one night
□第三夜
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今度こそ道に迷わず帰ってこれた私は、廃墟にあったオーブントースターを使い、買ってきたサンドイッチを焼いた。
そして、ゼリーをスプーンでかき混ぜ、コップにジュースと一緒に入れてストローを挿す。
これなら夏でも簡単にペロッと食べられるだろう。
簡単に盛り付けをした二人分の朝御飯を持って、カイの部屋を目指した。
コンビニで見た時計はまだ8時そこらだったけど、夏休み真っ只中の子供はまだ寝ている時間なのか、廊下でもシェルキラーの皆に会わなかった。
「カイー?」
そっとドアを開け、机にご飯を置く。
すると、今度はあまり間を開けずにむくりと起き上がり、こちらを向くカイ。
「なんだ。」
「朝ごはん。食べよ?」
そういって指差せば、カイは黙って立ち上がり、ジュースに手を伸ばした。
ある程度口が潤ったのか、サンドイッチに手を伸ばしたらそのままパクパクと消費していく。
そんなにお腹が減っていたのか・・・。
「ね、もしかして昨日夕飯食べていない・・・・・・?」
「・・・・・・。」
尚も無言でサンドイッチを食べるカイ。
・・・・・・きっと図星だな。
多目に買っておいてよかった。
そんなカイを横目に、私もサンドイッチに手を伸ばす。
・・・・・・うん、なかなかいける。
こんな廃墟だけど、ガスコンロやオーブントースター、レンジなどがあってよかった。
「もしかして、カイがあのオーブントースターとか使ってるの?」
「・・・・・・。」
カイは答えない。
諦めて私がジュースを口に含んだときだった。
「・・・・・・あれはスズカが買ってきた。ここには俺くらいしか泊まらんが、冬はあそこで何か温めるやつもいる。」
「え・・・。」
予想だにしなかったその反応に、私はぽかんとしてしまった。
しかし、それでも答えてくれたことが嬉しくて、思わず頬が緩んでしまうのだった。
ピクリ。
「ん・・・・・・?」
「どうした。」
「いま、ベイブレードが動いたような・・・・・・?」
気になって取り出してみたけど、大した変化はなかった。
朝ごはんを食べ終わると、カイはスタジアムに私を連れていった。
その頃にはシェルキラーの四天王が揃っていたのだけれど、何やら様子がおかしい。
「カイ・・・・・・?」
「セツナ。お前は下がっていろ。」
そういうと、カイは四天王の皆に何かを告げる。
「え、ちょっ・・・・・・!?」
すると、蛭田以外の三人が、蛭田のベイブレードに向かってシュートを放ったのだ。
「カイ!あんなことした壊れちゃうじゃん!」
思わずその右手を掴み、やめさせようとしたが、時すでに遅し。
蛭田のベイブレードはあっけなく壊れてしまったのだ。
「酷い・・・・・・。」
ベイブレードを拾い上げ、肩を震わせる蛭田を見て、なんて声をかけたらいいかわからない私は、残りの四天王の方を見た。
三人とも、それが当たり前のような顔をしていて、蛭田や私のことなんて最早眼中になく、カイに何やら報告をしている。
その間に蛭田はフラフラとどこかへいってしまうし、私はどうしようもなく、その場に座り込んだ。
・・・・・・すごい傷痕。
スタジアムを見て、改めてそう思った。
タカオは、カイがベイブレードを大切にしないと言っていた。
この世界でベイブレードというのは、単なる道具ではないことくらい、キリから得た知識だけだったけれど、わかっていた。
・・・・・・それなのに・・・。
やっぱり私は、カイと仲間になれないのだろうか・・・?
残りの四天王がスタジアムを去っていく。
ボーッとする私の元へ、カイが近付いてくる。
「どうした。」
「・・・なんであんなことしたの?」
「雑魚相手に勝手な行動をしたからだ。」
「だからってあんなことする必要ないじゃん!」
人が大切にしていたものを、いとも簡単に壊していいわけがないなんて、幼稚園児でもわかる。
私はじっとカイを見据えた。