one night

□第十二夜
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気付いたら私は飛行機の中にいた。



「・・・という夢を見てるのか。」

「馬鹿か。」

「・・・・・・。」



突如額に響くデコピンの衝撃は、間違いなく現実のものだった。












窓から見える空はとても青かった。

そして、雲が下に見える。

「わーお。」

改めて頬をつねってみた。

普通にいたかった。

「・・・・・・問題は、一体いつの間に運ばれたのかということだけど。・・・ねぇ、カイサマ?」

「覚えていないとは流石だな。」

じっと目を瞑ったまま、カイは腕を組んでいる。

「いやちょっと待って。ねぇ、ホントにいつ飛行機に乗ったわけ?私どうやって乗ったの?ねぇ。」

顔がひきつっていくのが自分でもわかる。

嫌な予感がしてならない。

「覚えていない貴様が悪い。」

「ちょっとカイイイイイ!!!」

「喧しい。騒ぐな。」

「・・・・・・。」

私はシートベルトを外すと、黙ってトイレに向かった。

「なぁセツナ。起きたんなら一緒にトランプしようぜ!!」

「おはよタカオ。・・・・・・あとでね。」













トイレの鍵をしっかり閉める。

すると、計算していたかのようにキリが出てきた。



「ほんっっっと何があったのあれからぁ!!」

『カイが黙っている時点で分かるだろ。アイツが運んだんだよ。』

「・・・・・・!!」

予想通りだ・・・。

耳まで熱くなるのを感じ、思わずそこに触れてみた。

『ただし、半分な。』

「半分って?」

『車までは僕が運んだ。』

「・・・・・・すみません。」

そして、ありがとう。












席に帰ってから改めてカイにお礼を言う。

案の定、なんのことだとしらばっくれられるのだけれど。












それから更に数時間。

漸く私達はアメリカの地に足を着くことになった。

「すっげぇ・・・・・・流石アメリカ。何もかもデケェ・・・。」

タカオとキョウジュが傍のビルを見上げている。

腰まである壁に寄っ掛かる私とカイ、そしてマックス。

「ねぇ、そういえばマックスはアメリカにお母さんがいるんだよね?」

「yes。ボク、折角アメリカに来たんだから、ママに会いたいよ。ママは大学で先生をしているネ。」

「そうだよなぁ、マックスはママに会うの楽しみにしてたもんなぁ。そんくらいいいだろ、カイ?セツナも。」

「うん、まぁ別にいいよ。」

「ふん、くだらん。」

「なんだとぉ!?」

あぁ、またこの二人はなーんで衝突するかなぁ。

キョウジュはタカオを、そして私はカイを宥める。

「カイ、流石にちょっと言い方があるんじゃないの?」

「落ち着いてくださいタカオ。実はですね、これから皆さんをあるところへお連れするように会長から言われているんです。」

大転寺会長から?

なんだろ。



ちょうどその時、"BBA"と書かれたバスが到着し、中からなんとタカオのお祖父さんが出てくる。

タカオが浮かれないようにだとか言っているけど、実のところ、大転寺会長のご厚意で、招待されたらしい。

しかし、タカオとの言い合いの末、お祖父さんが何故か竹刀を使って大道芸(?)を始める。

前から思ってたけど、お祖父さん調子がいいんだな・・・。

私はタカオをチラッと見る。

「血は争えない、とはこのことを言うんじゃないか。」

「・・・って、レイ。」

ひょこっとバスから現れたレイが苦笑する。

「どうでもいいが、早くバスに乗ってくれないか。」

いい加減に待ちくたびれたというレイは、会わない数日の間にまた日焼けをしたようだった。












「レイっていつも先に行っちゃうよね。」

バスの中。

前に座るレイに話し掛けた。

「中国は生まれ故郷だったからな。」

「じゃあ今回は?」

「日本にいてもやることがないし、わざわざ泊まる場所を日本で確保する必要もなかったからな。」

なるほど。

だからさっさとアメリカに行ったのか。



そういえば・・・と、少し離れた場所で目を瞑るカイに目を向けた。

いつも大体目を閉じて何か考えている子だけど、今日は一段と目を閉じていることが多い気がする。

・・・というか、あれ寝てんじゃない?

「・・・・・・まさか、」

「セツナ。どうした?」

「ううん。・・・なんでもないよ。」

・・・・・・まさか、昨日私が気絶した後、カイ起きてたんじゃないよね・・・・・・?

そんな考えが頭を過る。

キリが背中に乗せてくれたのは覚えている。

でもその後の記憶はない。

・・・考えてもみたら、あのキリがどうやって私をベッドに寝かすのだろうか。

答えは簡単。

カイがベッドに持ち上げたんだ・・・!!



再び顔が熱くなる。

それと同時に、また迷惑を掛けてしまったと、胸が小さく痛んだ。



「どうしたの?セツナちゃん、元気ないネ。」

「そんなことないよっ・・・あ、それよりマックス、あれ何?」

「そう?・・・あ、あれはね・・・。」
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