PPBではそれについて研究中よ。何か進展があったら、また皆に教えるわね。」