one night

□最終夜
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「はぁっ・・・は・・・うっ・・・・・・」



服がボロボロになり、息をするのも苦しい。

『セツナ・・・・・・。』

聞こえてくるキリの声も、最早余裕なんて微塵もない。

「セツナ!!もういい!!これ以上は本当に死んじまうぞ!!」

「もう止めさせましょう!!このままじゃセツナはっ・・・」

それでも・・・・・・!!

「来ないで!私は負けない・・・!!」

「何っ!?」

「私はカイの無念を抱いてここにいる。そして、タカオに襷を繋ぐために戦っている・・・!」

そうこう言う間にも、どんどん傷は増えていく。

「ふん、強がりも大概にしろよ。痛いだろ?苦しいだろ?早く倒れて楽になるがいい。」

「うるさいっ・・・」

「しぶといやつだ・・・止めを刺してやる。」

「刺せるものなら刺してみやがれ・・・私は、私達は、これ以上貴方達の思うようにはならない!!」

『セツナーっ!!』

「なんだ、セツナの様子が・・・!?」

「・・・どうやらやっと軌道に乗ったようだな。」

身体の奥から熱い何かが溢れてくる。

それが、痛みを忘れさせて私に力をくれる。

ドラキリューにも伝わっているだろうか?

「ドラキリュー!!グラウンドアップだ!」

『うぉぉぉおおおおお!!!』

「させるかぁぁ!!!」


ビュンビュンと風が吹き、いよいよ呼吸をするのもままならない。

それでも私は今度こそ飛ばされないようにと踏ん張って、攻撃に耐える。

ピキッと、ドラキリューの方から小さな音が聞こえる。

お願い・・・耐えて!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「何!?」



ガッ!!



無数に生えたブロックに、ファルボーグの角が当たる。

そのままファルボーグはスタジアムの回転に足をとられ、スタジアムの外へと飛んでいった。



「ふ、ファルボーグアウト!!勝者、セツナ選手!!」



ワッと上がる歓声。

私はすぐにドラキリューを手に戻し、ボリスに向かって口角を上げる。

「最後の攻撃の前・・・一瞬だけ隙があったんだよ。わかった?」

「ふふふっ・・・熟愚かな奴だ。今貴様は自分の中に残っている最後の力を使い果たした。次のバトルでは聖獣を出すことは愚か、切り札の逆回転も使えまい・・・終わりだ。」

「・・・っ」

図星だ。

私はこの世界に来て、ドラキリューと戦う中、その力を受け入れるだけの器ができていないせいで何度も気を失っている。

だから、自分の本当の限界と言うものをわかり始めていた。

ヤバい・・・そうこうしているうちに視界が暗くなっていく・・・。



「セツナ!!」



「ちく・・・しょ・・・・・・。」














「皆よくやってくれました・・・BBA最高責任者として決断します。」

誰かが何かを言っている・・・。

そうだ、試合は・・・?

「決勝第二戦、第三戦を棄権します・・・!!」

大きな手が私の頭を撫でている。

でもそこから、果てしないやるせなさを感じる・・・。

そうだよ・・・私が闘わなきゃ、ここにいる皆・・・

"僕と最後まで戦え!!"



「!?」

「セツナ!!」



ズキズキ痛む身体を、ソファーの手すりを支えにしてなんとか起き上がらせる。

「ここまできてそれは無しですよ・・・大転寺会長・・・!」

「セツナ君・・・!?」

「セツナちゃん、君の身体のことを思ってなんだ・・・わかってくれ。」

タカオのお祖父さんに優しく言われるけれど、私の意志が揺らぐことはなかった。

「ダメです!!あと一回・・・あと一回勝てば、タカオに繋げるんです!!」

「バカっ、セツナ立つなっ・・・!!」

ふらつく足で立ち上がり、無理矢理笑顔を作る。

「ダメだよセツナちゃん・・・もう終わったんだ。戦わなくていいんだよ・・・!!」

「ボーグの野望を阻止できなかったことは悔しいが・・・これ以上はダメだ!」

「セツナ、どうしちまったんだよ!?」

「無駄だ。」

止める皆とは対照的に、カイだけはじっと私を見つめていた。

「そいつはもう、本能だけで立っている。戦いたい、このバトルに勝ちたいと言う本能だけで・・・・・・キリも、そう言っている。」

「カイ、貴方まさかキリの声が・・・?」



カイは何も言わずに、私の頬を撫でた。
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