one night

□第十一夜
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漸く会場へついたタカオ、セツナ、そしてレイ。

マオはボロボロになった3人の様子を見て、何かがあったと悟る。

「何であんなにボロボロなの・・・?」

「あいつらどうやって来たんだ!?道は通れなくした筈なのに・・・!」

「キキ、もしかして貴方また何かしたんじゃ・・・!?」

すぐ隣で聞こえた舌打ちを聞き逃さなかった。

「このまま来なけりゃ失格になると思ったんだよ。」

「なんですってぇ!?」

マオとキキとのやりとりに、ライとガオウも割り込む。

「キキ、詳しく話を聞かせてもらおうか。」
















なんとか試合に勝てて、私達はついに決勝進出の切符を掴んだ。



「はぁ、つっかれたぁ・・・もう寝坊なんてこりごりだぜ。」

「ほんと・・・ね・・・。」

ふと隣を見ると、そこにいたはずのマックスがいなくて、対戦相手の方へ向かっていた。



「・・・。」

私は立ち上がると、カイの方へ向かった。

「カイ。」

「なんだ。」

「カイが代わりに戦ってくれたんでしょ?」

「・・・勘違いするな」

「"ここでお前たちが負けると、俺が世界の聖獣遣いと戦えなくなるからな。"・・・でしょ?」

ものすごい眉間に皺を寄せるカイ。

「当たり?」

「・・・・・・。」

カイは黙って背を向け、どこかへ行ってしまう。

「追わなくていいのか?」

「レイ・・・大丈夫だよ。照れてるだけだから。」

多分ね。














その後、トイレに行った私は、帰りに背後から呼び止められた。

「貴方、女だったのね。」

「あ・・・」

振り替えれば、ピンク色の髪を靡かせた女の子がこちらを見ていた。

忘れるはずもない。

「中国チームのマオ・・・。」

「こうやって話すのは初めてね。・・・これ、どういうことかしら?」

そういって見せられたのは、バスタオル1枚の私がレイを押し倒している写真・・・

「・・・って、昨日の猿に撮られたやつかこれ!」

「猿・・・?」

「昨日私が風呂に入ってるときに猿が写真とっててさ、追い掛けてたら色々とあって・・・」

ずっと訝しげな顔をしていたマオだったけど、私の話は一通り聞いてくれた。

「なるほど・・・やっと繋がったわ。やっぱりキキの悪戯だったのね・・・。」

「え、そうなの?」

「そうなの!!・・・全くいつまでたっても子供なんだから・・・。」

ブツブツとなにかを呟くマオが、突然ハッとしたように、再びこちらを振り向いた。

「・・・って、そうじゃない!いい、私がここにいる理由はね、貴方に確かめたいことがあったのよ!」

「確かめたいこと?」

「そう!・・・貴方、レイにぃ・・・レイのこと、どう思ってるの!?」

レイのこと・・・?

「頼れる仲間。」

即答したが、マオの表情は変わらない。

「・・・本当にそれだけ・・・?」

「ううん。違うよ。料理できてすごいと思うし、運動神経いいし、強いし、たまに天然だけど優しいし・・・強くなりたいって思ってるのとか、すごく尊敬できるし・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・ま、私なんてまだ出会って間もないから、それくらいしかわからないけどね。」

「・・・当たり前じゃない。」

「・・・・・・。」

マオの目に涙が浮かんでいることに気付き、口をつぐんだ。

この子、もしかして・・・。

「マオ、もしかしてレイのこと好きなの?」

ビクッと体が跳ねるのを見て、図星なんだとわかる。

「なななな・・・うるさい!男のふりしてるあんたににゃにがわかるのっ!?」

「いや、別に好きで男のふりしてるわけじゃないけど・・・。」

「うるさいうるさいっ!いい?このこと言ったらあんたが女だってことバラすんだからね!!」

「あ、それは困る・・・。でも言わないよそんなこと。」

可哀想だし。

「・・・思ったけど、中国チーム・・・てか、白虎族、もうちょいなんでも話してみたらどう?言わなきゃ何も伝わんないよ。」

レイのことだって誤解してるのは、多分ちゃんと話し合ってないからだし。

「うるさいわね・・・近くにいすぎて話せないことだってあるのよ・・・。」

プイッと顔を背けるマオは、こうしてると普通の女の子だ。

とてもベイブレードで中華鍋を木っ端微塵にできるなんて、見た目からは想像がつかない。

「・・・変なの。」

私なんて基本的に体が先に動くから、白虎族やマオの考えはよくわからない。

正直なところ、レイもだけど。

「えと・・・話、もういいなら行くけど。」

「いっていいわよ。・・・確かめたいことはもう確認できたし。」

「うん。・・・じゃ、また決勝で。」

こんなとき、どんな言葉を掛けたらいいかわからない。

なんだか気まずい雰囲気だったけど、私達は握手をして別れた。
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