next night
□第八夜
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タカオが入院して一週間が経過しようとしていた。
その間、私達は割りと好きに過ごしていたと思う。
マックスは家に帰ってお父さんと過ごしていたし、レイもこっちの知り合いに会いに行ったりして、結構忙しそうだった。
私とカイに関しては、カイのもうひとつの隠れ家で一緒に過ごして、そこで特訓に励んだり、・・・ちょっとだけ、甘い時間を過ごしたりもした。
時々お祖父さんの手伝いもしたし、キョウジュやヒロミちゃんに練習を見てもらったし、キリに色んな話をした。
ただ、タカオがいないと、やっぱり寂しい。
時々、カイが遠くを見るように何かを考えているときがあるけれど、目付きが鋭くなかったから、多分タカオのことを考えていたんだと思う。
そんな中、ヒロミちゃんの発案でタカオのお見舞いに行くことが決まった。
どうせタカオのことだ。
そろそろ怪我が治っているのに、サボりたいが為に誤魔化している可能性があるから、皆で様子を見に行こうと言うのだ。
そして、案の定その予感は的中することになる。
「もー、やっぱり元気じゃんっ!」
「全くだな。」
先生が持ってきてくれた箱の中身をお菓子と勘違いしてがっかりするタカオを見て、私達は吹き出してしまった。
そんなとき、丁度大転寺会長が姿を現す。
病院の屋上へ場所を変え、改めて会長から謝罪を受けると、タカオはそんな会長に、その件について私達は特に何とも思っていないことを伝えた。
そして、チームサイキックの他に倒すべきである相手・・・オズマや、その仲間達を探すように頼んだ。
彼等は皆、オズマの一味の内の誰かしらと一戦交え、そしてカイ以外皆負けているのだ。
このままではBBAとしてのプライドが赦せないのであろう。
「あっちが見えない聖獣を出して戦っていたとわかっていたら、こっちも玄武を出していたのに・・・。」
「見えない聖獣・・・?」
マックスが悔しそうに言うと、大転寺会長は首をかしげた。
そういえば会長は見えない聖獣のことを知らないんだったな・・・。
ポケットの中のドラキリューを握りしめ、カイの方へと視線を向ける。
しかし、カイは訝しげな顔をして、建物の更に上の方を見ていた。
気になって私もそちらを見てみるけれど、何もない。
「それを言ったら俺たちだって・・・なぁ、カイ?」
「・・・・・・。」
そんなカイは、レイが語りかけても反応しない。
「どうしたの?カイ。」
「・・・誰かに見られていたような・・・気のせいだったようだ。」
「・・・そうか?兎に角、俺達は見えない聖獣に悉く敗れたんだ。思いは同じさ。」
レイの言葉に皆が頷く。(しかし、カイは別だ。本人も何度も言ってるけど、"引き分け"だったからね。)
会長は先日のせめてもの償いとして、オズマ達を探すことを約束してくれた。
キョウジュが彼らのデータを渡すと、会長はしっかりと受け取り、そして、そのまま病院を去っていった。
タカオの様子もわかったことだしと、私達も病院を後にする。
「・・・そういえばセツナ。キリを使ってあいつらの場所を特定することは出来ないのか?」
「ううん、また小さくなっちゃったから鍛え直さないとダメみたいで・・・。」
「そうか・・・。」
「ごめんね。」
「セツナちゃんが謝ることじゃないよ。」
レイとマックスとそんな会話をして、ポケットからドラキリューを取り出した。
キョウジュにつくってもらった新しいドラキリュー・・・ドラキリューVは、前のドラキリューと比べてかなり性能が異なる。
逆回転の機能は無いし、MGコアは付いているしで、そこまで上手く使いこなすことも出来ていない私は、中々レベルアップ出来ずに苦戦している。
私だけまだ、オズマ達と本気でやりあっていないけれども、それは運があったからで、でも、だからこそいつ狙われるかなんてわからない。
だから強くならなくちゃ・・・とは思う。
「でも・・・このままじゃダメだわ。」
どんな練習をしても、世界大会の時のような手応えを感じない。
そのことに危機感を覚えた私は、目の前を歩くヒロミちゃんに話し掛けるのだった。