one night
□第二夜
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「・・・わかっているのか貴様。仲間になるということは、シェルキラーに入ると言うことだぞ。」
呆れたようなカイに対し、私は軽いのりで答える。
「ん?シェルキラーでもなんでもいいけどさ、私はカイの仲間になりたかったからそれでいいよ。」
キリは仲間を見つけろと言っていたから、たぶんこれでいいと思うし。
「・・・バカなのか狙っていたのかはわからんが、同意ならばそれでいい。早速俺の手伝いをしてもらう。」
「いいよ。何したらいいの?」
「聖獣が見えるのなら話は早い。俺達と同じように聖獣の宿るベイブレードを探しだすことだ。」
「へー、それなら私と一緒だね。」
「何・・・?」
「私も四聖獣の宿るベイブレードと、その持ち主を探しているんだ。・・・で、その人たちと仲間になって、このベイブレード・・・麒麟の聖獣の力を取り戻す約束をしたんだ。」
「なるほど、それで貴様はそいつを・・・」
カイは一人で納得してくれたようだが、それだけ呟くと、何かを考えるように暫く黙ってしまった。
私は暇なので、額に乗っていたタオルで身体を拭く。
それすら終わると、いよいよやることのない私は暇なので、部屋を見渡した。
最小限の家具しかないそこは、先ほどいたスタジアム同様、簡素な作りになっている。
きっと、どこかの廃墟ビルとか倉庫を秘密基地のように使っているのだろう。
「・・・・・・。」
ふと、キリはどうなったのか気になり、ポケットからベイブレード取り出した。
確かキリはまず仲間を一人見つけろと言っていた。
そうすれば、あのぬいぐるみのような、小動物のような姿には戻れるらしい。
・・・だけど、カイが仲間になったはずなのに、キリはもとに戻らない。
チラッとカイを見つめるが、未だに黙ったままなので、私はキリに心の中で語りかけた。
「(キリ・・・聞こえる?)」
しかし、回転していない状態のベイブレードは何も答えることはなかった。
「ねぇ、カイ。」
沈黙に耐えかねた私が口を開くと同時、ドアが激しくノックされた。
「カイさん!大変です蛭田が勝手に・・・!!」
「ちっ・・・」
軽く舌打ちをすると、立ち上がるカイ。
そのまま私を一瞥すると、「ここで待っていろ」とだけ告げて行ってしまった。
「待っていろったって・・・」
正直に言うと、このベタベタした身体をなんとかしたい。
こっちの世界は夏なのだろうか?
シェルキラーの子達は皆薄着だったし、こんな厚着をしているのは私だけだった。
・・・しかし、この廃墟にシャワーなんてないだろうし、いまはこのベタベタを我慢するしかないのかな。
「・・・にしてもお腹も減ったなぁ」
スマホの類いは全部キリのお腹の中だし、時間も確認できない。
身体の感覚からして、あれからかなりの時間が経っていることはわかるのだけど・・・
「もしかして丸一日寝てた!?いや、そんなことより・・・」
カイは、ずっとここで私が目覚めるのを待っていたと言うのだろうか。
・・・麒麟の聖獣のことを聞き出すために・・・?
「・・・てかトイレ行きたい・・・。」
結局、次々に思い出す生理現象のせいで、私はカイが出ていってから5分もしない内にその部屋を抜け出すのだった。