next night

□第十夜
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新しく見つけたアジトで、オズマ、ドゥンガ、マリアム、ユスフの四人の影が揺れる。



「オズマ、本当によかったのか!?あのセツナって奴を連れてこなくて!!」

先日のオズマとタカオの戦いは兎も角として、本来の目的の内の一つである、麒麟とその主の捕獲に関して納得のいかないドゥンガは、側にあった柱を力任せに殴る。

ギシ・・・と軋む木の音に眉を顰めながら、マリアムは腰掛けていた椅子に体重を預けて答えた。

「ドゥンガ、あんたの頭も大概ね。昨日も言ってたじゃないの。BBAの連中があのレベルなのにあの子を連れてきたってしょうがないって。・・・ま、確かにあの子を拐ったら、あいつら血眼になって探しそうな気もするけどね?」

マックスの件を思い出し、マリアムはクスクスと笑った。

そんな二人のやりとりを聞きながら、ユスフはオズマに尋ねる。

「・・・なぁ、ところでオズマ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか?麒麟だけ、聖獣だけではなくその主も必要とする理由・・・。」

その会話を聞いていたマリアムとドゥンガもこちらに注目する。

オズマはゆっくりと閉じていた目を開けると、口角を持ち上げ・・・・・・。




















梅雨入り前の妙に暑い日差しの中、私達はひたすら階段を上り下りする。

ヒロミちゃんと考えに考えた結果、基礎体力とバトルを中心にした練習メニューが生まれた為、彼此一時間くらいは走っているのだが・・・。



「ひぃっ、ひいっ、死ぬ・・・も、マジ・・・。」

「タカオ、そういうときは呼吸法を変えるといいんだ。」

「呼吸、法っ・・・?」

「ひぃ、ひぃ、ふぅーっ。ひぃ、ひぃ、ふぅーっ。ってやるんだ!!」

「マックス・・・それは出産の時の呼吸法・・・。」

「え!?」

「ってバッカ止まるなマック・・・ス・・・うわぁぁぁぁ!!?」

「ぎゃああああっっっっ!!!」

「うわぁぁぁぁぁっ!!!?」



ドテンッ!!



そんな激しい音を立てて、タカオとマックス、それからキョウジュが転けた。

「ちょっとっ、はぁっ・・・大丈夫・・・っ!?」

「無駄話してるからよ!そんなことでまた怪我したらどーするわけ!?」

「そんなことってなぁ!!・・・はぁっ、もうっ、一時間もずっと走ってんだぞ!!」

「ちゃんと30分前に水は飲ませてあげたでしょう!?ほら立った立った、怪我が無いならどんどん行くわよ!!」



そんな感じで私達は練習を続ける。



漸く今日のノルマを達成し、公園のベンチで一息吐いていると、タカオ達が聖獣について話しているのが聞こえた。

以前は麒麟が特殊なのだと思っていたけれど、最近は案外そうでもないような気がしてきた。

そりゃあ確かに、私は調子に乗って聖獣の力を使いすぎると倒れるし、キリは他の聖獣と違ってベイブレードが回っていなくても実体化出来るし・・・・・・でも、根本的には同じなんだと思う。

ベイブレードと聖獣、それからブレーダーは一心同体。

そのことを忘れずに、練習に臨まなきゃな。



そんなことを考えていると、カイが隣に腰掛けた。

飲んでいたスポーツドリンクを差し出すと、彼は躊躇いなく口をつけた。

それでも流れている汗の量が私とまるで違う。

そういえばレイだって全然余裕そうだった。

参ったな・・・私だって毎日走り込みやってた筈なんだけど。



益々気合いを入れるため、私はすぐに立ち上がって、キョウジュとヒロミちゃんに声を掛けた。












次の日。

大転寺会長に呼び出された為、タカオとキョウジュ、それからヒロミちゃんはBBA本部へと出掛けて行った。

残された私達はひたすらバトルを行うものの、流石に昨日からずっと同じことの繰り返しばかり続けてきた為に、少々飽きてきた。

「仕方ない。タカオが帰ってきてからと思っていたけど、走り込みに行こうか。」

私が提案すると、すんなりと受け入れてくれた。













昨日は海の方を走った為、今日は気分を変えて商店街の方を走ってみる。



「ふぅっ、はぁっ・・・・・・あれ?ちょっとストップ。」

マックスが足を止めたので、私達もそれに倣う。

少し小さな市民会館のような場所で、入り口には貼り紙があった。

「ね、見てよこれ。ベイブレードの大会をやってるみたいだ。」

「とは言っても素人のだろ?俺達が行っても何の成果も得られないってユーロの時の船の中でも話してたじゃないか。」

「ちっちっち。そうじゃなくて、なんかここにタカオが居そうな感じがしない?」

私とレイは顔を見合わせる。

そして、側に貼ってあるポスターを見て主催がBBAだということを知ると、確信した。

「・・・入ってみるか。」

扉を開けて中に入ると、ポケットの中でドラキリューが動く気配がする。

試しに出してやると、すぐに実体化して辺りを見渡した。

『・・・なんだか嫌な気配を感じる。』

「嫌な気配?聖獣の?」

『ああ・・・しかし、なんとも言い難い。どこかで感じたことのある気配に間違いはないが、僕もまだ完全に力が戻ったわけではないしな・・・。』

「行ってみればわかることだ。」

カイがそう言って歩を進める。

私達も慌ててそれに付いて行った。
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