next night
□第十四夜
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暗い・・・。
寒い・・・。
とうとう、ここで終わるのか・・・。
気を失ったと思っていたのに、ぼんやりと見えてきたのは、夢か幻か、それとも走馬灯か。
思えばキリに出会ったのも、水の中だった。
あのときだって私は、真冬の川の中に飛び込み、溺れかけたんだ。
でもそのときは、犬か猫が溺れていると思って助けようとしただけだった。
まさか、異世界から来た伝説の聖獣が溺れているなんて、誰が想像できただろう?
そして、その出会いをきっかけに、私の人生がこうも大きく変わるなんて、一年前の私に話したとして、どうやって信じることが出来るだろう?
でも、あのときと今じゃ状況は違う。
今、キリは出せる力を出し切って、実体化する力さえ無いのだ。
カイ、お兄ちゃん、皆・・・。
最後にもう一度だけ、会いたいよ・・・。
涙が出てきている筈なのに、その感覚すらない。
キリ・・・。
セツナが落ちて、沢山のベイブレードを倒しても、尚も襲い掛かってくるロボット達に、カイは並みでない苛立ちを感じていた。
そんな中、ギデオンへ突っ掛かったヒロミに忍び寄る影があった。
「っ、避けろ!!」
「え・・・?キャアアッ!!」
「ヒロミ!!」
ヒロミを狙ってシュートされた二つのベイブレード。
その場にいた四人はすぐにベイブレードとシューターを取り出すが、間に合いそうにない。
しかし、寸でのところでヒロミを襲ったベイブレードが弾き飛ばされた。
「今の・・・。」
一瞬だけ見えた、黒いベイブレード。
その場にいた全員が同じ方向を見ると、そこにはオズマ達四人が立ちはだかっていた。
「お前らなんでここに!?」
「決まってんでしょ、あんたたちが心配だからよ。」
「ここの科学者共に聖獣を渡すわけにはいかないからね。今回だけは君達の仲間ってわけさ。」
BBAチームは1階をオズマ達に任せ、上のフロアを目指すことにした。
ただ一人、カイを除いて。
「さっさと行け、カイ!!」
「っ・・・、セツナが、この下へ落ちたんだ!!」
「何!?」
「ならば尚更上へ行け!!ここへ居たって無限に敵は出続けるぞ。さっさと上の敵を倒した方が早い!!」
オズマの言うとおり、こうしている間にも、壁からは無数のロボット達が現れ、次々にベイブレードを放っていく。
「どのみち今のセツナではデジタル聖獣を倒すことは出来ない。お前が行かなくてはデジタル聖獣を滅ぼすこともできないんだぞ!!」
「・・・、ぐっ・・・。」
カイは留まりたい気持ちを堪えると、先を行くタカオ達の後を追うのだった。
皆が戦っている気がする・・・。
だって、聖獣達がざわめく気配がするから。
キリがいなくても、もうわかる・・・。
聖獣達の声が、気持ちが、叫びが。
『セツナ・・・。』
『セツナ・・・。』
『麒麟に選ばれし少女・・・。』
『セツナ・・・。』
この声・・・四聖獣・・・?
『セツナ、お前ならば出来る筈だ。・・・麒麟の力を、解放してみろ!!』
麒麟の、力・・・?
「!!!?」
突然目の前に聖獣の気配を感じるが、ここは真っ暗な水の中。
その姿を捉えることはできない。
でもこの気配キリに似ている・・・!?
いや、違う・・・。
こいつが・・・麒麟のデジタル聖獣!!
ドクターBとギデオンは、モニターに写るBBAチーム様子と、セツナの様子を見ていた。
「ドクター、本当にこんなやり方で麒麟の力が目覚めるのでしょうね・・・?」
「多少荒治療ですが、ほぼ100%の確率で目覚めるでしょう。何せこの少女は、ピンチになるほどその力を発揮しやすいというデータが取れているのですから!!」
「ほぅ・・・。それは楽しみですねぇ。」
「いよいよ未完成だった麒麟のデジタル聖獣が完成しますぞ・・・さぁ土崎セツナ、解放するのです、その力を!!」
丁度そのとき、セツナの身体数値を表したコンピューターに変化があった。
「ドクター、土崎セツナの意識レベルがっ・・・。」
「・・・ついに来たか・・・!!」