next night

□第二夜
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「ドランザー!!」

なんとかドランザーは攻撃を躱すものの、ちっとも反撃できない。

「どうした!?そんな動きじゃ俺は倒せないぞ!!」

「っ・・・」

重そうな癖に速い・・・!

どうする?

フレイムファイヤーで当たるか?

「フレイムファイヤー!!」

ドランザーが炎を巻き起こすが、相手のベイブレードはビクともしない。

「嘘・・・!?」

「なんだぁ?それっぽっちの炎じゃ俺には敵わないぞ!!」

「くっ・・・!!」

額から汗が流れる。

私とドランザーの相性は、カイとドランザーのそれには敵わない。

でも、それを差し引いてもドゥンガには勝てない・・・。

私達が弱いんじゃない。

「いくぜ!!」

「うわぁっ!!?」

「セツナさんっ!!」



・・・彼が・・・・・・強いんだ!!



ベイブレード同士が激しくぶつかり、強い衝撃波が私の身体を飛ばす。

「うっ・・・!!」

ドガッ!!

壁に打ち付けられ、意識が朦朧とする。

「ちっ・・・なんとか耐えたか。」

「はぁっ・・・」

大きく息を吐く。

ドランザーはまだ生きてる・・・。

「っ・・・ぅ・・・。」

「セツナさん、無理に立っちゃダメです!!・・・クソ、どうしたら・・・。」

なんとかして立とうとするものの、頭がクラクラする。

「さっさとあのカイってやつを呼んだらどうだ?」

「・・・・・・。」

そんな中、ドゥンガはゆうや君に向かってニヤリと笑った。

「う・・・待っててください、セツナさん!いますぐカイさんを呼んできますから!!」

ゆうや君の走り去る音がどんどん小さくなる。

一人取り残された私は、じっとそれを聞いていた。

「・・・さて、その身体じゃもう立てないんじゃないのか?」

「・・・・・・。」

「ドラキリューを使ったらどうだ?」

「・・・・・・。」

ドラキリューがあったら最初から使っている。

でも、そのことを彼に話すつもりはなかった。

「・・・・・・ちっ。なら力ずくでドラキリューを使わせてやるさ。」

ドゥンガは私に近付くと、ポケットの方へと手を伸ばす。

・・・・・・そうか、それが狙いか・・・・・・。

私は最後の力を振り絞って、ドランザーに目配せをした。

「!?・・・・・・ちっ!!」

ドランザーはこちらに向かって勢いよく飛んでくる。

しかし、ドゥンガが寸でで避けた為に、途中で軌道を変えて私の側で回っている。

「・・・・・・いい趣味してるね、貴方。」

目線を上げて男の子を見据える。

「こんなことしたってカイを怒らせることはできても・・・本気で貴方と戦いたいと思わせることはできないよ。」

「ふん、お前に何がわかる。」

「わかるよ。・・・ずっと一緒にいたんだもん。」

カイはいまでも、ただ一人のブレーダーだけを、最高のライバルとして認めている。

向かってくる敵は、きっと相手にはするだろう。

でも、その敵と戦うことにより、ベイバトルの喜びを感じることはないだろう。

何故ならそれは、カイが戦うべき相手ではあるけれど、戦いたい相手ではないからだ。

「貴方じゃカイには勝てない。」

「わかんないぜ?やってみなくちゃな。・・・だがその前に、お前と麒麟を潰してやるさ!!スパークハンマー!!」

「っ!!」

今度こそ来る・・・!!

そうわかってはいたのに、一歩だけ立ち上がるのが遅れた。

だって、ボルティックエイプからすごいエネルギーが現れたから・・・。

何故かぼんやりとしか見えないけれど、あれは間違いなく聖獣だ。

そしてその聖獣は、見た目に似つかわしくないスピードで、私を確実に狙ってきた。

「あっ・・・ドラン・・・」

ダメ、間に合わない!!

「わぁぁぁああああっ!!?」

先程の攻撃で既にふらふらだった私は、簡単に吹き飛ばされる。

しかも今度は運の悪いことに、フェンスへ打ち付けられ・・・

「っ・・・!?」



反射的に右手を伸ばし、なんとか乗り越えてしまったフェンスを掴む。

しかし、身体はぷらぷらと揺れ、この手を離したら数秒であの世行きだ。

「くっ・・・」

冷や汗で手が滑りそうになる。

ヤバい、落ちる・・・!!

思わず目を瞑ったそのときだった。



「セツナ!!」



こんなとき、いつだって助けてくれる優しくて強い腕。

その腕が瞬時に私を引き上げ、安心する匂いが私を包んだ。

「カイさん!セツナさん!大丈夫ですか!?」

「・・・・・・。」

何も言わなくても、抱き締める腕が静かに怒りを露にしていた。

「カイ・・・。」

「・・・下がっていろ。」

カイはゆうや君に私を託すと、ドランザーを手に戻す。

「ふん、やっと戦う気になったようだな。」

「勘違いするな。貴様にはこいつを傷付けてくれた礼をするだけだ。・・・勝負は一度きり。」

「なんだっていい。お前が戦うのならな!!」

「貴様のベイ捌きには虫酸が走る。」

ドゥンガもボルティックエイプを手に戻す。



そして互いにスタジアムへ向けてワインダーを引くのだった。
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