one night
□第二十一夜
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オリビエ、ジャンカルロに案内されて飛行船に乗る。
よりにもよってこの大荒れの天気の中をだ。
「ひぃぃぃぃ・・・私は高所恐怖症なんですぅぅぅぅ!!」
「・・・飛行機は乗れるのに・・・。」
まぁでも確かに、こんな天気じゃ飛行船大丈夫かよって心配はしちゃうよね・・・ハハハー・・・。
・・・・・・。
「そ、そういうセツナだってさっきからちっとも外見てないじゃないですか!!」
「・・・・・・ハハハー。・・・だって飛行船初めてなんだもん!!」
私は膝を抱えて丸まった。
そんな私達を見て、オリビエは何かを考える素振りをする。
「何か彼等の気が紛れるものがあればいいんだけど・・・。」
「物珍しい本なら積んであるよ。ほら。」
ジャンカルロが何か本のようなものを差し出してくる。
外を見ないように恐る恐る受け取り、開いてみると・・・。
「こっ、これは・・・!!」
「なんだなんだ??」
「何かとんでもないことでも書いてあったのか!?」
皆がわらわらと集まってくる。
「この本・・・・・・字が読めん。」
ずっこける一同。
「確かに英語で書かれてますからね・・・。」
「Oh。それならボクが読んであげるネ。」
「本当に?それじゃあお願いマックス。」
「その本は54ページからが物語になっているから、そこから読むといいよ。」
マックスは本を受けとると、皆に見やすいように開いて、翻訳しながら私達に読んでくれた。
「"昔々あるところに、一人ぼっちの天使がいました。"」
確かに物語のようだ。
しかし、これのどこが珍しいんだろう・・・。
「"天使は元々、仲のいい天使4人と一緒に遊ぶのが大好きでした。しかしある日、神様が5人の天使にそれぞれの方角を守る仕事を与えました。天使達はそれから二度と会うことがなく、自分達の仕事を、ただ行うだけの日々を送りました。"」
「ひっでー神様だなぁ。」
「"中央を守っていた天使は皆のことが恋しくなりました。ある日、その天使は神様の目を盗んで、皆を自分のもとへと呼び出す為に不思議な力をを使いました。皆はビックリ。なぜなら、天使はこの力をむやみに使えなかったからです。"」
それって、沢山使っちゃいけないってこと?
それとも、力そのものに回数制限があるってこと・・・?
ん・・・?
「"随分と会わない間に、天使は他の天使よりもずっと強い力を持ってしまったようです。しかし、中央を守る天使はこれは好都合だと、神様へ悪戯をしにいきました。"」
「それでどうなっちまうんだぁ!?」
「もう煩いよタカオ。これから読むネ。・・・"天使は度の過ぎた悪戯を繰り返し、ありとあらゆるものを傷付けます。しかし、神様はそんな天使に皆を傷付けた罰として、中央を守る仕事をやめさせました。そして許されるまで、不思議な力も取られてしまったのです。"」
なんか可哀想で全然報われないな・・・。
「"何にもなくなった天使は、ずっと泣いていました。すると、それを見兼ねた神様は最後にチャンスを与えました。"」
お、ここで報われるのか・・・?
「"天使が一番好きな子供を選んで、その人と過ごすこと。その人が立派な大人になったら、天使はもとの力を取り戻すことができるのです。・・・天使は人間界へ降りて、子供を探しました。しかし、どの子もイマイチぴんときません。10年、20年と、天使は毎日探し続けました。"」
・・・・・・おかしい。
なんかどっかで聞いたことのある話だな・・・・・・。
「"その間に、天使は何故自分がこんなことをしているのかを忘れてしまいました。神様が、そうなるように仕向けたからです。・・・・・・やがて、天使は疲れてうっかり川に落ちてしまいました。"」
「天使は死んじゃうのかああああ!?」
「だからうるさいネ。"しかしそのとき、天使の手をしっかり握る感覚がありました。天使はこの子だ!!と思いました。"・・・・・・あれ、この先のページないネ・・・。」
それを聞いて私は思わず立ち上がった。
だってその話・・・・・・
「え!?もう終わりなのか!?」
「ああ、その本はそこまでしかないんだよ。」
私は外を見る恐怖も忘れ、操縦席に居たジャンカルロの方へ急いで駆けつける。
「ジャンカルロ!!この本どこで手に入れたの!?」
「んー?ラルフからもらったんだ。実話を元にした話だって聞いたけど・・・。」
「実話!?もしかしてそれって・・・麒麟の聖獣のことじゃないよね?」
私は思いきって聞いてみる。