one night
□第六夜
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キスされる・・・!
思わず目を瞑ったが、いつになっても 身体中どこにも唇の感触は訪れなかった。
「抵抗しろ!」
カイの声に、ビクッと身体が跳ねた。
恐る恐る目を開けると、怖い顔をしたカイが私を睨んでる。
「何度も言っているだろう?何のために男装をしてるんだ。・・・貴様のその油断は日常生活だけでなく、バトルにも影響が出ている。・・・自分がどう動けば周りが変わるのか、よく考えて行動することだ。・・・でないと、いつか痛い目を見る。」
・・・このことを言いたかったの・・・?
「要はもっと先のことを考えて行動しろってこと・・・?」
「それから隙を作るなということだ。」
隙って・・・
「・・・?」
なんかそれは引っ掛かる。
「どんな風に隙が多いの?」
「・・・こうやって簡単に押し倒せる時点でわからないとは、流石だな。」
「だってそれはカイだから・・・」
「本当に俺だけか?」
「だって・・・あ!」
そこまできて、私の中でとある出来事が頭の中に思い浮かばれる。
「・・・もしかして、朝の見てたの・・・?」
私が金髪の男の子にキスをされたところ・・・。
「というか、もしかしてさっきレイの顎に、き、キスしちゃったのも・・・!?」
カイが腕を押さえていなかったら顔を隠したいレベルだ。
もうやだ。
今日だけでどれだけ恥ずかしい思いをすれば済むの私。
「カイ・・・お願いだよぅ、もう分かったから離して・・・。」
次からは自分の行動に気を付けます。
そう告げたところで、漸く私は離してもらえるのだった。
部屋に戻ると、真っ先にベッドに突っ伏した。
『思春期だな。』
「これが!?」
もうキリが突然現れても驚かない。
それどころか、普通に私も突っ込む。
「・・・あーあ。願いが叶うならって、軽い気持ちでこっちの世界来ちゃったけどさ。・・・こんなことになるとは思ってなかったな。」
『だから男装を奨めたのだろうに。』
「うう・・・。」
その本当の意味も、ようやくわかってきた・・・そう、本当に、ようやく・・・。
『だがセツナ。恋をするなら応援するぞ。』
「恋?なにいってんの?てか、誰に?」
『カイでもレイでもタカオでも・・・今朝の金髪でもだ。恋は人を成長させるからな。何よりもだ。』
「ふーん・・・。でもこっちで好きな人つくったって辛いだけでしょ?」
いずれ私はもとの世界に戻るのに。
『それを言ったら仲間だって同じことだ。』
「仲間は・・・うん、辛いけどさ。恋人って、また違う辛さがあるでしょ?きっと仲間との別れはなんとかなりそうなんだけど・・・」
『恋人との別れは乗り越えられないってか?大丈夫だ。人間誰しも別れを乗り越えて強くなるんだからな。』
「・・・はぁ、キリにはわかってもらえそうにないよ。」
『そうやって話を終わらせてしまうのも、未熟な証拠だな。』
「・・・・・・。」
何も言い返せなかった。
子供っぽいとか、未熟とか、ほんとにこっちに来てからよく言われるけど、私は元の世界では立派に一人で生きてきたっつーの!
男の子の問題に関しては、そんなこと考えてる暇なんてなかっただけだもん。
「・・・・・・初恋はお兄ちゃんだったしね・・・・・・」
ボソッと呟きながら、自分の座っているベッドを見る。
・・・・今日は自分のベッドがあるんだし、もう、カイがそばにいなくても平気だもん・・・。
「・・・・・・私も風呂行こ・・・・・・。」
『頑張れよ思春期。ブフォッ!?』
キリの首根っこを掴むと、私はそのまま部屋を出るのだった。