next night
□第十二夜
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「貴様あぁぁぁぁああっ!!」
『何しやがる!!』
即座にキリとカイによって引き剥がされる私とユウヤ君。
「・・・・・・。」
助けられた後も、先程の出来事が信じられなくて、思わず震える唇に触れるが、その指先も震えていることに気付く。
ウソだ・・・。
カイ以外の人に、キスされた・・・。
「・・・・・・。」
『セツナ・・・。』
「カイさん、これで戦う気になりましたか?」
「・・・・・・っ!!」
「・・・っ、ま、待って!!」
カイが構える前に、上ずった声でそれを止める。
「こ、こんなことして・・・ただで済むとお、思わないでよ!!カイが出るまでもない、私と戦いなさい!」
痺れているせいで上手く舌が回らない。
「へぇ・・・まぁいいでしょう。貴方を倒した後でも、今のカイさんなら戦ってくれそうですしね。それではセツナさん、行きますよ。」
「っ!!」
すぐにキリをドラキリューに戻し、ユウヤ君に向かって構える。
悔しい気持ちで一杯で、目には涙が溜まっているけれど、こんなことで泣くなんてもっと悔しい。
デジタル聖獣がなんだ!!
どいつもこいつも散々人を狙って・・・いい加減にしろっ!!
「3」
「2」
「1」
「「ゴー、シュート!!」」
ダメだとはわかっていても、半ば怒りに任せたシュートでユウヤ君のベイブレードを狙う。
「ドラキリュー、行け!!」
「甘いですね。仮にも世界大会優勝者の攻撃じゃありませんよ!」
最初から激しい攻防が始まり、ぶつかる度に火花が散る。
「セツナちゃん・・・かなり動揺しているけど大丈夫かな・・・。」
「自分なりに蹴りを付けようと思っているように見えるが、そうまでしてカイを戦わせたくなかったようにも見えるな。」
「そうですね・・・。しかし、ここのところセツナは引き分けることが多かったことですし、不安が拭えません・・・。」
「しかもそれだけじゃない。ドラキリューは連日の特訓のせいでボロボロだ。」
「・・・セツナ・・・。」
何度ぶつかっても、まるで隙のない戦法を前に、私は唇を血が滲むほど噛んだ。
「カイさんの恋人と言えど、所詮この程度ですか・・・。そろそろ決めてあげますよ、デジタルバード!!」
「!!」
朱雀を模したデジタル聖獣が現れる。
この気配・・・やっぱりただのコピーなんかじゃない!!
「そんなものを使うなんて・・・!ドラキリュー!!」
『うぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!』
聖獣同士の激しいぶつかり合いが始まる。
『クソッ、なんなんだよお前は!!』
「ドラキリュー、ランドストーム!!」
どんなに石が飛んできても、火が降り注いでも、ユウヤ君のベイブレードはまだまだ余裕だ。
・・・いや、それどころか先程から回転力が上がっている気がする。
聖獣が出ているから・・・?
「・・・いや、違う・・・。」
デジタル聖獣が纏うオーラに、背筋が粟立つ。
「ユウヤ君!!この聖獣は危険だ・・・!今すぐにしまって!!」
「何を言ってるんですか。そんなことできるわけないじゃないですか。」
「そ、そりゃバトル中なんだから当たり前だけど・・・って、そうじゃない!!いい?よく聞いて!!さっきからその聖獣の気配が強くなっているの・・・ブレーダーの力が、聖獣に追い付いていない!このままじゃ聖獣に喰われるぞ!!?」
「聖獣に、喰われる・・・?」
ユウヤ君は自身のベイブレードから出ている聖獣を見上げた。
「おい、なんか様子がおかしいぞ!?」
タカオがそう言ってくれるけれど、見ているだけでそれくらいわかる。
「違う・・・こんなの、僕がしたかったバトルじゃない・・・。」
「ユウヤ君・・・。」
「うっ・・・!!」
「ユウヤ!!」
カイが呼ぶものの、頭を抱えたユウヤ君はその場にしゃがみこんでしまう。
「うううっ・・・うわぁーっ!!!」
「!!?」
その瞬間、突如強い風が吹き、身体が後ろへと吹っ飛んだ。
「セツナ!!・・・ぐっ!!」
駆けつけたカイによってなんとか抱き止めてもらえるものの、彼もろとも地面に倒れ込んでしまう。
「カイ!!」
「気にするな・・・それより、奴を止めろ!」
「うん・・・わかってる。」
でも、どうやって?
『セツナ、集中を解くな!!・・・ぐわっ!!』
「ドラキリュー!!」
「フフフフ・・・ハハハハ!!ハーッハッハッハ!!いいぞ、デジタルバード!!もっとだ、もっとやれ!!」
「・・・・・・!」
再びユウヤ君に目を向けた私達は絶句した。
顔に怪しげな模様を浮かばせ、狂ったように聖獣を操る彼は、もう以前のような面影がなかった。
「遅かった・・・。」
ぽつりと呟いた言葉が、空しく掻き消される。
「ユウヤ・・・!」
「っ・・・!!」
ユウヤ君・・・!!