next night

□第三夜
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カイがお風呂から上がり、代わりに私は浴室へ。

そういえば初めてここに来たときも、私はお風呂をいただいた。

そのときは不慮の事故とはいえ、そこでばったりタカオに遭遇してしまったので、今回は念のために鍵をかけることにした。

しかし、そのときふと、自分の着替えが無いことを思い出した私は、迷った挙げ句タカオの部屋に引き返した。












「タカオ〜・・・・・・って、あれ?」

部屋にタカオの姿はなく、残されたカイは(恐らく勝手に)彼のベッドを借りて横になっていた。

「ねぇカイ。タカオどこ?」

「・・・さぁな。」

「おじいさんのとこかな・・・。まぁそれなら仕方ないか。」

「・・・。奴に何の用だ。」

「え、いや着替えを借りようと思ってさ。」

私、カイみたく荷物持ってきてないし。

と溢せば、カイは起き上がってこちらを上から下まで見つめる。

「・・・・・・着れるのか?」

「いや、タカオのじゃないよ。タカオのお兄さんが置いていったっていう着替え。まぁでも身長追い付かれそうだし、多分タカオのでも平気だと思うけど。」

「・・・・・・。」

「って、そんな目で見るのやめてよ。」

カイは私の言葉を聞いて、ピクリと眉を動かした。

「だってカイのじゃセク・・・・・・えっと、露出高いし。」

「体温を上げすぎない為だ。」

「そんな秘密があったの!?」

ぶったまげて目を見開いた時だった。

襖が開き、タカオが上機嫌で戻ってきた。

「なぁ!じっちゃんが道場で寝てもいいってさ!後で布団持ってこうぜー♪・・・ってあれ?セツナ風呂に入ったんじゃないのか?」

「うん。着替えを借りようと思って・・・。」

「あー、いいぜ。前みたく兄ちゃんのがいいのか?」

「出来れば・・・でもタカオのでも平気そう。」

「へへっ、俺大分伸びたもんねー!」

そう言ってタカオは私に近付いて背比べをしてくる。

本当にタカオは伸びたみたいで、どうやらちょっと抜かされてしまったみたいだ。

「あっれー?セツナちっとも伸びてないんじゃねーの?」

「う、うるさいなっ。」

そう。

向こうに帰ってからというもの、身長は158pからちっとも変わらなかったのだ。

・・・ううん。

身長だけじゃない。

心だって、私はずっとあのときのままだ。

BBAのピンチなのに、やっと二人に会えてホッとしているなんて、まだまだ未熟な証拠だ。

落ち込む私の肩に、タカオは手をポンと乗せた。

「ま、色っぽくなったからいんじゃねぇの?」

「・・・へ?・・・い、・・・色?」

驚いてタカオを見上げると、彼は自分の胸の前で両手をくるんと回す。

その動作はつまり・・・。



「ちぇっ、ヒロミもセツナくらい可愛い気があればいいのになぁ。」

「・・・・・・。」

どんな反応をしていいかわからずに、タカオから目線を逸らす。

すると、微妙な顔でこちらを見ているカイと目があった。

「か、カイ・・・。」

「なんだ。」

「いや・・・・・・やっぱなんでもない。」

「・・・・・・。」

曖昧に笑って見せると、カイは黙ってベッドに寝そべった。

「・・・・・・お風呂入ってくる。」

「あ、おいセツナっ。」

止めようとするタカオの横をすり抜け、私は再び浴室へ向かった。














カポン・・・・・・。



桶を置いて浴槽へ浸かり、ボーッと天井を見上げる。

こっちへ再び来て2日が経った。

タカオの話だと、マックスやレイはそれぞれアメリカと中国へ戻っているらしく、今日本にいるBBAチームは私達三人だけだ。

だから、聖獣を集めて強力な力を得ることもできない。

「やっぱり、なんとしてでもドランザーの声を聞くしかないよね・・・。」

先程の二人の戦いを思い出す。

今この手にドラキリューがあったとして、私にあんなバトルができるだろうか?

この一年、BBAやキリのことを忘れた日なんてなかった。

でも、なんだか少し自信がなくなってきた。



しかし、ずっと考え事をしていたからか、だんだん逆上せてきたので、一旦くらくらする頭を押さえて、そろそろ出ようか考えたときだった。

「あれ・・・タオルってこの一枚しかなかったっけ。・・・いや、てか着替え結局忘れたわ。」

するとそこで漸く、着替えを忘れたことを思い出す。

「バカじゃね私・・・・・・。」

はぁ、と息を吐きながら、鼻までお湯に浸かれば、ブクブクと泡が浮かぶ。

すると、脱衣場の方からガラッと、引き戸を開ける音がした。

やっべ、そういや鍵も結局かけ忘れた!!

慌てた私は意味もなく、バチャバチャと立ち上がったりしゃがんだりを繰り返す。

「大人しく風呂に入ることもできんのか。」

「カイ!?」

どうやら脱衣場に入ってきたのはカイらしい。

少しだけホッとするも束の間、磨りガラス越しにそのシルエットを捕らえると、やっぱり恥ずかしくて湯船に身体を隠す。

「ど、どうしたの?」

「木ノ宮の代わりに着替えを持ってきただけだ。」

「あ、そう・・・っ?じゃあそこにテキトーに置いといて!」

早口でそう告げれば、カイのシルエットはしゃがんで何かを置いた。

「ありがとね。」

「・・・・・・。」

お礼を告げるものの、そのシルエットがそこから全然動かない。

不思議に思って、側に置いてあったタオルで身体を隠しながら上がってみる。

「カイ・・・?」

磨りガラスの向こうのカイが、立ち上がるのが見えた。

かとおもうと、すぐに目の前の扉がスライドし、あっという間に私達を隔てる物は無くなった。



「・・・って、え?」



私の思考は一瞬だけ止まる。
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