one night

□第三夜
2ページ/6ページ

今度こそ道に迷わず帰ってこれた私は、廃墟にあったオーブントースターを使い、買ってきたサンドイッチを焼いた。

そして、ゼリーをスプーンでかき混ぜ、コップにジュースと一緒に入れてストローを挿す。

これなら夏でも簡単にペロッと食べられるだろう。

簡単に盛り付けをした二人分の朝御飯を持って、カイの部屋を目指した。



コンビニで見た時計はまだ8時そこらだったけど、夏休み真っ只中の子供はまだ寝ている時間なのか、廊下でもシェルキラーの皆に会わなかった。












「カイー?」

そっとドアを開け、机にご飯を置く。

すると、今度はあまり間を開けずにむくりと起き上がり、こちらを向くカイ。

「なんだ。」

「朝ごはん。食べよ?」

そういって指差せば、カイは黙って立ち上がり、ジュースに手を伸ばした。

ある程度口が潤ったのか、サンドイッチに手を伸ばしたらそのままパクパクと消費していく。

そんなにお腹が減っていたのか・・・。



「ね、もしかして昨日夕飯食べていない・・・・・・?」

「・・・・・・。」

尚も無言でサンドイッチを食べるカイ。

・・・・・・きっと図星だな。

多目に買っておいてよかった。



そんなカイを横目に、私もサンドイッチに手を伸ばす。

・・・・・・うん、なかなかいける。



こんな廃墟だけど、ガスコンロやオーブントースター、レンジなどがあってよかった。

「もしかして、カイがあのオーブントースターとか使ってるの?」

「・・・・・・。」

カイは答えない。

諦めて私がジュースを口に含んだときだった。

「・・・・・・あれはスズカが買ってきた。ここには俺くらいしか泊まらんが、冬はあそこで何か温めるやつもいる。」

「え・・・。」

予想だにしなかったその反応に、私はぽかんとしてしまった。

しかし、それでも答えてくれたことが嬉しくて、思わず頬が緩んでしまうのだった。



ピクリ。



「ん・・・・・・?」

「どうした。」

「いま、ベイブレードが動いたような・・・・・・?」

気になって取り出してみたけど、大した変化はなかった。

朝ごはんを食べ終わると、カイはスタジアムに私を連れていった。

その頃にはシェルキラーの四天王が揃っていたのだけれど、何やら様子がおかしい。



「カイ・・・・・・?」

「セツナ。お前は下がっていろ。」

そういうと、カイは四天王の皆に何かを告げる。

「え、ちょっ・・・・・・!?」

すると、蛭田以外の三人が、蛭田のベイブレードに向かってシュートを放ったのだ。

「カイ!あんなことした壊れちゃうじゃん!」

思わずその右手を掴み、やめさせようとしたが、時すでに遅し。

蛭田のベイブレードはあっけなく壊れてしまったのだ。

「酷い・・・・・・。」

ベイブレードを拾い上げ、肩を震わせる蛭田を見て、なんて声をかけたらいいかわからない私は、残りの四天王の方を見た。

三人とも、それが当たり前のような顔をしていて、蛭田や私のことなんて最早眼中になく、カイに何やら報告をしている。

その間に蛭田はフラフラとどこかへいってしまうし、私はどうしようもなく、その場に座り込んだ。



・・・・・・すごい傷痕。



スタジアムを見て、改めてそう思った。

タカオは、カイがベイブレードを大切にしないと言っていた。

この世界でベイブレードというのは、単なる道具ではないことくらい、キリから得た知識だけだったけれど、わかっていた。

・・・・・・それなのに・・・。



やっぱり私は、カイと仲間になれないのだろうか・・・?












残りの四天王がスタジアムを去っていく。

ボーッとする私の元へ、カイが近付いてくる。

「どうした。」

「・・・なんであんなことしたの?」

「雑魚相手に勝手な行動をしたからだ。」

「だからってあんなことする必要ないじゃん!」

人が大切にしていたものを、いとも簡単に壊していいわけがないなんて、幼稚園児でもわかる。

私はじっとカイを見据えた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ