one night
□第二十四夜
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キリがカイの気配を地下で感じると言うのでなんとかして下へ降りる道を探していると、ある穴の側でコートを見つけた。
キリ曰くカイの匂いがするので、勇気を出してそこから下へ降りると、様々なトラップの残骸が落ちていた。
『これは・・・カイがここを通ったということか?』
「・・・・・・。」
『セツナ、本当に行くのか?』
「この先にカイはいるんでしょう?・・・なら決まっている。」
『・・・わかったよ。ちょっと飛ばすからな、落とされるなよっ!!』
キリは全力でトラップの後を追っていく。
『なんなんだこの場所・・・沢山の悲鳴が聞こえる・・・。』
「悲鳴?私には何も聞こえないけど・・・」
『聖獣のようだが、セツナに聞こえないということは違うのか・・・?』
器用にトラップが作動した痕跡のある道とそうでない道があったため、私達はどんどん進んでいくことができて、あっという間に奥のそれらしい部屋へと辿り着いた。
『この部屋から妙な気配を感じる・・・。』
キリはブルッと身を震わした。
私は背中から降りると、暗くて奥の見えないその部屋を見つめた。
「キリ・・・ドランザーの気配は?」
『ここからする。だが、酷く怯えている・・・?』
「ドランザーが怯えている?どういうこと?」
『わからない・・・中に入ってみない限りはな。』
ゴクリと唾を飲み込み、部屋へと足を踏み入れた。
しかし、その瞬間に何かが頬を掠めた。
まさかあの速さ・・・ベイブレード!?
『セツナっ!!』
直ぐ様キリが私の盾になる。
すると、また先程のベイブレードが私達を襲ってきた。
「キリ!!うわっ!?」
私は落ちていた棒を拾って構えた。
「誰!?」
暗がりで完全には見えないが、確かにそこに誰かがいる。
「これはこれは。ユーリから一人逃したと聞いていましたが・・・まさか貴方とはね。」
「その声・・・ヴォルコフさん!?」
「いかにも。」
「じゃあさっきからこのベイブレードを操っているのは・・・?わっ!!」
『クソ!!』
執拗に私達を襲うベイブレードは、薄暗い部屋で見た限りでは真っ黒だった。
でもあの形・・・見たことがある・・・。
信じたくないけどあれは・・・
「ドランザー・・・?」
「ご名答。」
「!!」
シュッと音を立てて黒いドランザーらしきベイブレードが私の後ろへ飛ぶ。
持ち主の手に戻ったのかと思いながら振り返ろうとしたその瞬間、後ろから再びカチャッという、シューターを構える音がした。
大分至近距離にあるようで、このままだとやられると確信した私は、すぐにキリをドラキリューへと戻して同じように構えた。
そしてその相手を漸く視認した途端、自分の目を疑った。
「そんな・・・なんで貴方が・・・・・・・・・カイっ!!」
「・・・・・・っ。」
カイは私目掛けてベイブレードを放つ。
やむを得ず私もワインダーを引くけど、どうしても脚が震えてしまう。
「カイ、どうしたのその黒いドランザーは・・・?何があったの?ねぇ!!」
「・・・俺は思い出した。」
「思い出したって・・・何を?」
「かつて俺がここで過ごした記憶だ!!」
『来る!!』
ガキンッと、火花が飛び散るくらい強いアタックに、ドラキリューは弾き飛ばされる。
「幼かった俺はこのブラックドランザーの力に魅せられ、そして記憶を失った。しかし再びここを訪れ、思い出した。・・・このベイさえあれば、俺が最強になれるということをな!!」
「最強になれるだって・・・?ドランザーが黒くなっただけで!?」
私はドラキリューの体勢をよく見て、ブラックドランザーに攻撃を仕掛ける。
「ブラックドランザーはドランザーと似て非なる物。私達の研究の成果なのですよ、セツナさん。」
「ヴォルコフさん!!貴方が何かしたんだな!?」
「はて。私はカイ君にブラックドランザーを手に取るように言っただけです。今、彼が貴方と戦っているのは彼自身の意思ですよ。」
「ちっ・・・グラウンドアップ!!」
『うおおおおお!!』
「そんなものがきくか。行け、ブラックドランザー!!」
「!!」
『セツナ!!』
次の瞬間、ブラックドランザーは飛び上がって、ドラキリューへと突っ込んだ。
そしてそのまま、ドラキリューごと私目掛けて吹っ飛んでくる。
『くっ・・・!!』
寸でのところでキリに戻り、私を避けて落ちてしまう。
「キリ!!大丈夫!?」
慌てて駆け寄るも、キリの身体はボロボロだった。
「伝説から消された聖獣、麒麟・・・これは素晴らしい。是非貴方達には私達の研究に協力していただきたい。」
「研究・・・?貴方一体ここで何をしてるの!?」
「なぁに、研究は研究ですよ。・・・ただし、聖獣のね。」