next night
□第十五夜
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無事に全員脱出できる兆しが見えたとき、マックスが玄武を探すために行動を別にすると言い出した。
「すぐに戻るから、皆は先に行ってて。」
「何言っているのよマックス!!このままじゃ危ないことくらいわかるでしょ!?」
「ヒロミちゃん・・・でもボク、玄武を見捨てては行けない。」
「それならマックス、俺も行くぜ!!」
「タカオ!?」
「セツナ、皆を任せた。俺達は必ず戻る。」
「タカオ・・・。」
タカオはニカッと、いつもの笑顔で笑った。
お兄ちゃんやカイのときのように、嫌な予感はしない・・・。
信じても、大丈夫だよね・・・?
「・・・わかった。でも、約束して。必ず、生きて帰って来て。」
「ああ。」
堪らず小指を差し出せば、タカオもマックスも、同じように小指を差し出し、そして、しっかりと絡ませた。
途中、大転寺会長を拾い、私達はなんとか建物の外へと出ることが出来た。
「しかし建物から離れなくては、まだまだ安心とは言えませんぞ!」
そうは言うものの、ヘリコプターで来るようなこの場所に、逃げ場なんて無い。
仕方なく、姿勢を低くしてしっかりと安全を確保した私達は、タカオとマックスの帰りを待つことにした。
それでも尚、崩壊が止まる筈が無くて、不安がどんどん大きくなるのを感じていると、ついに建物が大きく崩れ、煙が上がった。
「きゃああああっ!!」
ヒロミちゃんの悲鳴が、崩壊音に掻き消される。
地面が大きく揺れ、私はカイにしっかりとくっついていた。
・・・やがて、揺れも大きな音も無くなり、恐る恐る目を開ける。
「ウソ・・・ウソでしょ・・・・・・タカオーっ!!」
「待って、ヒロミちゃん!・・・僅かだけど、青龍と玄武の気配を感じる・・・。」
「え、それじゃあ・・・!!」
パタパタと、煙の向こうから見えてくる影。
私達はそれを認識したとたん、安堵の息を漏らした。
「木ノ宮・・・」
「マックス!!」
再開を喜び合っていると、彼等の後ろから出て来た四人の影が、私達に近付いた。
「オズマ!?」
「実はオズマ達が玄武を助けるのを手伝ってくれたんだ!!」
「え!?」
私は思わずオズマを見た。
先程私を奪おうとした彼は、表情を変えずに私の視線を受け流し、そのまま踵を返す。
「オズマ!!玄武を助けてくれてありがとう!」
マックスがそう叫ぶと、彼等は足を止めて振り返った。
「・・・別に、お前の為に玄武を助けたわけじゃない!」
「えっ!」
「な・・・!?」
「オズマ・・・。」
「俺達は、お前達の仲間でもなんでもねえってことを、忘れんじゃねえぞ!!」
「そーゆーこと。」
「お前達の聖獣は、絶対に俺達が手に入れてみせる!!」
「だから今のうちに、精々可愛がっておくことね。」
「あっ・・・・・・。」
彼等の言葉で、私達は確信した。
・・・彼等は、味方ではないのだと。
「そうだ、セツナ・・・次に会うときまでに麒麟を復活させておくことだな。それが無理なのであれば、お前に価値はない。」
「!!」
「おい待てオズマ!!コラ!!・・・おい!!」
タカオが止めるものの、彼等が振り返ることは無かった。
「オズマ・・・お前達は一体・・・。」
その後、正気を取り戻したチームサイキックのメンバーと和解をした私達は、夜明けと共に彼等と別れた。
これから再び旅に出て、自分達のことを見つめ直すと言った彼等は、バトルのときよりもずっと真っ直ぐに前を向いていた。
・・・きっと今の彼等なら、デジタルなんかじゃない、本物の聖獣に選ばれてもおかしくはないだろう。
「また日本に遊びに来てね。」
「ああ。」
こうして私達は、それぞれの帰路に着くのだった。
「・・・・・・。」
予想はしていたれど、ヘリコプターに乗る頃には皆疲れきっていて、案の定私は尋常じゃない怠さに、立っていることが出来なくなり、その場にしゃがみこんだ。
「セツナ、倒れそうか?」
「カイ・・・ごめん・・・・・・ちょっとだけ・・・・・・。」
カイにもたれ掛かると、すぐに安心できて、意識がすぐに薄れて行った。