next night
□第三夜
1ページ/6ページ
カイがお風呂から上がり、代わりに私は浴室へ。
そういえば初めてここに来たときも、私はお風呂をいただいた。
そのときは不慮の事故とはいえ、そこでばったりタカオに遭遇してしまったので、今回は念のために鍵をかけることにした。
しかし、そのときふと、自分の着替えが無いことを思い出した私は、迷った挙げ句タカオの部屋に引き返した。
「タカオ〜・・・・・・って、あれ?」
部屋にタカオの姿はなく、残されたカイは(恐らく勝手に)彼のベッドを借りて横になっていた。
「ねぇカイ。タカオどこ?」
「・・・さぁな。」
「おじいさんのとこかな・・・。まぁそれなら仕方ないか。」
「・・・。奴に何の用だ。」
「え、いや着替えを借りようと思ってさ。」
私、カイみたく荷物持ってきてないし。
と溢せば、カイは起き上がってこちらを上から下まで見つめる。
「・・・・・・着れるのか?」
「いや、タカオのじゃないよ。タカオのお兄さんが置いていったっていう着替え。まぁでも身長追い付かれそうだし、多分タカオのでも平気だと思うけど。」
「・・・・・・。」
「って、そんな目で見るのやめてよ。」
カイは私の言葉を聞いて、ピクリと眉を動かした。
「だってカイのじゃセク・・・・・・えっと、露出高いし。」
「体温を上げすぎない為だ。」
「そんな秘密があったの!?」
ぶったまげて目を見開いた時だった。
襖が開き、タカオが上機嫌で戻ってきた。
「なぁ!じっちゃんが道場で寝てもいいってさ!後で布団持ってこうぜー♪・・・ってあれ?セツナ風呂に入ったんじゃないのか?」
「うん。着替えを借りようと思って・・・。」
「あー、いいぜ。前みたく兄ちゃんのがいいのか?」
「出来れば・・・でもタカオのでも平気そう。」
「へへっ、俺大分伸びたもんねー!」
そう言ってタカオは私に近付いて背比べをしてくる。
本当にタカオは伸びたみたいで、どうやらちょっと抜かされてしまったみたいだ。
「あっれー?セツナちっとも伸びてないんじゃねーの?」
「う、うるさいなっ。」
そう。
向こうに帰ってからというもの、身長は158pからちっとも変わらなかったのだ。
・・・ううん。
身長だけじゃない。
心だって、私はずっとあのときのままだ。
BBAのピンチなのに、やっと二人に会えてホッとしているなんて、まだまだ未熟な証拠だ。
落ち込む私の肩に、タカオは手をポンと乗せた。
「ま、色っぽくなったからいんじゃねぇの?」
「・・・へ?・・・い、・・・色?」
驚いてタカオを見上げると、彼は自分の胸の前で両手をくるんと回す。
その動作はつまり・・・。
「ちぇっ、ヒロミもセツナくらい可愛い気があればいいのになぁ。」
「・・・・・・。」
どんな反応をしていいかわからずに、タカオから目線を逸らす。
すると、微妙な顔でこちらを見ているカイと目があった。
「か、カイ・・・。」
「なんだ。」
「いや・・・・・・やっぱなんでもない。」
「・・・・・・。」
曖昧に笑って見せると、カイは黙ってベッドに寝そべった。
「・・・・・・お風呂入ってくる。」
「あ、おいセツナっ。」
止めようとするタカオの横をすり抜け、私は再び浴室へ向かった。
カポン・・・・・・。
桶を置いて浴槽へ浸かり、ボーッと天井を見上げる。
こっちへ再び来て2日が経った。
タカオの話だと、マックスやレイはそれぞれアメリカと中国へ戻っているらしく、今日本にいるBBAチームは私達三人だけだ。
だから、聖獣を集めて強力な力を得ることもできない。
「やっぱり、なんとしてでもドランザーの声を聞くしかないよね・・・。」
先程の二人の戦いを思い出す。
今この手にドラキリューがあったとして、私にあんなバトルができるだろうか?
この一年、BBAやキリのことを忘れた日なんてなかった。
でも、なんだか少し自信がなくなってきた。
しかし、ずっと考え事をしていたからか、だんだん逆上せてきたので、一旦くらくらする頭を押さえて、そろそろ出ようか考えたときだった。
「あれ・・・タオルってこの一枚しかなかったっけ。・・・いや、てか着替え結局忘れたわ。」
するとそこで漸く、着替えを忘れたことを思い出す。
「バカじゃね私・・・・・・。」
はぁ、と息を吐きながら、鼻までお湯に浸かれば、ブクブクと泡が浮かぶ。
すると、脱衣場の方からガラッと、引き戸を開ける音がした。
やっべ、そういや鍵も結局かけ忘れた!!
慌てた私は意味もなく、バチャバチャと立ち上がったりしゃがんだりを繰り返す。
「大人しく風呂に入ることもできんのか。」
「カイ!?」
どうやら脱衣場に入ってきたのはカイらしい。
少しだけホッとするも束の間、磨りガラス越しにそのシルエットを捕らえると、やっぱり恥ずかしくて湯船に身体を隠す。
「ど、どうしたの?」
「木ノ宮の代わりに着替えを持ってきただけだ。」
「あ、そう・・・っ?じゃあそこにテキトーに置いといて!」
早口でそう告げれば、カイのシルエットはしゃがんで何かを置いた。
「ありがとね。」
「・・・・・・。」
お礼を告げるものの、そのシルエットがそこから全然動かない。
不思議に思って、側に置いてあったタオルで身体を隠しながら上がってみる。
「カイ・・・?」
磨りガラスの向こうのカイが、立ち上がるのが見えた。
かとおもうと、すぐに目の前の扉がスライドし、あっという間に私達を隔てる物は無くなった。
「・・・って、え?」
私の思考は一瞬だけ止まる。