one night
□第二十二夜
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「ユーロチームと戦える!?」
「ああ、しかもチームでだ!!」
まさか向こうが受けてくれるなんて思ってもいなかったので、嬉しさのあまり肩の力が少しだけ抜けた。
「カイ、やったじゃん!!」
「・・・・・・。」
難しい顔をしているのは、プライドの高い彼のことだから、どうしても一人で勝ちたいと言う気持ちがあるからだろう。
そんなカイに、タカオは自分と勝負をしないかと誘う。
「・・・・・・ほざけ。」
そう言いながらもシューターを構えるカイ。
その声がほんのりと柔らかくなっていて、私は自ら審判を名乗り出て、二人のバトルを見守ることにした。
「いくよ?3・2・1、ゴーシュート!!」
あれだけ特訓をしたというのに、カイは疲れを全く見せずに戦う。
やっぱりすごいな・・・私じゃ敵わない。
改めてタカオとカイの表情を見る。
・・・なんだかんだで突っ掛かることの多い二人だけど、こうやって戦っている間はとても楽しそうだ。
バトルトーナメントの決勝での戦いもすごかったけど、今の方が遥かに成長している。
いい友達で、いいライバル、ってやつなんだろうな・・・。
私相手ではカイはこんな風にはならないから、ちょっとだけ、タカオに妬いてしまう。
それから暫くして、私達はラルフ達に呼び出された。
なんと、彼らは私達の挑戦を正式に受けてくれると言うのだ(!)。
「ただし、これはエキシビションマッチだ。」
「えきびじしょんまっち・・・?なんだそりゃ。」
新しいスタジアム設立の記念にイベントとして行われる試合で、私達は彼等と戦うことになるという。
いつも通り3対3の試合だが、それぞれ一回きりの勝負になる。
「・・・精々特訓しておきたまえ。あまり簡単に負けられても、ゲストを失望させるだけだしな。」
ラルフは踵を返して城内へと戻る。
「上等だ!!何はともあれ、再戦決定だ!!」
「今度は手加減しないぜ。」
「おうよ!!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
オリビエとジャンカルロは笑顔を向けているのに対し、ジョニーはじっとカイを見つめて去っていく。
そしてカイもまた、その視線を受け止めるようにジョニーを見ていた。
私達は更にバトルに向けて特訓を重ねる。
「・・・・・・っ、ドラキリュー!!」
『くっ・・・・・・そぉっ!!』
カラン・・・と音をたてて、もう何度目か、ドラキリューが倒れた。
「なんか調子悪くねぇか?」
タカオが心配そうに近付いてくる。
「そりゃドラキリューの力が押さえられているからね・・・。」
「Why?なにかあったの、セツナちゃん?」
審判をしていたマックスもやってくる。
「実はここに来てからキリが小さくなっちゃって・・・ドラキリューの時もなんか調子がでないみたいで、ハイリスク&ハイリターンが使えないんだ。」
「それは困ったネ・・・でも、セツナちゃんの顔色もあんまりよくないみたいだし、少し休んだらどうかな?」
「そうかな?・・・でも、私だけまだまだだし、もうちょっと頑張りたいな。」
「バカを言え。夜中だけで何度気絶したと思っている。」
丁度レイと決着の着いたカイまでもやってきた。
「・・・でも、私・・・。」
「・・・何に焦ってる?」
「・・・・・・。」
「カイ・・・?」
黙り込んでしまった私に皆が注目する。
隠していたつもりだったけど、カイには勘づかれていたみたいだ・・・。
「・・・・・・器が、まだ育ってないって思ったから・・・・・・。」
ボソッと呟くと、ますます皆の注目が集まる。
まるで続きを促すかのような雰囲気に、私は少しずつ胸の内を明かした。
「ラルフが、器が出来上がっていないと聖獣に・・・麒麟に喰われるっていっていた。それがどういうことか・・・多分、こんな風に倒れちゃうのが、そうなんだと思って・・・だからますます、強くならなきゃって思ったの。」
最初は皆に置いてかれないように、願いを叶えるために、バトルに勝つために・・・そんなちっぽけな目標しかなかった。
でもそれじゃあ伸びないんだと、段々わかるようになってきたのだ。
「もっともっと強い相手と戦えるくらいまで・・・私も強くなりたいんだ。」
「セツナ・・・。」
「ダイジョーブ!!疲れはするけど気持ち悪くはなってないから、まだ行ける!!時間勿体ないでしょ?続けよ。」
私は改めてベイブレードをシューターにセットした。
「・・・そうですね。セツナ自身が大丈夫なら、大丈夫でしょう。」
「おう!!俺達もやるぜ!!」
「おー!!」
こうして皆は練習へ戻った。
「・・・・・・っ。」
その姿を見届け、一瞬だけ立ち眩んでしまうが、必死に我慢する。
決して大丈夫なわけじゃない。
ただ、確実にこの感覚に慣れて来てはいる。
だから、本当の本当の限界まではまだ行ける・・・。
「行くよ、3、2、1、ゴー!シュート!!」